複数人の商談では誰に質問する? 担当者と上司の意見を聞く順番
立場の違うお客様と話す時の質問の順番
担当者に尋ねたつもりが隣の上司から返事が来て、使いやすさの話が費用の話に変わってしまった。複数人が参加する商談では、どちらの話を先に聞けばよいのか迷います。
ここで全員を一度に納得させようと、商品説明を増やしていませんか? まず知りたいのは、それぞれが今日の商談で確かめたいことです。役職だけで話す相手を選ぶと、実際に使う人の困りごとを聞きそびれてしまいます。
こんな人におすすめの記事です。
- 担当者と上司のどちらに質問すればよいか迷う方
- 同席者の希望が違い、提案をまとめられない方
- 話していない人の考えをどう聞くか悩む方
これから一つひとつ見ていきましょう。
冒頭での役割と相談内容の聞き取り
商談前に窓口の担当者から参加者を聞いておくと、資料を用意しやすくなります。ただ、当日になって別の方が加わることもあるでしょう。人数が増えたら、用意した説明を急ぐより、挨拶の後で参加した理由を尋ねましょう。
「皆様が普段担当されているお仕事と、今日確かめたいことを伺ってもよろしいですか?」と伝えれば、名刺の肩書きだけでは分からない業務も聞けます。いつも連絡している担当者から話してもらい、その方に同席者を紹介してもらう進め方も自然です。
例えば、担当者は日々の作業、上司は予算、別の同席者は導入後の管理を確かめに来ているかもしれません。これはあくまで質問するための見当です。購買担当だから価格、現場担当だから操作、と決めつけず、本人の答えを聞きましょう。
最初に尋ねるのは、誰が賛成してくれそうかではありません。参加した人が何を知りたくて、その席にいるのかをつかみます。希望を聞いた後は、今日の終了時刻も確かめ、先に話したい内容を皆さんと相談してください。
担当者と上司の希望が違うロープレ
藤原直人さん(仮名、業務用クリーニングの集配営業)の架空のロープレです。工場の現場担当者と、その上司が商談に参加しています。
現場担当者「遅番の着替えが足りなくて困っています。」
上司「ただ、月々の支払いを増やすのは難しいのです。」
藤原さん「着替えの不足と、月々のお支払いが気になっているのですね。先に、着替えが足りなくなるのはどんな日か伺ってもよろしいですか?」
現場担当者「月曜です。応援の人が増えるのですが、その人たちの分が足りません。」
藤原さん「月曜に応援の方が増えるのですね。その方たちの作業着は、今どのように用意されていますか?」
現場担当者「空いている作業着を探しています。事前に人数を確認して用意する担当は決まっていません。」
藤原さん「作業着の用意の仕方も分かりました。上司の方は、どんな費用を特に気にされていますか?」
上司「今の定額料金に加えて、追加の集配料金がかかるのか気になります。」
この段階で「集配回数を増やせば解決します」と答えると、応援の人のための作業着が用意されていない事情も、追加料金の心配も調べないまま提案に入ってしまいます。藤原さんは、着替えが足りなくなる場面を具体的に聞いた後で、費用について上司が考えていることを尋ねました。
同じ会社の人でも、担当している仕事によって気になることは違います。現場担当者の話を聞けば上司の話は不要、という関係ではありません。現状をそれぞれに話してもらってから、どのようにしたいのかを聞きましょう。
続けて、現場担当者には月曜に用意したい着替えの枚数、上司には月々の支払いについて許容できる条件を尋ねます。工場側で人数を把握して用意する作業と、クリーニング会社へ相談する集配の回数を分ければ、持ち帰って答える内容もはっきりするでしょう。
食い違う発言の受け止め方
「担当者は欲しいと言っている」「上司だけが反対している」と受け取ると、営業する側は上司を説得したくなります。しかし、話が食い違って見える時も、同じ対象について話しているとは限りません。
先ほどのロープレでは、現場担当者は着替えが足りないこと、上司は毎月の支出を話していました。どちらかを訂正する前に、発言の対象を分けて受け止めます。着替えの枚数と集配料金を別々に尋ねれば、何を相談しているかが曖昧になりません。
一方、担当者が「毎日困っています」と言い、上司が「月末だけでしょう」と答えたら、同じ着替えの不足について、両者の認識が違うのです。この時は、多数決で決めるのではなく、「直近では、いつの勤務で足りなくなりましたか?」と出来事を聞く方法が取れます。
日付や作業を確かめても、その場で分からなければ、作業記録を見られる人に後で確認してもらいましょう。営業担当者の推測で、どちらかの発言を事実として提案書に書くのは危うい対応です。未確認の点は、確認する人と連絡日を相談してください。
同じ出来事を把握できた後も、希望が違うなら、その理由を両方に聞きます。例えば、早く導入したい理由が繁忙期への備えで、導入を待ちたい理由が設置場所の工事なら、導入日の案を考える前に工事予定の確認が欠かせません。
