通訳が同席する商談での話し方|短く伝えてお客様の返答を待つ
訳してもらう間を含めた会話の進め方
通訳のいる商談で、日本語の説明をまとめて話し、訳し終わるのを待っていませんか? 商品の特徴、価格、納期、最後に質問まで続けると、お客様はどの話に答えればよいか迷うかもしれません。説明を意味のまとまりで区切り、訳された質問にお客様が答えるところまで待ちましょう。
通訳をお願いしても、何を尋ね、何を提案するかは営業担当者が考えます。言葉を別の言語にしてもらうことと、お客様の事情を理解することは、別の仕事です。あなたの説明が通訳に伝わった段階で安心せず、お客様から返ってきた内容を聞いて会話を続けてください。
こんな人におすすめの記事です。
- はじめて通訳が同席する商談を担当する方
- 通訳を待つ間に説明を足してしまう営業担当者
- 訳された返答から次の質問を考えたい方
これから一つひとつ見ていきましょう。
商品資料と通訳との事前打ち合わせ
最初に通訳と相談したいのは、商品を詳しく説明する順番より、今回の商談で何を確かめたいかです。相手の店舗でどんな商品が売れているかを聞きたい。新商品の販売先を知りたい。すでに依頼された見積の条件を確認したい。目的が違えば、用意する資料も質問も変わります。
岡山県とJETRO岡山貿易センターの出展マニュアルには、通訳に依頼する業務と、自社や商品について事前に知っておいてほしい内容を伝え、了解を得るよう記されています。資料を送るだけで済ませず、当日の役割まで打ち合わせておきましょう。
出典:海外展開のための商談会・展示会出展マニュアル「通訳と事前打ち合わせ」
たとえば陶磁器なら、商品名や寸法だけでなく、食器の形を表す自社独自の呼び名も共有します。販売条件の資料に「最低注文数」と書いてあるなら、商品ごとの数量なのか、注文全体の数量なのかも説明してください。通訳が知らない略称を本番で急に使えば、その意味を確かめるところからやり直すことになるでしょう。
一度にどの程度話せば訳しやすいか、発言が長くなった時はどう知らせてもらうかも相談できます。通訳に区切りを知らせてもらう約束があれば、本番でも説明の途中で止まれます。専門用語の訳し方に確認が必要なら、その時間も事前打ち合わせに含めておきます。
一つの質問を訳し終えるまでの間
通訳を介した商談では、自分が話す時間に加え、その発言を訳す時間も使います。日本語だけの商談と同じ量を詰め込もうとすると、質問への返答を聞く時間が足りなくなりかねません。会社紹介の全項目を読むより、まず相手が何を知りたくて参加したのかを尋ねます。
JETROが2020年に発行したオンライン商談資料でも、通訳を使う場合は平易な言葉を選び、要点を短く、ゆっくり話すよう案内しています。資料上の説明位置を具体的に伝える注意もあります。オンライン商談向けの助言ですが、どの商品について話しているかを明確にすることは、対面でも取り入れられます。
出典:海外バイヤーとのオンライン商談のポイント「商談中に気を配ること」
「この商品は軽くて、積み重ねられて、価格も抑えられますが、店頭にはどのくらい置けそうですか?」では、特徴の説明と売り場への質問が一続きです。先に商品を特定し、相手がその商品に興味をもった理由を尋ねると、答えてもらう内容を絞れます。説明は、その返答を聞いてから必要な分だけ加えましょう。
質問を話し終えた後は、通訳が訳し、お客様が考え、返答が日本語になるまで待ちます。まだ返答を聞いていない間に次の質問を足すと、最初の問いへの答えを確かめにくくなります。待つ時間が長く感じられても、まず通訳がどこまで訳し終えているかを見てください。
ただし、短くするために条件だけを切り離すと、意味が変わります。「この価格です」と言ってから、訳した後に注文数量の条件を付け足せば、最初の金額が無条件の価格として伝わるおそれがあります。「この数量で注文する場合の価格です」と、意味が通じる単位で話しましょう。区切りに迷う説明は、資料の該当欄を示しながら通訳と読み合わせておきます。
売り場の相談から続ける架空のロープレ
井上悠介さん(仮名、陶磁器メーカーの海外販売担当者)が、海外の生活雑貨店の買い手と話す架空のロープレです。通訳を介して質問と返答をやり取りします。
井上さん「資料の右側にある、浅い皿をご覧になっていますね。どの点が気になりましたか?」
買い手「贈り物にする食器を探しています。」
井上さん「贈り物にする食器を探しておられるのですね。今のお店では、どんな組み合わせで販売されていますか?」
買い手「皿だけでなく、カップも一緒に選べるようにしています。」
井上さん「カップも一緒に選べるようにしているのですね。その組み合わせを決める時に、困ることはありますか?」
この会話では、井上さんが一つ尋ねるたびに通訳の時間を取っています。最初に皿の特徴を全部説明していたら、買い手がカップとの組み合わせを考えていることは、まだ分からなかったでしょう。日本語で返ってきた言葉を受け止め、その内容について次を尋ねています。
