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営業で質問に詰まった時は相手の最後の言葉から聞く

次の質問が出てこない時の一問

商談中に質問が止まる場面があります。用意した質問は聞き終えた。相手も答えてくれた。けれど、次に何を聞けばよいか分からず、資料説明に逃げたくなる場面です。

市川隼人さん(仮名、設備点検契約の営業を担当)は、初回商談でこの止まり方を何度も経験していました。相手が「今の点検会社でも大きな不満はありません」と話すと、市川さんはそこで質問を終え、点検項目の説明に入りました。

説明は丁寧でした。相手も聞いてくれました。ただ、商談後に残ったのは「資料を送ってください」という返事だけです。市川さんは、その返事の後にどの言葉を拾えばよいか分かっていませんでした。

営業で質問に詰まった時は、新しい質問を探す前に相手の最後の言葉を短く受けます。最後の言葉には、相手がまだ考えていることが残っているからです。

質問が止まった時ほど、営業側の説明を足すより、相手の言葉をもう一段だけ聞く方が商談は続きます。この記事では、質問に詰まった時の聞き直し方を解説します。

こんな人におすすめの記事です。

  • 相手の返事が短いと、次に何を聞けばよいか分からなくなる
  • 間が空くのが怖くて、すぐ資料説明に入ってしまう
  • 質問リストを増やしても、商談の途中で会話が途切れる

これから一つひとつ見ていきましょう。

質問が止まる瞬間

質問が止まる場面では、多くの場合、相手の返事を次の質問に使えていません。相手が答えた直後、営業側は次の質問を頭の中で探します。探している間に沈黙が怖くなり、商品説明をはじめてしまいます。

市川さんの商談でも、相手は次の質問の材料を口にしていました。大きな不満はないという返事の先に、細かい困りごとがあるのか、比べるほど困っていないのか、変える理由が見つかっていないのか。そこはまだ聞けていません。

ところが市川さんは、「不満はないのですね」と受けてすぐ資料説明に入りました。相手はうなずきますが、自分の状況をもう少し話す機会を失います。営業側は親切に説明しているつもりでも、相手の考えは途中で止まったままです。

私はこの初回商談に同席していました。担当者は資料の右下を指で押さえたまま、しばらくページをめくりませんでした。営業側は次の点検プランを説明していましたが、担当者は資料より、さっき自分が言った「大きな不満はありません」という言葉をまだ考えているように見えました。

商談の後、私が市川さんに伝えたのは、次の説明を足さず、相手が最後に言った言葉をそのまま受けてほしいということでした。今の点検会社に大きな不満はないなら、あえて見直すとしたらどこか。そこを一つだけ聞きます。市川さんは「それだけで話が続きますか?」と聞き返しました。それでも半信半疑のまま、その商談の終わりにもう一度だけ聞き直しています。

この時、担当者の表情が変わったのは、急ぎの連絡先の話に戻した時です。担当者は椅子を引き直し、「夜間に現場から電話が来ると、私も誰に振ればよいか迷います」と自分の担当範囲を話しはじめました。営業側が説明を続けていた時は聞く姿勢だった相手が、自分の困りごとを整理する側に変わったのです。

市川さんも、その変化を見てから、沈黙を怖がりすぎなくなりました。相手が考えている一拍を待つと、説明では拾えなかった事情が出てくると分かったからです。

商談後、市川さんは資料の順番を大きく変えませんでした。変えたのは、資料を開く前に相手の最後の一語に戻る一拍です。

最後の言葉を受ける二往復

相手の最後の言葉を受ける時は、長くまとめません。短く引用してから、一段だけ聞きます。相手が続けて出した言葉を受けるなら、市川さんは次のように返します。

市川さん「あえて見直すとしたら、どこが気になりますか?」
担当者「急ぎの時の連絡先です。大きな事故はないのですが、誰に電話すればよいか迷う時があります」
市川さん「急ぎの時の連絡先ですね。では今日は、点検項目より先に連絡先の流れを確認します」

この二往復では、新しい立派な質問を足していません。相手の最後の言葉を受け、その言葉の続きを聞いています。

質問に詰まる人ほど、次の質問を外から探します。けれど、次の質問は相手の返事の中にあります。

相手が「まだ決めていません」と言ったなら、「まだ決めていないのですね。決める前に確かめたいのは、金額と対応時間のどちらですか?」と聞けます。相手が「社内で相談します」と言ったなら、「社内で相談するのですね。誰に何を説明しにくいですか?」と聞けます。

この聞き方なら、営業側が相手の発言を加工しすぎずにすむのです。「緊急連絡体制に課題があるのですね」と早くまとめると、営業側の言葉に寄ります。一方で、「急ぎの時の連絡先ですね」と受けると、相手は自分の言葉のまま続きを話せます。

