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看板製作の営業ではデザイン案の前に通行人の読み方を聞く

三秒で読まれる看板提案

看板製作の営業では、デザイン案を早く見せたくなります。色、書体、ロゴの大きさ、素材の質感。目に見える提案なので、相手も反応しやすいからです。

ただ、看板は会議室でじっくり読むものではありません。導入後は、店の前を歩く人、車で通る人、曲がり角から見える人が、短い時間で何を読むかが判断の中心になります。

看板製作営業では、デザイン案を出す前に、通行人が何を先に読むかを聞きます。見た目の好みより、読まれる順番が合っているかが商談を左右します。

現場写真を見せても決定が伸びる時は、次の悩みが残っていないか確認してください。

  • デザイン案を出しても決定が伸びやすい方
  • 色や素材の話が好みの議論に寄りやすい方
  • 現地写真を使って判断材料を作りたい方

看板の提案は、きれいに見える案より、通る人が三秒で読める案から組み立てます。そのための聞き方を見ていきます。

好みで止まるデザイン案

デザイン案を先に見せると、商談は盛り上がります。色の好み、ロゴの大きさ、写真の有無など、相手も話しやすい材料が多いからです。

佐藤 陽介さん(仮名、店舗向け看板製作の営業を担当)は、以前、三案のデザインを作ってから訪問していました。担当者は「どれもきれいですね」と言いましたが、決定は伸びました。後で出た不安は、車から見た時の店名の読みやすさでした。

しかし、好みの話だけで進むと、最後に判断が止まります。担当者が気にしているのは、好きな色かどうかだけで終わりません。通行人が店名を読めるか、業種が分かるか、入口を間違えないか。そこが決まらないと、社内で説明しにくくなります。

担当者が三案を見ながら「青もいいですね」と言った場面で、佐藤さんは青の案を広げて説明しました。ところが担当者は、しばらくして「車から見ると店名が読めないかもしれません」と言いました。

私はその現地写真を見ました。店の前は片側一車線の道路で、車はゆっくり止まりません。看板を見る時間は長くても三秒ほどです。写真の中ではロゴはきれいでしたが、店名より装飾線が目立っていました。

ここで見るべきは、青か緑かの比較より、車から来る人が最初に店名を読めるかです。

現地写真で見る読み順

佐藤さんは、次の商談から現場写真を一枚だけ最初に出しました。完成予想図を閉じ、道路側から撮った写真で話をはじめました。

佐藤さん「この写真で、車の人が最初に読むのは店名、業種、入口表示のどれになりそうですか?」
担当者「店名ですね。ただ、今の案だとロゴに目が行きます」
佐藤さん「では、ロゴを小さくする話の前に、店名をどの位置で読むかを決めてもよいですか?」

この二往復で、話題は好みから読み順に変わりました。担当者は、車の人が最初に何を読むかを考えました。

現場写真を見る時は、空いている壁面だけを見ません。人や車がどこから来るか、何秒見られるか、どの文字が最初に目に入るかを見ます。看板のサイズは、その後に決めます。

佐藤さんは写真に三つだけ印を付けました。車が来る方向、歩行者が曲がる角、入口前で立ち止まる場所です。担当者はその印を見て、「入口表示は小さくてよいですが、店名は左側ですね」と言いました。

看板の判断材料は、案の数より、誰がどこから何を読むかです。

色を決める前の一文

読み順が決まると、色の話も変わります。青が好き、緑が落ち着く、赤は目立つ。こうした感想は大事ですが、最初に見るべきなのは背景との距離です。

佐藤さんは、担当者に「この道路側から見る人には、店名を一番先に読ませたいですね」と確認しました。担当者は「はい。業種はその次でいいです」と答えました。

その後で、佐藤さんは色を見せました。「店名を最初に読ませるなら、背景と近い青より、白地に濃い緑の方が距離が出ます」と説明しました。色の好みより、読み順を守るための色です。

担当者は「緑は少し地味かと思いましたが、道路から読むなら分かります」と答えました。この返事があると、社内説明にも使えます。担当者は、好きな色だからという説明を避け、「道路から店名を読むため」と説明できます。

佐藤さんはこの商談から、色見本を出す順番を変えました。以前は三案を横に並べていましたが、今は現場写真で読み順を決めてから色見本を一つずつ見せます。担当者が迷う場所を、色の好みから読む目的に移したのです。

提案書にも、佐藤さんは一文を入れました。「車から三秒で店名を読めるよう、店名の色を背景から離します」。この一文があると、デザイン案の理由が見えます。

昼と夜で変わる見え方

看板は時間帯でも見え方が変わります。昼に読めても、夜に照明で文字が沈むことがあります。逆に、夜は目立っても、昼は周囲の看板に埋もれることもあります。

佐藤さんは、担当者に「来店が多いのは昼と夜のどちらですか?」と聞きました。担当者は「夕方以降です」と答えました。ここで、昼の写真だけで決めるのは危険だと分かりました。