私のレッスンでも、相手の話を具体化する時に「たとえば」という質問を使います。買い手が組み合わせの難しさを話したら、最近迷った一例を聞けます。通訳のいる場面でも、相手が話した現状から必要な提案を考える順番は同じです。
通訳に商品をすすめてもらえばよいと考えると、買い手への問いまで任せたくなるかもしれません。しかし、どの商品を組み合わせられるか、その組み合わせを自社で用意できるかは、井上さんが確認する仕事です。通訳から助言をもらう時も、助言と買い手が答えた内容を分けて受け取ります。
予想と違う返答を受けた時の確かめ方
返答が自分の予想と違うと、訳し方を疑いたくなるかもしれません。ただ、相手が別の商品のことを話している可能性も、自分の質問が曖昧だった可能性もあります。国籍や表情だけを根拠に、お客様の意図を決めつける必要はありません。
商品名や資料の位置を言い直し、何についての返答かを確かめます。買い手が「大きすぎます」と答えたなら、大きいと感じたものを特定しましょう。皿の直径についてでしょうか? 梱包した箱についてでしょうか? 同じ言葉でも、商品選びと輸送の相談では対応が変わります。
通訳には、自分がどの部分を理解できていないかを具体的に伝えてください。そのうえで、お客様に確かめる質問を訳してもらいます。通訳が考えた解釈だけで次の商品をすすめると、お客様自身の考えを聞かないまま提案することになりかねません。
また、訳された日本語が短いからといって、関心がないとは判断できません。回答が簡潔だった理由は、その長さだけでは分からないからです。購入意欲を推測するより、返答の中でまだ分からない一点を尋ねましょう。相手の意見が否定的でも、商品のどこが用途に合わないかを理解できれば、提案を続けるか見送るかを考えられます。
複数人の意見を聞く順番については、複数人の商談では誰に質問する? 担当者と上司の意見を聞く順番でも解説しています。通訳が同席していても、商品を使う人と、購入を判断する人が誰かは別に確かめます。
数字を示す資料と合意する条件
会話が進み、数量や日程を話す段階では、同じ資料の同じ項目を見ながら確認しましょう。数字だけ口にすると、注文数なのか、箱に入る数なのかが分かりません。商品の番号と数量の単位を一緒に示せば、聞き違いがあった時も該当箇所を探せます。
日程についても、出荷する日と相手に届く日を分けます。自社で確定できる予定と、確認が済んでいない予定を言い分けてください。流暢に訳されたとしても、元の説明で日付の意味が曖昧なら、その問題は解決していません。
買い手がうなずいても、それだけで注文の承諾とは受け取れません。聞こえたことへの返答かもしれず、社内で検討するために条件を聞いている段階かもしれません。今回決まったことと、次の連絡で確認することを、お客様との間で分けておきます。
商談を終える前に、こちらが送る資料、その送付先、相手に確かめてもらう内容を伝え、通訳を介して返答を聞きます。通訳の同席が今回限りなら、次回も同じ方法で連絡できるとは限りません。その後のメールを誰が読み、どの言語で返すかまで相談しておけば、担当外の連絡を通訳に任せたままにせずに済むでしょう。
営業Q&A
お客様と通訳だけで話が続いたらどうしますか?
買い手から質問があった後、通訳とのやり取りが続き、営業担当者には日本語の説明が返ってきていません。待ってよいのか、口を挟んでよいのか迷っています。
回答
発言が一段落したところで、何を確かめているのかを通訳に尋ねてください。言葉の意味を確認しているのかもしれませんし、資料のどの商品かを探しているのかもしれません。内容を知らないまま、交渉を進められていると決めつけると、不要な対立を招きます。
商品や条件についての質問が出ているなら、その内容を訳してもらい、自分が答えます。確認に時間がかかった言葉は商談後に通訳と振り返り、次に使う説明を見直しましょう。相手に同じ説明を何度もさせる前に、日本語の曖昧さを直せる箇所も見つかります。
最初の説明文を使った事前練習
通訳が同席する商談での話し方を解説しました。自分が話した後にも、訳す時間とお客様が答える時間を取ります。事前の役割確認、意味のまとまりごとの発言、資料を使った条件確認が、そのやり取りを支えます。
- 商品名や専門用語を共有する事前打ち合わせ
- 質問と訳された返答を一組にした会話
- 商品番号、単位、日付の意味を示した条件確認
次の商談で最初に使う説明を声に出し、通訳にどこで区切れば訳しやすいかを聞いてみましょう。区切る場所を決めた説明から、お客様への最初の質問まで通して練習します。
木村 守(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント)
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