資料説明に逃げる癖

質問に詰まった時、資料説明に入るのは悪意ではありません。黙っているより説明した方が役に立つと思うからです。資料があると、営業側も安心します。読む場所があり、話す順番も決まっています。

しかし、相手の言葉を聞き切る前に資料を開くと、会話の主役が資料に移ります。相手も、自分の考えを続けるより資料を読む側に回るのです。設備点検契約のように、担当者が現場と社内の間で迷っている商談では、この切り替えが早すぎます。

市川さんは、資料を開く前に「資料を見る前に、さっきのお話を一つだけ確認してもよいですか?」と添えるようにしました。この一言で、相手は前の話に戻れます。

あなたも、質問に詰まった瞬間に資料へ手が伸びることはありませんか? その癖があるなら、資料に触れる前に、相手が最後に言った一語をそのまま聞き返しましょう。

資料を読む理由を、相手の言葉から作るのです。

短く引用する練習

最後の言葉を受ける練習では、相手の発言を全部繰り返しません。全部を繰り返すと、会話が重たくなります。短く引用して、次に聞く一点を決めます。

たとえば、担当者が「今の点検会社でも大きな不満はありません。ただ、急ぎの時に現場から誰に電話するのかは少し迷います」と話したとします。市川さんが拾うのは「急ぎの時に現場から誰に電話するのか」です。

市川さん「急ぎの時に現場から誰に電話するのか、ですね。そこは社内で困った場面がありましたか?」

この聞き方なら、相手の言葉を勝手に変えていません。連絡体制、緊急対応、社内共有といった営業側の言葉に置き換える前に、相手の表現を残しています。

市川さんは、この練習をしてから、相手の返事をメモする量が減りました。長く書くより、次に聞く言葉を一つ見つける方が、商談で使いやすいと分かったからです。

メモの取り方も変わりました。以前の市川さんは、点検項目、料金、対応時間といった営業側の見出しでメモを分けていました。今は、相手が口にした言葉を一つだけ丸で囲みます。「誰に電話」「更新月」「現場からの連絡」のような言葉です。商談後に提案を作る時も、その丸で囲んだ言葉から書きはじめるので、提案書の一文が相手の実感に近くなりました。

次の一問を作る順番

質問に詰まった時の順番は、最後の言葉、まだ聞けていない点、次の一問です。三語を表に固定せず、会話の中で順番だけ覚えておきます。

最後の言葉

相手が最後に何と言ったかを見ます。「大きな不満はありません」「社内で相談します」「急いでいません」「価格は分かりました」と並べてみます。どれも、次の質問の材料です。

まだ聞けていない点

最後の言葉を受けたら、まだ聞けていない点を一つだけ探します。大きな不満はないなら、細かい困りごとはどこか。社内で相談するなら、誰に説明するのか。急いでいないなら、いつまでに決めれば困らないのか。どれも、まだ聞けていない点です。

次の一問

最後に、一問だけ聞きます。質問を三つ並べません。一問だけにすると、相手も答えやすくなります。

市川さんは、次の商談でこの順番を使いました。担当者が「すぐ変えるほど急いでいません」と言った時、市川さんは「急いでいないのですね。では、次に見直すならどのタイミングが自然ですか?」と聞きました。担当者は点検更新月の資料を取り出し、そこで次回確認の日程が決まりました。

営業Q&A

相手の返事が短い時も最後の言葉から聞けますか?

相手が一言しか返してくれない場面です。

回答

聞けます。短い返事ほど、その一言をそのまま受けます。「まだです」なら「まだなのですね。決める前に何を確認したいですか?」と聞きます。長い質問を足さず、一語を受ける方が自然です。

同じ言葉を繰り返すと不自然に聞こえませんか?

相手の発言を引用する時の不安です。

回答

全文を繰り返すと不自然です。短く引用すれば、相手の言葉を大切にしていることが伝わります。大事なのは、営業側の言葉に早く置き換えない姿勢です。

明日の商談で置く一拍

営業で質問に詰まった時は、次の質問を外から探さず、相手の最後の言葉を短く受けます。最後の言葉を受け、まだ聞けていない点を一つ見つけ、次の一問にします。質問が止まる場面は、説明を増やす合図というより、相手にもう一度話してもらう合図です。

  • 相手の最後の言葉を短く引用
  • まだ聞けていない点を一つだけ確認
  • 資料説明の前に次の一問

次の商談では、相手の返事を聞いた直後に一拍置き、最後の言葉を一つだけ声に出してください。その一言から質問を作れば、会話は途切れにくくなります。

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営業指導歴22年。1000件以上の顧客との商談経験。1000人以上の営業相談に応じてきた。ある経営者との出会いを機に営業ノウハウを体系化。元ニートの落ちこぼれ営業を最下位グループからたった1か月で全国300人中トップに一発逆転させた。営業経験・実績に基づいた、わかりやすい営業ノウハウ・セミナーでの解説に定評がある。

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