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空調設備の営業では温度ムラより困る時間帯を先に聞く

午後2時に暑い会議室の商談

空調設備の商談では、見積金額や機種の説明より先に、相手が困っている時間帯を聞きます。暑い、寒い、効きが悪い。言葉は同じでも、困っている場面は会社ごとに違うからです。

横山紗季さん(仮名、空調設備会社の営業を担当)は、以前、機種の能力、電気代、工事日程を順に説明していました。相手が「会議室が暑い」と言えば、広さと馬力を聞いて、機種候補を出していました。

ところが、ある商談で担当者は首をかしげました。「午前中は平気です。午後の会議だけ、奥の席が暑いのです」と言いました。横山さんは、温度の不満を聞いたつもりでしたが、過ごす時間帯と座る場所を聞けていませんでした。

空調設備の営業では、温度ムラそのものより、誰がどの時間帯に困るのかを先に聞きます。同じ暑さでも、受付、会議室、倉庫、休憩室では判断材料が違います。

機種の説明を急ぐ前に、困る時間帯を聞くと、見積の理由が相手に伝わりやすくなります。この記事では、空調設備の営業で温度の不満を商談に変える聞き方を解説します。

こんな人におすすめの記事です。

  • 空調設備の見積で、すぐ機種比較に入ってしまう
  • 温度の不満を聞いても、提案理由がぼやけてしまう
  • 工事日程の前に、相手の困りごとを整理しておきたい

これから一つひとつ見ていきましょう。

暑いだけでは見えない判断材料

相手が「暑い」と言った時、営業側は能力不足を考えます。広さ、天井高、日当たり、台数、設置場所。たしかに大事な確認です。ただ、それだけでは相手の判断材料になりません。

暑さで困るのは来客中なのか、社員の昼休みなのか、機械が動く時間なのか。場面によって、見積の意味は変わります。来客中なら印象の問題です。昼休みなら休憩環境の問題です。機械が動く時間なら作業効率や安全にも関わります。

横山さんは、午後の会議だけ暑いという話を聞いた後、会議室の奥の席に案内されました。窓際ではなく、プロジェクターの近くでした。担当者は、資料を映す時だけ奥の席に人が集まり、そこだけ暑くなると説明しました。

後日、横山さんから商談の記録が届きました。私がそこで探したのは機種名ではなく、暑い時間帯と人が集まる席の記録です。「午後2時、会議室奥、来客席」と書いてありました。私は「次の訪問では、その三つを担当者の方と一緒に確認してください」と返信しました。

私はこの三つの言葉を見て、見積の根拠がようやく読めると感じました。単に能力の高い機種を入れる話なら、相手は金額を比べるだけになります。けれど、来客が座る席で午後の会議中に暑いという話なら、相手は「なぜ今この工事が必要か」を社内で説明できます。

別の案件でも、似た場面がありました。店舗の休憩室が寒いという相談でしたが、詳しく聞くと、寒いのは開店前の一時間だけでした。スタッフが着替えと朝礼をする時間に風が当たり、営業中はそれほど困っていません。横山さんはこの話を聞いて、休憩室全体を見る前に、開店前の一時間に人が集まる場所を確認しました。相手はそこで初めて、「朝礼の位置を変えるだけでも違うかもしれません」と自分から使い方の話をはじめました。

温度の不満は、温度計の数字だけでは終わりません。困る時間帯はいつなのか、困る場所はどこか、その場所を使う人は誰か。ここまで聞けると、提案の理由がはっきりします。

過ごす時間帯を聞く理由

空調設備の相談で先に聞きたいのは、温度そのものより過ごす時間帯です。朝は困らないのか、午後だけ困るのか、閉店後の作業で困るのか。時間帯によって、使い方も優先順位も変わります。

横山さんは、担当者にこう聞きました。

横山さん「暑さが一番気になるのは、何時ごろですか?」
担当者「午後2時から4時です。会議が続く時間です」
横山さん「午後2時から4時ですね。その時間は、どの席に人が集まりますか?」
担当者「奥の席です。画面を見るために奥に寄ります」

この会話で、空調設備の話は機種選びから会議中の困りごとに変わりました。横山さんは、馬力の説明をはじめる前に、相手が社内で説明しやすい材料を聞けました。

時間帯を聞くと、工事の急ぎ方も見えます。毎日午後に困るのか、月数回の会議だけなのか。そこで相手が待てる期間は変わります。ここを聞かずに見積を出すと、相手は金額だけを見ます。

座る場所と使う人

次に聞くのは、座る場所と使う人です。空調の不満は、部屋全体の話に見えて、実際には一部の席や一部の人に集中していることがあります。

横山さんの商談では、奥の席に座るのは来客と部長でした。若手社員は手前の席に座り、そこはそれほど暑くありません。

ここまで分かると、提案の言葉が変わります。「会議室の空調を強くします」という説明では、どの席の話か伝わりません。「午後の会議で奥の席に座る方が暑くならないように調整します」と伝えられます。相手も社内に説明しやすくなります。

