営業でお客様の話を遮ってしまった時は、続きを聞く
話を途中で切った商談の立て直し方
お客様が話している途中で、「それなら、この商品が合います」と答えてしまう。親切のつもりでも、お客様が言おうとしていた困りごとを聞き落としかねません。相手の言葉を遮ったと気づいた時、あなたはどうしていますか?
先に自分の説明を止め、相手が言いかけた内容の続きを聞きます。謝るだけで次の質問に移ると、切ってしまった話が戻らないまま商談が進みます。この記事では、途中で口を挟んだ直後の一言と、その後の聞き方を考えます。
こんな人におすすめの記事です。
- お客様が話し終える前に答えを言ってしまう方
- 話を遮った後、何と言えばよいか迷う方
- 商品の説明を急いでしまう方
これから一つひとつ見ていきましょう。
箱の強度を答えた後で分かった困りごと
小松健介さん(仮名、法人向け梱包資材の提案営業を担当)の架空事例を使います。小松さんは、部品を発送する会社から、現在使っている箱について相談を受けました。
現場の担当者が「箱を運ぶ時に、持ち手のところが」と話しかけたところで、小松さんは「厚い紙に替えれば丈夫になります」と答えました。担当者は少し間を置き、「紙が弱いという話ではなく、持ち手の切り口が手袋に引っかかります」と説明しました。
小松さんは強度についての説明を止め、どの作業で引っかかるのかを尋ねました。担当者から棚の箱を下ろす時だと聞き、持ち手の切り口を現物で確かめる必要があると分かりました。その場では厚い紙への変更を勧めませんでした。
小松さんが話を遮った時点で聞けたのは、箱を運ぶ時に持ち手で困るという前半だけです。箱が破れるのか、持ちにくいのか、手袋に引っかかるのかは、担当者が続きを話すまで分かりません。強度を上げる提案は、持ち手の切り口で起きている問題への答えになっていませんでした。
この例では担当者が言い直してくれました。ただ、相手が毎回訂正してくれるとは限りません。「説明を聞いてから考えます」と言って、肝心の現場の事情を話さないまま商談が終わることも考えられます。営業側は、相手が黙ったことを納得と取り違えないようにしたいところです。
木村まもるのレッスン資料では、お客様に十分話してもらい、「好意、質問、共感」の流れで相手の話を深めることを重視しています。相手の言葉を最後まで聞くのは、その流れの出発点です。まだ困りごとを聞き終えていない段階で商品を選ぶと、質問と共感の順番も飛ばしてしまいます。
遮った直後に返す短い一言
自分が話を遮ったと気づいたら、まず商品の説明を止めます。言いかけた提案を最後まで言う必要はありません。小松さんなら、「すみません、途中で口を挟みました。持ち手のところを、もう少し聞かせてください」と返せます。
この一言には、遮ったことを認める言葉と、相手が話していた箇所に戻る質問が入っています。「すみません」だけで終えると、次に何を話せばよいかをお客様が考えなければなりません。相手が言いかけた語を短く取り上げ、続きを話せるようにします。
ただし、聞こえた語を営業側で完成させないでください。「持ち手が破れたのですね」と決めつければ、先ほどの割り込みを別の形で繰り返します。ここで分かっているのは「持ち手のところ」という言葉までです。その先を相手の言葉で聞きます。
謝罪を長く重ねるのも考えものです。「申し訳ありません、急いでしまって、いつも気をつけてはいるのですが」と続けると、今度は営業側の弁解を相手に聞かせることになります。短く認めた後は、話す番を返しましょう。
相手の話が一区切りするまで、次の商品名や価格を出さずに待ちます。続きを聞いて初めて、何を確認すればよいかが分かります。小松さんの例なら、手袋の種類、箱を持つ向き、どの作業で引っかかるのかといった確認は、その後です。
続きを聞く前に避けたい三つの言動
話を遮った後は、取り返そうとしてさらに言葉を重ねがちです。とくに次の三つは、相手が話を続ける機会を狭めます。
- 先ほどの提案を続ける
- 遮った理由を長く説明する
- 確認したいことを一度に聞く
一つ目では、「丈夫な箱もありますし、軽い箱もあります」と選択肢を足してしまいます。相手の問題がまだ分からないので、商品の種類を増やしても話はかみ合いません。先ほどの提案はいったん止め、相手の説明を聞き終えてから必要なら出します。
二つ目では、「早く役に立ちたくて」と自分の事情を長く話してしまいます。焦った理由は営業側にとっては大きくても、相手が知りたいのは現場の困りごとを理解してもらえたかどうかでしょう。「途中で遮りました」と認めれば十分です。その後は相手の話に時間を使います。
三つ目では、「いつからですか? 何箱ですか? 他の資材でも起きますか?」と一度に聞いてしまいます。どれも後で必要になるかもしれませんが、相手は中断された話をまだ終えていません。質問を増やす前に「続きを聞かせてください」と返し、答えが出てから一つずつ聞きます。
この三つに共通するのは、相手が話すはずだった部分を営業側の言葉で埋めてしまう点です。遮った直後には、上手な切り返しを探すよりも、話す番を相手に返すことが先です。
持ち手の話に戻る会話例
小松さんがすぐに説明を止めた場合を、短いやり取りで見てみましょう。これは架空の会話例であり、実在のお客様の発言ではありません。
小松さん「先ほど話を遮ってしまいました。持ち手について、続きを聞かせてください」
