
営業に必要な傾聴力を身につけるたった1つの方法
あなたは売上をあげたくて悩んでいる営業マンか、反抗的な部下を持つ上司のどちらかでしょう。きっと、傾聴・ヒアリングが大切と気づいておられますよね。
「傾聴ってなに?」「ヒアリングとどう違うの?」「どうすればいいかわからない!」「コツが知りたい」と思って、悩んでいるに違いありません。
あなたは会社員として今までやってきて、傾聴・ヒアリングを学ぶ機会がなかったのですから、無理はありません。傾聴を学ばず、生まれながらにして自然と傾聴できる人はごくわずかです。
私の知る限り、多くのトップセールスが傾聴スキルを身につけています。できる上司・会社で昇進していく人も必ずといっていいほどもっている傾聴スキル。
生まれもって傾聴の才能がある人はごく一部なのでおいときましょう。
目をつけるべきなのは、後天的に身につけた人。
後天的に身につけた人は、はじめから100点満点の力を発揮したのでしょうか?決していきなり完璧にできるとは限りませんね?はじめは傾聴とは何かから、学ぶことがファーストステップ。傾聴力が身についていくにつれ、売上があがったり、部下と良好な関係性を築いていくのです。
あなたが明日から実践できる具体的で大切な内容をお伝えします。
記事を読み終えたあと、あなたは、「営業の現場で実践してみよう!」「職場の部下との面談でやってみよう!」と思っているはずです。
近い未来にあなたは、「売上がスルッとあがった!」「反抗的な部下が思い通りに動いてくれる!」と劇的に変わっていることでしょう。
傾聴・ヒアリングの違いとは?
傾聴とは?
そもそも傾聴とは何なのでしょうか?読んで字のごとく、相手に耳を傾けること。
英語ではアクティブリスニング(積極的に聞くこと)といわれます。
「いやぁ。さっぱりわかりません。」という声が聞こえてきそうです。
あなたは相手の話に耳を傾けたことはありますか?「耳を傾ける」とは、じっくり相手の話を聞いて、本質を理解しようとすること。あなたが話すのではなく、相手の話が中心の時間をもつことです。
「まだイメージできません。」
という方のために、傾聴をイメージしていただきたいので、次の3つの画像をご覧ください。
いかがでしたか?
「私は営業マンなので商品説明するのが仕事。顧客の話を聞いてばかりいられません。」
「私は職場のリーダー。部下に仕事を割り振ったり、働かせるのが仕事。話なんか聞いてどうするのですか?」
といいたくなる気もちもわかります。
いまは「傾聴とはなにか」を理解することが大切ですよね。本題にもどりましょう。
アメリカの著名な心理学者のであるカール・ロジャーズ氏によって提唱されたのが傾聴という概念。精神的な病気をかかえた方(クライエント)のカウンセリング(心理療法)が起源です。ロジャーズ氏は自らがカウンセラーとして、カウンセリングした数多くの実例をもとに、効果的だった原則を導き出したのです。
ロジャーズの3原則とは
ロジャーズの3原則とは
- 1:共感的理解
- 2:無条件の肯定的関心
- 3:自己一致
相手の話を相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら理解しようとすること。
相手の話をよい・悪い、好き・嫌いと評価せずに聴く。相手の話を否定しない。そのように考えるようになったのはなぜなのか。話の背景に肯定的な興味・関心をもって聴く。これらにより、相手は安心して話せる。
相手に対しても、自分に対しても真摯な態度で聴く。話がわかりにくい時はわかりませんと伝える。話の本質・真意を確認する。わからないことをそのままにしない。
です。
「漢字ばかりで難しそう。」
「カウンセラーが使う専門的な技法を使えるはずがない。」
と思う方もおられるでしょう。専門的な技法といっても、なにか特別な道具をつかうわけではありません。
あるのは、カウンセラーとクライエントだけ。
クライエントの話したいことにカウンセラーはうなづき、クライエントの話に興味をもって、聴いたことの認識をたしかめながら進めていくのです。カウンセラーは心理が専門ですので、営業マンのような商品説明や、上司から部下へ仕事を指示するようなことはありません。話の中心はクライエント。カウンセラーは寄り添う感じです。
「ん~ピンときません」
では、よくない事例をお伝えしますね。久しぶりにあった友人とあなたが喫茶店で話していると想像してください。
- 友人「最近さあ、上司から営業がヘタだって言われたんだよ。」
- あなた「わかるわ~。デキない上司に限って言ってくるんだよね。腹立つわ。」
あなたは世間一般でいわれる共感をしたつもりかもしれません。しかし、ロジャーズ氏のいう、共感的理解とは程遠い。違いは何だと思いますか?