空調設備の提案では、部屋名より、困っている席と使う人を聞く方が判断材料になります。

横山さんは、これを聞くようになってから、見積提出後の質問が変わりました。担当者は「奥の席の暑さを説明する写真も添えられますか?」と聞くようになりました。担当者の関心が、価格の比較から社内説明の準備へ移ったのです。

見積前の判断分岐

温度の不満を聞いた後は、すぐ一つの提案に決めません。横山さんは、見積前に三つの分岐を見ます。毎日困るのか、特定の時間だけ困るのか、特定の席だけ困るのか。この三つは表で同時に並べず、会話の順番として聞きます。

毎日困るなら、工事の優先順位は上がるのです。特定の時間だけ困るなら、運転方法や日差しの影響も見ます。特定の席だけ困るなら、吹き出しの向きや席の使い方も確認します。

横山さんは、担当者に「工事を急ぎたい理由は、毎日の暑さですか? それとも会議中の暑さですか?」と聞きました。担当者は「会議中です」と答えました。これで、見積の中心は会議中の奥の席に決まります。

この分岐を聞くと、営業側も無理に高い提案に寄せなくなります。相手が本当に困る場面を見て、必要な工事の範囲を決められるからです。

工事日程より先に聞くこと

空調設備の商談では、工事日程も早く聞きたくなります。業者の手配、立ち会い、休業日、騒音。現実的な確認が多いからです。

ただ、困っている時間帯が分かる前に日程を聞くと、相手は工事の都合だけを考えます。まず聞くのは、どの時間帯の暑さを先に変えたいのか。それが決まってから、工事日程を合わせます。

横山さんは、「午後2時から4時の会議が一番困るなら、その時間帯に影響が出ない工事日を一緒に見ましょう」と伝えました。すると、担当者は会議予定表を出しました。これまでなら見積だけを持ち帰っていた担当者が、その場で予定表を開いたのです。

相手が予定表を出したのは、自分の困りごとと日程がつながったからです。

来客の席から聞く会話例

商談で使うなら、次のような流れです。

横山さん「午後の会議で奥の席が暑い、というお話でしたね。その席に座るのは、どなたですか?」
担当者「来客と部長です。若手社員は手前に座ります」
横山さん「来客と部長ですね。では、見積の前に会議予定と、そのお二人が座る位置を確認します」

この流れなら、機種説明に入る前に、相手の困りごとが見えます。営業側は、能力、工事、費用を説明する時も、午後の会議で奥の席が暑いという相手の言葉から話せます。

横山さんは、見積書の冒頭にも「午後の会議で奥の席が暑くなることへの対応」と書きました。担当者は社内確認で、その一文をそのまま使いました。提案書が商品説明だけではなく、社内説明の材料になったのです。

後日、横山さんが再訪した時、担当者は会議室の席順表に赤い印を付けて待っていました。以前なら営業側が図面を出して説明するだけでしたが、この時は相手が先に「この席です」と示しました。困っている時間帯を聞いたことで、相手の中でも問題の場所が具体化したのです。空調設備の営業では、この具体化が次の一歩になります。

ここまで来ると、見積の打ち合わせも短くなるのです。相手は工事の金額を一つずつ確かめる前に、「この席の暑さに関係する工事はどれですか?」と聞けます。横山さんも、全体の機能を順番に説明するより、相手が困る時間帯に効く部分から話せます。説明量を減らしても、納得の材料は増えるのです。

営業Q&A

温度計の数字を先に測った方がよいですか?

客観的な数字を先に出したくなる場面です。

回答

数字は役立ちます。ただ、数字だけでは誰が困っているかは分かりません。先に困る時間帯と席を聞き、その後で温度を測ると、数字の意味が伝わります。

担当者が詳しく分からない時はどう聞きますか?

現場を見ている人と決裁者が違う場面です。

回答

決めつけずに、次回確認する一点を決めます。「午後の会議で奥の席に座る方に、暑さが気になる時間を一つ聞いていただけますか?」と頼むと、担当者も確認しやすくなります。

席と時間から作る見積理由

空調設備の営業では、暑い、寒いという言葉だけで見積に入りません。誰が、どの時間帯に、どの席で困るのかを聞くと、提案の理由が相手に伝わります。機種の違いを話す前に、困る時間帯を一つ聞きましょう。

  • 午後だけ、朝だけなどの困る時間帯
  • 奥の席、受付、倉庫などの困る場所
  • 来客、社員、作業者などの使う人

次の空調設備の相談では、「暑いのは何時ごろ、どの席ですか?」と聞いてください。その答えから、見積の理由を作れます。

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営業指導歴22年。1000件以上の顧客との商談経験。1000人以上の営業相談に応じてきた。ある経営者との出会いを機に営業ノウハウを体系化。元ニートの落ちこぼれ営業を最下位グループからたった1か月で全国300人中トップに一発逆転させた。営業経験・実績に基づいた、わかりやすい営業ノウハウ・セミナーでの解説に定評がある。

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