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営業で失注理由を聞く時は責めずに比べた条件を聞く

断られた後に次へつなぐ学び

メールの件名に「今回は見送ります」と入っていました。営業側は、その一文を見た瞬間に、もう聞かない方がよいと感じます。相手を責めているように見えないか。言い訳を聞かされるだけではないか。そう考えて、「また機会があればお願いします」と終えてしまう方は少なくありません。

ある案件で、担当者から「今回は別の会社にします」と言われました。ここで聞くか、引くか。営業側の次の一言で、相手の印象も、その後の学びも変わります。

小島悠介さん(仮名、法人向け採用支援を提案する営業担当者)は、その案件を担当していました。以前ならお礼だけで終えていました。選ばれなかった理由を聞きたい気持ちはあります。けれど、断られた直後に聞くとしつこく見える気がしていました。

今回は、お礼を伝えたうえで、比べた条件を一つだけ聞きました。聞く目的を契約の取り戻しに置かず、次の商談で先に見る材料をもらう形にしたのです。

営業で失注理由を聞く時は、相手を責めずに比べた条件を聞きます。勝ち負けの理由を広く聞くより、相手が判断に使った一点を聞く方が次の商談に使えます。

失注後に見るのは、比べた条件、残った不安、次に変える一項目です。失注理由の確認は、相手の判断を責める時間にせず、次に役立つ条件を知る時間として扱います。

なぜですかが詰問に聞こえる時

失注後に理由を聞くこと自体は大事です。ただし、聞き方によっては相手を責めているように聞こえます。「なぜ他社にしたのですか」と正面から聞くと、担当者は答えにくくなります。

担当者も、断った相手に細かな理由を話すのは気を使います。価格、実績、社内説明、導入時期。複数の条件が混ざっているのに、一つの理由にまとめて話そうとします。

小島さんは、以前の失注後に「価格ですか」と聞いていました。すると担当者は「そうですね」と答えます。これでは、価格以外の判断材料が見えません。

失注理由を聞く時は、相手が答えやすいように、比べた条件を一つ聞きます。価格を聞く前に、何と比べたのかを聞くのです。

比べた条件を一つにする

小島さんは、断られた直後にこう聞きました。

小島さん「今回は別の会社にされたのですね。差し支えなければ、最後に比べた条件を一つだけ教えてください。価格、開始時期、社内説明のしやすさなら、どれが一番近かったですか」

担当者は、「社内説明のしやすさです」と答えました。小島さんは、その言葉を変えませんでした。提案資料の完成度、決裁ルート、上司説得力と言い換えず、社内説明のしやすさとして扱いました。

この一問なら、担当者は答えやすくなります。全部の理由を説明する必要がなく、最後に比べた条件を一つ選ぶだけだからです。営業側も、次に直す箇所を考えやすくなります。

ここで「うちの社内説明もできたはずです」と返すと、反論になります。失注後は、言い返すより先に学びを受け取ります。

残った不安を短く聞く会話

比べた条件が見えたら、次に残った不安を聞きます。これも広く聞きません。社内説明のしやすさが理由なら、どの説明で止まったのかだけを聞きます。

小島さん「社内説明のしやすさだったのですね。こちらの提案で、説明しにくかったのは費用の理由でしょうか? それとも、開始後の動きでしょうか?」
担当者「開始後の動きが見えにくかったです」
小島さん「開始後の動きですね。そこを次回から先に見せます」

この会話では、担当者が言った開始後の動きを軸にします。運用設計、導入フロー、定着支援と広げる前に、相手が引っかかった言葉で受け止めます。

小島さんは、これ以上その場で売り直しませんでした。失注後の会話で新しい提案をはじめると、相手は断った判断を否定されたように感じます。

失注後の質問は、契約を取り戻す目的に寄せず、次の商談で先に見る条件を知るために使います。

この時、小島さんが守ったのは、相手の判断を先に受け止めることです。「今回は別の会社にされたのですね」と言ってから聞きました。いきなり理由を聞くより、相手は話しやすくなります。

担当者が答えてくれた後も、反論の材料にしませんでした。開始後の動きが分かりにくかった、と言われたなら、その場で資料の送り直しを急がず、「次回から先に見せます」と受けます。

失注後の会話は短くて構いません。長くなるほど、相手は再提案を受けている気持ちになります。小島さんは三往復で終え、最後にお礼を伝えました。

提案書の冒頭を変える

小島さんが次に変えたのは、提案書の冒頭です。以前はサービス内容と実績からはじめていました。次の商談では、開始後の動きを先に置きました。

具体的には、申込後一週間で誰が何をするかを書きました。営業側が行う初回説明、担当者が社内で共有する一文、現場から質問が出た時の窓口。この三つです。

ただし、前回の失注を一般化しすぎないようにしました。開始後の動きだけを、すべての商談で強調する必要はありません。担当者が社内説明で止まりやすい案件だけ、提案の前半に入れます。

