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営業クロージング前は申込書より確認する時間の中身を聞く

申込前に整える確認時間

営業クロージングの場面で、相手が「少し考えます」と言うことがあります。営業側は不安になります。今押さなければ流れるのではないか、申込書を出せば前に進むのではないか、と考えます。

しかし、相手が考えたいと言った時に申込書を急ぐと、相手の迷いは深くなります。決める意思の有無より、何を確かめれば決められるのかが整理できていない場合があります。

伊藤 悠介さん(仮名、法人向け封筒印刷の相談窓口を担当)は、見積後に申込書を出すのが早い営業でした。相手が「社内で少し考えます」と言うと、「では申込書だけ先にお送りします」と返していました。

相手は受け取りますが、その後の返信は遅くなりました。伊藤さんは、申込書を送ったのに進まない理由が分からず、何度も追いかけていました。

営業クロージング前は、申込書より先に、相手が何を確認する時間なのかを聞きます。考える時間の中身が分かると、次の一手は整理に向かいます。

クロージング前に返事が止まりやすい方は、次の項目を確認してください。

  • クロージングで「考えます」と言われると焦る方
  • 申込書を送った後に返信が止まりやすい方
  • 相手の迷いを尊重しながら意思確認したい方

相手の考える時間では、確認する項目を一つ決めます。具体的に見ていきます。

申込書が早すぎる場面

申込書は悪いものではありません。契約に進む時には使います。問題は、相手がまだ確認項目を持っているのに、申込書だけを先に渡す点です。

相手が保留したい様子を見せた時、営業側は断りの前触れと受け取りがちです。だから、申込書を出して前に進めようとします。相手の中では、上司に何を確認するか、現場に何を聞くか、予算のどこを見るかを整理したいだけかもしれません。

伊藤さんの商談では、担当者が見積書を見ながら「紙質はこれでよさそうですが、封入作業との兼ね合いだけ見たいです」と言いました。伊藤さんは「では申込書をお送りします」と返しました。

私は録音を聞いて、ここで止めました。担当者が見たいのは、紙質そのものより封入作業との兼ね合いです。申込書を送る前に、封入作業で何を確認するのかを聞く必要がありました。

伊藤さんは次の商談で、「申込書の前に、封入作業で確認されるのは、サイズ、厚み、作業時間のどれが一番近いですか?」と聞きました。担当者は「厚みです。今の封入機で引っかからないかを見たいです」と答えました。

この返事で、考える時間の中身が見えました。相手は契約を避けたいのではなく、封入機で使えるかを確認したかったのです。

考える時間を分解する

「考えます」は一つの言葉ですが、中身はいくつかに分かれます。社内確認、現場確認、予算確認、比較確認。どれかによって、営業側の手伝い方は変わります。

伊藤さんは、クロージング前に次の四つを見ます。

確認の種類 聞く言葉
社内確認 上司に説明する時、一番聞かれそうなのはどこですか?
現場確認 実際に使う方が確かめたい点はどこですか?
予算確認 金額を見る時、単価と総額のどちらが論点になりそうですか?
比較確認 他案と比べる時、同じ条件で見たい項目はどれですか?

考える時間をもらう時は、待つ期間と確認する項目を一つずつ決めます。

「いつまでにお返事いただけますか?」だけでは、相手は何をすればよいか分かりません。「厚みを封入機で確かめる時間ですね」と分かれば、次の約束を具体的に決められます。

返事の期限は、確認項目が決まった後に置きます。

クロージング前の二往復

相手が考えたいと言った時は、二往復だけで十分です。押さずに、確認内容を言葉にします。

伊藤さん「少し考えられるのですね」
担当者「はい。封入作業との兼ね合いだけ見たいです」
伊藤さん「封入作業で見るのは、サイズ、厚み、作業時間のどれが一番近いですか?」
担当者「厚みです。今の封入機で引っかからないかです」

この会話では、相手の考える時間を否定していません。考えること自体を受け止め、その中身を一つだけ確認しています。

伊藤さんは続けて、「では厚み確認用に、同じ紙質のサンプルを二種類お送りします。封入機で見ていただき、引っかかるかどうかだけ確認いただけますか?」と聞きました。担当者は「それなら社内で見られます」と答えました。

ここで申込書はまだ出していません。相手が決めるための確認を先に整えています。申込書は、厚みの確認が終わった後で十分です。

期限を詰めない確認

クロージングで期限を聞くことは大切です。ただし、確認項目がないまま期限だけ聞くと、相手は急かされます。

伊藤さんは以前、「いつ頃お返事をいただけそうですか?」と聞いていました。担当者は「来週中には」と答えますが、来週になっても返事はありません。封入機で厚みを確認する人が決まっていなかったからです。

そこで伊藤さんは、期限の前に担当と作業を聞くようにしました。「厚みを見るのは、封入作業をされる方ですか?」と聞くと、担当者は物流担当の小林 健さん(仮名、物流担当)の名前を出しました。