佐藤さんは、同じ場所を夕方に撮った写真も用意しました。昼の案では白地がきれいでしたが、夕方の写真では周囲の照明に負けていました。担当者は「夜だと入口が分かりにくいですね」と言いました。

そこで佐藤さんは、店名を大きくせず、入口表示の位置を少し下げました。夜に歩いて来る人は、上の看板より入口横の表示を見ます。読む人の動きを見た修正です。

この確認を入れると、追加費用の説明も変わります。「照明を足すと高くなります」という言い方より、「夕方以降の来店が多いので、入口表示だけ照明を当てます」と伝える方が具体的になります。費用の理由が、相手の来店時間とつながるからです。

見積に残す読み方の根拠

看板製作の見積は、素材や大きさの一覧になりがちです。もちろん必要ですが、それだけでは担当者が判断しにくくなります。なぜそのサイズなのか、なぜその色なのか、なぜその照明なのかが見えないからです。

佐藤さんは、見積の前に三つの根拠を書きました。道路側から三秒で店名を読むこと。夕方以降は入口横の表示を見せること。業種名は店名の後に読むこと。この三つです。

担当者はその見積を見て、「これなら社内で説明できます」と言いました。見積金額に加えて、看板を作る理由が一緒に書かれていたからです。

後日、上司からは「なぜロゴを小さくするのか?」と質問がありました。担当者は「車から店名を先に読むためです」と答えました。佐藤さんが代わりに説明しなくても、担当者が自分の言葉で話せたのです。

最終案では、ロゴを少し控え、店名を左側に置き、入口横の表示に夕方用の照明を当てました。派手な案ではありません。それでも担当者は「通る人が迷わなそうです」と言いました。看板の役割が、店側の好みから通行人の読み方に変わった瞬間でした。

施工前の確認でも、佐藤さんは色見本だけを持って行きませんでした。道路の反対側から撮った写真に、店名、業種名、入口表示の順番を番号で入れました。担当者はその写真を見て、「これなら上司に一枚で見せられます」と言いました。

上司確認では、別の意見も出ました。「もう少し目立つ赤にできないか」という声です。以前の佐藤さんなら、赤の案を追加していたかもしれません。今回は、赤にした時の現場写真も横に並べました。赤は目立ちますが、隣の店舗の赤いのぼりと重なり、店名の輪郭が弱く見えました。

佐藤さんは「目立たせるなら赤も選べます。ただ、三秒で店名を読む目的なら、白地に濃い緑の方が背景から離れます」と伝えました。担当者はその説明を聞き、「目立つより、読める方で出します」と答えました。好みの議論が、読み方の議論に戻った場面です。

施工後、担当者からは「夕方に来るお客様から、入口が分かりやすくなったと言われました」と連絡がありました。佐藤さんはその言葉を次回提案の資料に入れませんでした。代わりに、現地写真の確認手順として残しました。誰が、どこから、何秒で、何を読むか。この順番を次の商談でも使えるようにしたのです。

看板製作では、完成品の写真だけに限らず、提案前にどの写真を見て、どの読み順を決め、どの質問に答えたかも実績です。そこまで残すと、次の担当者にも説明しやすい営業資料になります。

見積後の電話でも、佐藤さんは金額だけを確認しませんでした。「上司の方が見る時に、三秒で店名を読む説明は伝わりましたか?」と聞きました。担当者は「そこは伝わりました。迷っているのは照明の範囲だけです」と答えました。ここまで分かれば、次に話すのは全体の値引きより、入口横の照明範囲です。読み方の根拠を残しておくと、見積後の修正箇所も絞れます。

営業Q&A

デザイン案を求められたら先に出してよいですか?

完成イメージを急がれる場面です。

回答

出して構いません。その前に「誰がどこから読む案として見ますか?」と一言だけ確認します。読み方の前提があると、色や書体の議論が好みだけで終わりません。

現地写真がない時はどう進めますか?

まだ訪問前で写真がない場面です。

回答

相手に正面写真を一枚だけ依頼します。難しければ、通行人が来る方向と来店が多い時間帯だけ聞きます。完璧な写真より、読む人の位置を先に決めることが大切です。

読まれる順番を決める一枚

看板製作営業では、デザイン案を出す前に、通行人が何を先に読むかを聞きます。道路側、歩行者の角、入口前のどこから見るのかが分かると、色、文字、照明の理由がはっきりします。きれいな看板より、読まれる順番が合った看板が社内で説明しやすい案になります。

  • 現地写真で最初に読む文字を決めること
  • 色は好みより背景との距離で説明すること
  • 見積に読み方の根拠を残すこと

次の商談では、デザイン案の前に「通る人は最初に何を読みますか?」と聞いてください。その答えから、相手が説明できる看板案を作れます。

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営業指導歴22年。1000件以上の顧客との商談経験。1000人以上の営業相談に応じてきた。ある経営者との出会いを機に営業ノウハウを体系化。元ニートの落ちこぼれ営業を最下位グループからたった1か月で全国300人中トップに一発逆転させた。営業経験・実績に基づいた、わかりやすい営業ノウハウ・セミナーでの解説に定評がある。

 
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