友人は、上司から「営業がヘタ」だと言われて、怒っているかもしれない、イライラしているかもしれない。あなたに話を聞いて欲しかったかもしれないのです。なのに、プツッと話が途切れてしまった。
世間話のレベルであれば、話が途切れるのは日常茶飯時でしょう。しかし、相手がひどく落ち込んでいたら、もっと親身になって話を聴いてあげたいものですよね。あなたの恋人なら、パートナーなら、大切な家族なら、じっくりと相手の立場に立って聴いてあげるはずですよね。
上司と部下でたとえると次のようになります。普段まったく口をきかない上司が部下に対して、「新しいプロジェクトの資料を、明日までに作ってくれ。」というと、どうなるでしょうか?「私の仕事の状況も知らないで、なんてひどい上司なんだ。」と嫌がられるに違いありません。傾聴・ヒアリングは営業マンにも職場の上司にも必要なスキルなのです。
著名な経営学者である入山氏は、今後のリーダーの仕事は「聞く」「傾聴すること」と語っています。
今後のリーダーの仕事は「聞く」「傾聴する」ことだ。傾聴できないリーダーは組織をまとめられない。
出典:2021/12/25 日本経済新聞 朝刊 30ページ 回顧2021――経営学者入山章栄(私の3冊)
傾聴・ヒアリングの違いとは?
傾聴とヒアリングの違いとは何でしょうか?一概にはいい切れません。実際に私が聞いた意見をご紹介します。
- 傾聴よりヒアリングの方が、淡々と質問するイメージがある。
- ヒアリングの方が冷たいように感じる。
- ヒアリングより傾聴の方がじっくり聴いてくれそう。
- ロジャースの3原則に沿っているのが傾聴。沿っていないのはヒアリング。
- 事実だけを聴くのがヒアリング。気持ちを聴くのが傾聴。
いろいろな意見がありますね。傾聴とヒアリングという言葉は違った印象をもつ方がおられるようです。
相談者が過去のトラウマや悲しい事実があるとしても、今ここにいる相談者はどのような気持ちなのかを理解しようとすること。過去の事実に対して、当時の感情と今の感情は異なることがあるからです。当時は「悲しくてツラい。」と思っていた。しかし、今では「そのおかげで今がある」とポジティブに考えていたりします。その逆もあります。
傾聴で信頼関係をつくる方法とは?
ホットボタンを押す
あなたはお客様との信頼関係をどのようにつくっていますか?ホットボタンを押すことが手がかりのひとつです。ホットボタンとはお客様の価値観と一致すること。会話がピタリとはまり、感動すら覚えることです。いくつかの事例でホットボタンのイメージをつかんでいきましょう。
NHKの「ファミリーヒストリー」という番組をご存知ですか?タレントさんのご家族の物語を追う番組です。映画館のような場所で自らの家族の知られざるエピソードを目の当たりにして、ときには涙することさえあります。
ジャニーズの5人グループ「嵐」は2020年末に活動休止しました。リーダーの大野くんが「一度何事にも縛られず、自由な生活がしてみたい。」とメンバーに伝えたことがきっかけでした。メンバー5人で何度も何度も話し合い決断した活動休止。5人は互いに尊敬・感謝しあい、ファンを大切にし、活動休止という選択をしたのです。大野くんの思いにメンバーが共感した結果。大野くんが皆のホットボタンを押したといえるでしょう。
2016年に製作された映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」。主人公はマクドナルドの創業者レイ・クロック。当時は、シェイクミキサーのセールスマンだったクロック。カリフォルニア州にあるバーガーショップ「マクドナルド」のマクドナルド兄弟に会うところから物語が展開する。クロックは兄弟を食事に誘い、創業の歴史を語ってもらうのです。クロックの展望に共感したマクドナルド兄弟が、フランチャイズ化を了承したシーンは、まさにホットボタンを押された状態。ぜひ見てみてくださいね。
世界的に有名な日本のマンガ「ドラゴンボール」に目を向けてみましょう。孫悟空の宿敵であるフリーザと悟空が戦う場面。フリーザは悟空の親友であるクリリンを倒し、捨てゼリフを放ちます。親友を大切にする悟空が怒りをあらわにした場面がありました。友情を重んじる悟空のホットボタンがよくわかるシーンといえます。
いかがでしたか?ホットボタンのイメージはつかめたでしょうか?「どのようにお客様のホットボタンを見つけるのか?」と思った方もおられるでしょう。答えはカンタンです。
あなたが「どのような質問をされたら」「どのように聞かれたら」感動するのか。大切なのは価値観や信念の次元で質問をしてエピソードを引き出すことです。ぜひ試してみてくださいね。
ハウスメーカーのトップ営業マンも傾聴力を重視しています。営業というよりは、コンサルタントやアドバイザーに近い存在、専門家なのです。
自分の武器は傾聴力だと小堀さんは考える。「賃貸住宅の営業は、顧客が抱えている複雑な問題を解決するコンサルタントに近い」。
出典:2021/12/06 日経産業新聞 15ページ 積水ハウス小堀尚美さん――「建てたら終わり」にしない、賃貸住宅受注、女性トップ、聞く力で地主の思いつかむ(売れる営業)
まとめ
営業で傾聴を身につけるたった1つの方法についてみてきました。いかがでしたか?傾聴と営業の密接な関わりが理解できたのではないでしょうか。明日からの営業活動に役立ててくださいね。


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