担当者「持ち手の切り口が手袋に引っかかります。箱を棚から下ろす時に困っています」
小松さん「手袋に引っかかるのですね。棚から下ろす時は、どのように箱を持っていますか?」
担当者「片手で持ち手を持ち、もう片方の手で底を支えています」
担当者の話を聞いて初めて、小松さんは持ち手の切り口を確認すべきだと分かりました。さらに、棚から下ろす時の持ち方も聞けています。ここで箱の寸法や加工方法を調べれば、現場に合う提案を考える材料が増えます。
小松さんは手袋が引っかかるという担当者の説明を受けて、作業の様子を聞いています。「持ちにくい」という広い言葉に替えると、何が起きたかがぼやけます。相手の具体的な言葉を保ったまま、作業の様子を一つ聞くのです。
もし担当者が「もう結構です」と話を終えたら、その場で質問を続けないでください。小松さんは「分かりました。先ほどは途中で遮ってしまい、失礼しました」と伝えて区切れます。続きを聞く機会を相手が望まない時まで、取り戻そうとして追いかける必要はありません。
相手の反応に合わせた聞き方
謝って続きを促した後の返事は、いつも同じではありません。相手が詳しく話してくれる時もあれば、短い返事だけで終える時もあります。前者なら聞き終えてから一つ確認し、後者なら説明を増やさず、今必要な確認があるかを尋ねます。
たとえば「手袋に引っかかります」と答えてくれたら、「どの作業で引っかかりますか?」と一つだけ聞けます。作業が分かれば、現物を見る必要があるか、持ち手の形を試す必要があるかも判断できます。まだ提案の段階ではありません。
反対に「まあ、いろいろあります」と返されたら、細かい質問を畳みかけないでください。「今の箱について、先に私が確認した方がよいことはありますか?」と尋ね、相手が話題を選べるようにします。相手が特にないと答えれば、現時点で分かっている条件を確認して商談を区切ります。
相手が怒っているように見えても、表情だけで理由を断定できません。割り込まれたことが気になったのか、商品への不満が強いのか、別の予定が迫っているのかは分かりません。「遮ってしまいました」と自分の行動を認め、その後の返事に合わせて話す量を変えます。
また、相手が話し終えたと思って口を開いた瞬間に、続きが出ることもあります。その時も発言を奪い合わず、「どうぞ、続けてください」と短く譲ります。商談の一度の割り込みを取り繕うより、その後の聞き方を変える方が伝わります。
次の商談で試す練習
割り込みを減らしたいなら、商談の前に商品説明を長く練習するより、相手の答えが途中で止まった場面を練習してみましょう。二人でロープレを行い、相手役に「持ち手のところが」と言って一度止まってもらいます。営業役は答えを予想せず、続きを促す一文だけを返します。
相手役には、予想と違う続きを話してもらうと練習になります。箱の強度の話と思わせて、実際は持ち手の切り口が手袋に引っかかる話にする。価格の話と思わせて、実際には支払いの時期を相談したい。営業役が最後まで聞けたか、続きを聞く前に答えを決めていないかを見ます。
レッスンで扱う順番は、質問を次々に出すための合図ではありません。相手の答えを受け止めてから、必要なところを聞く流れです。ロープレでも、質問の数や滑らかさを競うより、相手が話し終えるまで待てたかを確かめます。
一度遮ってしまったとしても、会話の終わりまで説明し続ける必要はありません。途中で気づいたなら、そこで止めて続きを聞けます。あなたが変える行動を一つに絞るなら、「言いかけた相手の語を拾って、続きを聞く」です。
営業Q&A
お客様が話を遮られたことに気づいていないようなら謝らなくてもよいですか?
相手が気にしているかどうかは、営業側には分かりません。大きく謝り続ける必要はありませんが、「途中で口を挟みました。続きを聞かせてください」と伝えれば、聞き落とした話を聞けます。相手がそのまま話してくれたら、最後まで聞きましょう。
回答
謝罪を短く済ませ、相手が言いかけた内容を聞き終えましょう。
続きを聞いても相手の話が長い時はどうしますか?
商談の時間に限りがある時は、相手が一段落したところで、話した内容を短く確かめます。「今の箱では、持ち手の切り口が手袋に引っかかるのですね」と受けてから、「今日はどこまで確認できると助かりますか?」と聞きましょう。途中の一文を遮って時間を縮めると、必要な事情まで落としてしまいます。
回答
相手が話し終えてから、その商談で確かめる範囲を一緒に決めます。
言いかけた内容を聞き終える
お客様の話を遮った時は、説明を止め、遮ったことを短く認めます。そして、相手が最後に使った言葉を手がかりに、続きを聞きましょう。小松さんの例では、持ち手について言いかけた内容を聞いてから、作業の様子を確かめました。
- 言いかけた提案を途中で止める
- 遮ったことを短く認める
- 相手の言葉から続きを聞く
相手の困りごとは、話を聞き終えてから初めて確かめられます。次の商談で途中に口を挟んだら、その場で説明を止め、相手が言いかけた内容を聞きましょう。
木村 守(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント)
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