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商談で聞いた数値には対象と期間を付けて復唱する

数値の取り違えを防ぐ復唱

商談で「300くらいです」と数値を聞けると、営業側は必要な情報がそろったと思いがちです。けれど、300件なのか300人なのか、一日なのか一か月なのかで、提案はまったく変わります。

佐々木 浩平さん(仮名、法人向け予約管理システムの導入提案を担当)は、数字を正確にメモすることには自信がありました。商談後の記録にも300と残っています。それでも、出した見積はお客様の運用に合いませんでした。

商談で数値を聞いた時は、数値、対象、期間を一文にして復唱します。数値だけを書き取らず、何をどの期間で数えたのかまでそろえます。

こんな方におすすめの記事です。

  • ヒアリングの数値を見積に反映する方
  • 人数や件数の前提違いを防ぎたい方
  • 打ち合わせ後の確認の往復を減らしたい方

数値、対象、期間の三つをそろえると、同じ数字を見ながら別の状況を想定するずれを防げます。佐々木さんの見積がずれた場面から、確認の仕方を見ていきます。

合っていたのは数値だけ

佐々木さんは、飲食店を複数運営する会社の担当者と商談しました。予約数を聞くと、担当者から「300件くらいです」と返事がありました。佐々木さんは月間300件と受け取り、その件数に合うプランを選びました。

後日、見積を説明すると、担当者から「それは金曜日と土曜日の二日間だけの件数です」と言われました。平日を含む一か月の予約は、その四倍以上あります。

佐々木さんが記録した300件という数値自体は間違っていません。抜けていたのは、予約という対象と、週末二日間という期間でした。数字が合っているため、佐々木さんは前提も合っていると思い込んだのです。

担当者の中では、混みやすい週末の話をしていました。一方、佐々木さんはシステムの契約単位に合わせ、月間の数値として聞いていました。両者は同じ300を見ていましたが、計算の範囲が異なっていました。

数値を聞いた直後なら、確認に時間はかかりません。見積を作った後に聞き直すと、価格、契約プラン、導入時の設定案まで作り直すことになります。

数値と対象と期間

佐々木さんは、数字を聞いた後のメモを変えました。以前は「300」としか書かなかった箇所に、「300件、予約、金曜日と土曜日の合計」と残します。

確認項目 商談でそろえる内容
数値 300件という大きさ
対象 予約、店舗、利用者など
期間 一日、週末二日間、一か月など

数値、対象、期間は、必ず同じ一文で確認します。「金曜日と土曜日の予約が、二日間の合計で300件という理解で合っていますか」と読み上げれば、前提のずれをその場で直せます。

対象は、数値が何を表すかを示します。同じ80人でも、登録者、同時利用者、一日の来店者で必要な機能は変わります。誰を含む人数なのかまで確かめます。

期間にも注意が要ります。「一週間の平均」と「先週一週間の実績」は似ていますが、意味は異なります。平均なら通常時の容量に使えます。特定の週の実績なら、繁忙期やキャンペーンの影響を別に見ます。

数値、対象、期間を聞く順番は固定してかまいません。大事なのは、提案に使う前に三つが一つの文に収まっていることです。

見積前の一文確認

佐々木さんは、その後の商談で担当者から「利用者は80人です」と聞きました。今度は数値だけをメモせず、80人という数値が誰を指すのかを確認しました。

佐々木さん「80人は、予約を受け付ける担当者の人数ですか」
担当者「いいえ。予約画面を見る全従業員です」
佐々木さん「全従業員80人が登録し、実際に予約を受け付けるのは店長10人という理解で合っていますか」
担当者「はい。入力するのは店長だけです」

この確認で、登録者数は80人、操作者数は10人と分かりました。操作研修の対象は10人に絞られます。一方、アカウントは80人分を設定します。

数値を一つ確かめただけですが、見積と導入計画の中身は大きく変わります。佐々木さんは、契約上の登録者数、操作研修の対象人数、設定するアカウント数を別々に出しました。

復唱は、聞き間違いを防ぐためだけではありません。お客様と営業が、同じ数値の内容と範囲を見ているかを確かめるために行います。

確認後のメールにも、三つの要素を残します。「全従業員80人を登録し、店長10人が日々の予約を入力する前提で見積を作ります」と書けば、お客様も訂正しやすくなります。

数値が複数出た時の分け方

商談では、一つの話題に複数の数字が並びます。予約300件、10店舗、80人、繁忙期は1.5倍。メモに数字だけ並べると、商談後に何を表していたか分からなくなります。

佐々木さんは、数値の後ろに対象を書き、次の行に期間を書く形にしました。「300件/予約/週末二日間」「1,200件/予約/一か月」「7,200件/予約/直近六か月」という形です。

ただし、メモの書式を整えるだけでは足りません。お客様に一文で読み返し、その場で合っているかを確かめます。自分のメモの中だけで整理すると、営業側の解釈がそのまま残ります。

別の部署の数字が出た時も、誰が数えた数字かを加えます。現場の予約件数と経理の売上件数では、取り消しの扱いが違うかもしれません。出所が分かれば、数字が違う理由も追えます。