失注理由を聞く目的は、万能の改善策を作ることから少し離れています。次に似た場面が来た時、先に確認する一項目を決めます。

小島さんは、次の案件で冒頭にこう聞きました。「今回、上司に説明する時に一番見せたいのは、費用の理由ですか、開始後の動きですか」。相手は「開始後の動きです」と答えました。

この時点で、前回の学びが生きました。小島さんは商品説明を短くし、申込後一週間の流れを先に見せました。相手は、上司に話す順番をその場で組み立てられました。

失注から得た一項目は、次の商談で早く確認するために使います。失った案件の取り戻しより、次のお客様が迷う前に必要な材料を出すことに向けます。

商談記録を短く使う

失注後の記録も、長く書きすぎると使いにくくなります。小島さんは、商談記録を三つに絞りました。比べた条件、残った不安、次に変える一項目です。

  • 比べた条件: 社内説明のしやすさ
  • 残った不安: 開始後の動き
  • 次に変える一項目: 提案前半に開始後一週間の動きを入れる

この記録は、次の商談準備でそのまま見返せます。営業会議で共有する時も、価格で負けました、だけで終わらず、社内説明のしやすさで比べられたと話せます。

小島さんは、次の採用支援の商談でこの記録を使いました。相手が上司説明を気にしていると分かった段階で、開始後一週間の動きを先に出しました。担当者は「それなら上司に話しやすいです」と答えました。

営業会議で共有する時も、記録が絞れていると話が短くなります。「価格で負けました」と言うだけなら、次の対策は値引きに寄ります。けれど、「社内説明のしやすさで比べられ、開始後の動きが不安でした」と言えば、資料の直す場所が変わります。

小島さんは、商談記録の最後に「次回は開始後一週間の動きを先に聞く」と書きました。この一文があるだけで、次の準備が具体的になります。

社内共有では、相手の会社名や担当者の細かな事情を広げすぎません。共有するのは、判断に使われた条件です。今回なら、社内説明のしやすさ、開始後の動き、次回は開始後一週間の流れを先に聞くことまでで十分です。

小島さんは、次の商談前にこの記録を読み返しました。すると、提案書を作る前に聞く質問が決まりました。「申込後一週間で、社内の誰が最初に動きますか」。この一問があると、資料を出す前に相手が誰に説明するのかが見えます。

失注理由を聞いた後の改善は、大きな作り直しでなくても構いません。次に聞く順番を一つ変えるだけでも、相手が迷う場所は早く見えます。

この共有をすると、失注報告の空気も少し変わります。誰が悪かったかを探す話ではなく、次の商談で先に確かめる条件をそろえる話になるからです。

関係を切らない終わり方

失注後に理由を聞く時は、最後の終わり方も大事です。理由を聞いた後に、相手に再提案を迫らないことです。

小島さんは、「教えていただいてありがとうございます。今回は御社の判断を尊重します。次に似た相談があれば、開始後の動きから先にお話しします」と伝えました。

この終わり方なら、相手は答えたことを後悔しにくくなります。営業側も、関係を切らずに次の学びを受け取れます。

失注はつらいものです。けれど、比べた条件を一つ聞ければ、次の商談で見る場所が変わります。相手を責めず、相手の判断を尊重したまま、学びだけを受け取ります。

失注後は、反論の言葉で返さず、次の商談で先に聞く一項目を決めます。

営業Q&A

失注理由はどのタイミングで聞けばよいですか?

断られた直後に聞くと、しつこく見えないか心配な場面です。

回答

相手の判断を受け止めた後に、一つだけ聞きます。最後にどの条件を比べたのかに範囲を絞ると、答える負担が軽くなります。

価格と言われたらどう返せばよいですか?

価格で負けたと聞くと、値引きや反論をしたくなる場面です。

回答

すぐ値引きの話に入らず、何と比べた価格なのかを聞きます。初期費用、月額、開始後の手間など、比べた条件が見えると次の提案で先に扱う場所が分かります。

次の商談で先に聞く

営業で失注理由を聞く時は、相手を責めずに比べた条件を聞きます。比べた条件、残った不安、次に変える一項目が見えれば、失注は次の商談準備に変わります。

次に断られた時は、「なぜですか」と詰めず、「価格、時期、社内説明ならどれが近かったですか」と聞いてください。相手の判断を尊重し、その答えを次の提案で先に見る一項目にしましょう。

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営業指導歴22年。1000件以上の顧客との商談経験。1000人以上の営業相談に応じてきた。ある経営者との出会いを機に営業ノウハウを体系化。元ニートの落ちこぼれ営業を最下位グループからたった1か月で全国300人中トップに一発逆転させた。営業経験・実績に基づいた、わかりやすい営業ノウハウ・セミナーでの解説に定評がある。

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