「皆さんにとって何が一番大事ですか?」だけでは、話しやすい人の希望が全体の希望として扱われがちです。意見を一つにまとめる前に、それぞれがそう考える理由を聞きます。そのうえで、両方の条件を満たせるか、自社で調べる内容をお伝えするのです。
発言の少ない同席者への声のかけ方
黙っている方を見ると、内容に不満があるのか気になるでしょう。ただ、沈黙やうなずきなどの反応だけで、賛成とも反対とも判断できません。説明を聞くために来た人も、後で社内確認を担当する人もいます。
いきなり「どう思いますか?」と全体の感想を求めると、答える内容を選びにくいでしょう。先に業務との関わりを聞いていれば、「集配時の受け渡しを担当されると伺いました。ここまでの話で、受け渡す場所や時間について確かめたい点はありますか?」のように、担当する仕事に沿って尋ねられます。
返答が短くても、続きを急がず待ちましょう。「今は特にありません」という返答も、本人の意思として受け止めることです。詳しい話を後で窓口の担当者に伝えると決めている方もいるので、今日その場で答えを求める理由があるか考えます。全員から同じ長さの発言を引き出すことが商談の目的ではありません。
また、担当者の発言中に上司が答えはじめた時は、話し終わったところで内容を受け、その後で担当者に尋ねます。「費用についてのお考えは分かりました。日々使う時のことも伺いたいので、作業着を用意する流れをもう少し教えていただけますか?」と、聞きたい理由を添えると自然です。
上司を制止して担当者に答えさせたり、黙っている人を何度も指名したりすると、その人が話しにくくなるおそれがあります。今日答えられる内容を聞き、確認が必要な点は後日の連絡に分けてください。
営業Q&A
商談の途中で別の方が参加したら説明をやり直しますか?
担当者と話している途中で、その上司が会議室に来ました。同じ説明を最初から聞かせると担当者を待たせますが、説明を省くと上司が話についてこられないのでは、という悩みです。
回答
まず挨拶をし、途中から参加した方が、これまでの相談をどこまで聞いているか尋ねます。すでに資料に目を通し、特定の項目だけ確かめに来たのなら、その項目について話せるでしょう。
事情をまだ知らない方なら、担当者の了承を得て、ここまで聞いた困りごとと検討中の内容を短く伝えます。この要約の後で、担当者にも認識が合っているか確かめてください。営業担当者の説明だけで、その場にいた人の考えを代弁しきったと思うのは早計です。
例えば、着替えの不足を相談している途中なら、集配サービスの説明を最初から並べるより、月曜の遅番に着替えを用意したいという相談の経緯を共有してから、途中参加した方にも確かめたいことを尋ねると、説明の重複を減らせます。
ただし、残り時間ではその方の疑問に答えきれない時もあるでしょう。今日説明する範囲を相談し、別に時間が必要な話は次回の日程を決めましょう。先に参加していた方との終了予定時刻と、新しく参加した方の質問の両方を尊重する進め方です。
終わる前に確かめる決定事項と未回答の用件
複数人の商談では、一人の「いいですね」を会社全体の了承と受け取らないようにします。気に入ったという感想なのか、条件の検討を進めたいのか、購入に同意したのかは別の話です。
説明を終えたら、今日決まった内容と、まだ答えていない用件を短く伝えましょう。ロープレの例では、工場側で応援の人数を確かめることと、クリーニング会社側で追加の集配料金を調べることを宿題として相談できます。その後に、確認する人と連絡日を相手と相談する順番です。
連絡の窓口も、ここで確かめておきましょう。参加者全員に個別連絡すると、別々の回答が届いて話が行き違うおそれがあるため、いつもの担当者に集約するのか、項目ごとに別の方へ回答するのか、相手の希望を聞いて決めます。
次回に別の方の判断が必要なら、誰に、何を確かめてもらうのかまで確認してください。決裁者が席にいない時の詳しい進め方は、営業で決裁者が不在なら伝言より判断材料を先に聞くでも解説しています。今日の参加者が話せる範囲と、次の確認を分けるための参考にしてください。
その場で皆さんがうなずいたことと、購入が決まったことを分けて確かめます。商談後のメールも、感想を契約の了承に書き換えず、その場で相談した用件に沿って送りましょう。
次の訪問に向けた参加者別の準備
複数人の商談での質問の順番と、希望が違う時の聞き方を解説しました。
- 担当する仕事と今日確かめたいこと
- 食い違う発言の対象とそれぞれの理由
- 確認する人と連絡日
訪問前に参加者が分かったら、各自の担当業務について尋ねる一文を用意しておきましょう。当日初めて会う方が増えても、挨拶に続けてその方の話を聞ける準備になります。
木村 守(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント)
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