小林 健さん(仮名、物流担当)は、木曜の午後なら確認できる状況でした。伊藤さんはその時間に合わせて、サンプルを二種類送る約束をしました。

この時点で、期限は相手の確認作業から出てきました。伊藤さんは「では木曜午後に厚みを確認いただき、金曜午前に結果だけ伺います」とまとめました。

金曜午前、伊藤さんが連絡すると、担当者は「厚い方は少し引っかかりました。薄い方なら大丈夫です」と答えました。ここではじめて、申込書を薄い紙質の案で作る理由ができました。

相手が考える時間を持つ時、営業側は待つことに加えて、相手が確認できる形を作ります。確認する人、見る項目、聞く日程が分かれば、返事待ちは曖昧な待機ではありません。

申込書を出す順番

申込書は、相手の確認が終わってから出す方が自然です。確認前に出すと、相手はまだ迷っているのに決断を迫られたように感じます。

伊藤さんは、厚み確認の結果を聞いた後で、「薄い紙質なら封入機で問題ないとのことでしたので、その条件で申込書を作ります」と伝えました。担当者は「その条件なら上司に出せます」と答えました。

この順番なら、申込書は相手が確認した結果を反映した書類です。担当者も、上司に説明する理由を持てます。

また、申込書を出す時の文面も短くできます。「ご検討ください」と書く代わりに、「封入機で問題のなかった薄い紙質の条件で作成しました」と書けます。相手が確認した事実が入っているので、文面に余計な説得を足さなくて済みます。

伊藤さんはこの順番に変えてから、追いかける回数が減りました。相手が何を考えているかを事前に聞いたため、次の連絡で聞くことがはっきりしたからです。返事が遅れても、「厚み確認の結果はいかがでしたか?」と聞けます。

最終的に、担当者は薄い紙質で申込書を進めました。伊藤さんは値引きも追加説明もしていません。相手の考える時間を整理しただけです。その整理が、クロージングを自然に前に進めました。

伊藤さんが特に変えたのは、申込書を送る前の確認メモです。以前は「申込書を添付します。ご確認ください」と書いていました。今は「封入機で薄い紙質なら問題ないと確認済みです。その条件で申込書を作ります」と書きます。相手が確認した事実を先に置くため、書類が急に重たく見えません。

担当者は上司に出す時、「厚い方は封入機に引っかかるので、薄い紙質で進めます」と説明しました。伊藤さんの提案文より、現場で確認した結果を根拠にした説明です。上司からは「それなら現場で止まらないね」と返ってきました。クロージング前に確認時間の中身を聞いたことで、上司の判断材料まで整いました。

もし伊藤さんが最初に申込書だけ送っていたら、担当者は厚みの不安を抱えたまま社内に出すことになります。すると上司から現場確認を求められ、申込書は一度止まります。営業側は「なぜ返事がないのか?」と追いかけますが、相手の中では確認が終わっていないだけです。

考える時間を分解すると、営業側の待ち方も落ち着きます。木曜午後に小林さんが封入機で厚みを見る、金曜午前に結果を聞く、薄い紙質なら申込書を作る。この順番を持てるからです。相手を急かさないのに、次の行動は止まりません。

営業Q&A

保留されたら理由を聞いてよいですか?

相手の迷いを確認したい場面です。

回答

聞いて構いません。ただし、理由を詰める聞き方を避け、「何を確かめる時間ですか?」と聞きます。相手が答えた項目を一つだけ扱うと、圧迫感が出にくくなります。

申込書だけ先に送ってと言われた時はどうしますか?

相手から書類を求められる場面です。

回答

送ります。その前に「申込書の条件を合わせるために、確認中の項目だけ教えてください」と聞きます。条件がずれた申込書を送るより、相手が確認したい点を反映した方が進みやすくなります。

迷いをほどく順番

営業クロージング前は、申込書より先に、相手が何を確認する時間なのかを聞きます。社内、現場、予算、比較のどこを見るのかが分かると、次の連絡は整理に向かいます。考える時間の中身を一つ決めることが、自然な意思確認につながります。

  • 相手の「考えます」を一度受けること
  • 確認する項目を一つに絞ること
  • 確認結果を申込書の条件に反映すること

次のクロージングでは、申込書を出す前に「何を確認する時間になりそうですか?」と聞いてください。その答えが、相手の迷いをほどく入口です。

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営業指導歴22年。1000件以上の顧客との商談経験。1000人以上の営業相談に応じてきた。ある経営者との出会いを機に営業ノウハウを体系化。元ニートの落ちこぼれ営業を最下位グループからたった1か月で全国300人中トップに一発逆転させた。営業経験・実績に基づいた、わかりやすい営業ノウハウ・セミナーでの解説に定評がある。

 
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