複数の数字を一度に確認すると、相手の負担が増えます。佐々木さんは、見積に直接使う数字から確かめました。店舗数、予約件数、利用者数の順に、一つずつ一文にしました。

まだ決まっていない数値

お客様が数値を正確に答えられない場合もあります。その時に「正確な数字が出てから連絡してください」と返すと、お客様だけに確認作業が残ります。

佐々木さんは、概数と確定数を分けました。概数なら、「現時点では月間1,000件から1,300件の間で、正式な月間実績は経理部が明日確認する」という形で残します。

幅のある数値にも、対象と期間を添えます。1,000から1,300という幅だけでは、予約か売上かが分かりません。月間の予約件数と分かって初めて、仮見積の前提に使えます。

確定前の数値は、見積書に概数と明記します。確定した数値と同じ扱いにしないことで、後から条件が変わった時の説明がしやすくなります。

お客様に依頼するのは、数字を調べることだけではありません。どの帳票を見るのか、誰が確認するのか、どの期間を対象にするのかもあわせて確認します。数値の出所がそろうと、次の打ち合わせで再確認しやすくなります。

佐々木さんは、確認待ちの数字を空欄のままにしませんでした。「月間予約件数、経理部が確認、直近三か月の平均」と項目だけ先に置きます。お客様は何を調べればよいか分かり、営業側も別の数字を混ぜずに済みます。

提案書に残す計算の前提

確認した数値は、提案書の価格欄だけに使いません。どの数値、対象、期間で計算したかを、見積条件として短く書きます。

たとえば「月間予約件数1,200件、10店舗、登録者80人、操作者10人を前提に算出」と書きます。金額だけを見た人も、どの条件で計算した見積かを確認できます。

担当者が社内で提案書を回す時、営業との会話をすべて説明できるとは限りません。計算の前提が一文で残っていれば、経理や現場責任者は自分の持つ数字と比べられます。

前提が違っていた場合も、見積の前提をすべて見直す必要はありません。「月間予約件数だけを1,500件に直す」「操作者数を15人に直す」と、変更箇所を特定できます。

佐々木さんは、見積の差し替え時に金額だけを送り直さず、変えた前提も添えました。お客様は、なぜ金額が変わったのかを社内で説明しやすくなりました。

数字を細かく確認する目的は、お客様を試すことではありません。営業とお客様が同じ計算の土台を持ち、後から直す時も変更点を共有できるようにすることです。

単価の説明にも、期間を入れます。「一件あたり30円」という表現だけでは、月間の基本料金に含まれるのか、上限を超えた分だけにかかるのか分かりません。対象となる件数の範囲も一緒に確かめます。

前月比や前年比などの比率は、比べた元の数値を聞きます。予約が20パーセント増えたと聞いても、前月の予約が100件なのか1,000件なのかで、増えた件数は変わります。比率、比較対象、比較期間を分けて確かめます。

数値の丸め方も、見積に影響します。「約300件」が280件から320件か、250件から350件かを確かめると、上限を超える可能性を見積条件に反映できます。幅を持たせた理由も聞き、繁忙日と通常日を混ぜません。

見積を出す前に、佐々木さんは計算に使った数字だけを別紙に並べました。原価や値引きを見せる資料ではなく、お客様から聞いた前提を確かめる一枚です。担当者がその一枚を見れば、金額の話に入る前に間違いを直せます。

社内で別の人が見積を引き継ぐ場合も、前提の一文が役立ちます。担当を交代しても、どの数値を、どの対象・期間の値として使ったかが残ります。記憶に頼らず、計算の土台を同じ文で渡せます。

営業Q&A

細かく復唱すると信用されていないと思われませんか?

お客様がはっきり数値を答えた場面です。

回答

聞き直すのではなく、見積の前提を合わせると伝えます。『見積条件をそろえたいので確認します』と添え、数値、対象、期間を一度だけ読み返しましょう。

幅のある数値が出た時はどちらを使いますか?

月間1,000件から1,300件の間と言われた場面です。

回答

仮見積では上限の1,300件が発生する時期を確かめます。通常月が1,000件で繁忙月が1,300件なら、両方の条件を書き、プランを変える基準も添えます。

見積の前提をそろえる一文

商談で数値を聞いた時は、数値、対象、期間を一文にして復唱します。「300ですね」で終わらず、何が300で、どの期間を数えたのかまで確かめます。

  • 聞いた数字の大きさを数値として残す
  • 何を数えたのかを対象で示す
  • どの日数や月数の数字かを期間で示す

次の商談で数値が出たら、すぐメモに移る前に、数値、対象、期間を一文で読み返してください。その一文が、見積と導入計画の前提になります。

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営業指導歴22年。1000件以上の顧客との商談経験。1000人以上の営業相談に応じてきた。ある経営者との出会いを機に営業ノウハウを体系化。元ニートの落ちこぼれ営業を最下位グループからたった1か月で全国300人中トップに一発逆転させた。営業経験・実績に基づいた、わかりやすい営業ノウハウ・セミナーでの解説に定評がある。

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