営業で雑談が苦手なら天気より相手の仕事の流れを聞く
雑談から仕事の流れに入る聞き方
営業で雑談が苦手な方は、商談の入口で言葉に詰まりやすいです。天気、移動時間、最近のニュース、相手の趣味。何を話せばよいか考えるほど、会話がぎこちなくなります。
白石悠介さん(仮名、設備保守サービスの営業を担当)も、雑談が得意ではありませんでした。商談前に「今日は暑いですね」と話しても、その後が続きません。会話が止まったと感じると、白石さんは焦ります。相手が短く返すと、すぐ資料説明に入っていました。
雑談をうまくしようとするほど、白石さんは相手の仕事から離れていました。相手が知りたいのは、営業側が自分の現場を分かってくれるかどうかです。話しやすさは後から付いてきます。
営業で雑談が苦手なら、天気より相手の仕事の流れを聞きます。仕事の流れを聞けば、自然に商談の本題に入れます。
雑談は場を和ませるためだけに使うものではありません。相手がいつ、どこで、何に困るのかを聞く入口にもなります。この記事では、雑談が苦手な営業が使いやすい聞き方を解説します。
こんな人におすすめの記事です。
- 営業で雑談が続かず資料説明に逃げてしまう方
- 天気や趣味の話から商談につなげるのが苦手な方
- 相手の仕事を聞きながら自然に本題へ入りたい方
これから一つひとつ見ていきましょう。
天気の話で止まる入口
天気の話は、悪いわけではありません。ただ、そこから相手の仕事に進めないと、会話はすぐ止まります。営業側は「何か話さなければ」と感じ、相手は「早く本題に入ってほしい」と感じることもあります。
白石さんは、商談の入口で毎回似た話をしていました。「暑いですね」「駅から近いですね」「お忙しいところありがとうございます」。相手は礼儀として返してくれます。けれど、その返事から設備保守の相談にはつながりませんでした。
ある商談で、担当者が時計を気にしていました。白石さんは急いで資料を開きました。後で聞くと、担当者は午前中に点検立会いがあり、午後に報告書を出す予定でした。時計を気にしていたのは、商談への関心が薄いからではなく、その日の仕事の流れが詰まっていたからです。
ここで聞くべきだったのは、天気ではなく、その日の仕事の流れでした。「この後も現場を見に行かれますか?」と聞けば、相手は今の状況を話せます。そこから、設備保守の話にも入りやすくなります。
営業の雑談は、相手の一日や仕事の流れを知る時間です。面白い話を用意しなくて構いません。相手の仕事に関係する一問を先に決めておくと、雑談は商談の準備として使えます。
三つに分ける仕事の流れ
白石さんは、仕事の流れを三つに分けて聞くようにしました。朝の予定、昼の確認、夕方の報告です。この三つの言い方は、記事の最後まで変えません。
| 仕事の流れ | 聞き方 |
|---|---|
| 朝の予定 | 朝はどの確認から入ることが多いですか |
| 昼の確認 | 昼までに必ず見ておく作業はありますか |
| 夕方の報告 | 夕方に誰に報告することが多いですか |
この三つは、雑談のための話題ではありません。相手の仕事を理解するための入口です。朝の予定を聞くと、最初に止まりやすい作業が見えます。昼の確認を聞くと、日中に判断する項目が見えます。夕方の報告を聞くと、社内で説明する相手が見えます。
白石さんは、設備担当者に次のように聞きました。
白石さん「今日はこの後、現場確認が続きますか?」
担当者「午前中に機械室を見て、昼までに異音が出た機械を確認します」
白石さん「昼までに異音の件を確認されるのですね。では、今日の話も、異音が出た時の初動対応に合わせてよいですか?」
担当者「そこからで大丈夫です。先週も同じ機械で止まりました」
白石さん「先週も同じ機械でしたか? 止まった時、最初に連絡したのはどなたですか?」
担当者「現場の主任です。ただ、その日は外に出ていて30分つながりませんでした」
空気が変わったのは、担当者が「先週も同じ機械で止まりました」と言った一言です。そこまでは今日の予定を答えていただけでしたが、この一言から、まだ片付いていない困りごとの話に移りました。雑談から無理に本題へ飛んだのではありません。担当者の仕事の流れを聞いたら、その流れの中に設備保守の相談が入っていたのです。
仕事の流れを聞くと、商談の入口は相手の予定の中に見つかります。
相手の忙しさを責めない聞き方
仕事の流れを聞く時に、相手の忙しさを責める言い方にしないことも大事です。「忙しそうですね」だけでは、相手は「はい」で終わりやすくなります。
白石さんは、「お忙しいですか?」と聞く代わりに、具体的な時間帯を聞きます。「午前中は現場確認が多いですか?」「夕方は報告が重なりますか?」。時間帯を入れると、相手は自分の仕事を思い出しやすくなります。
また、相手が短く答えた時も、すぐ説明に移りません。相手が「午前中は現場です」と言ったら、「午前中の現場で、最初に見る箇所はどこですか?」と続けます。この一問で、朝の予定がもう少し具体的になります。
雑談が苦手な人ほど、相手の仕事に関係する短い質問を一つ用意しておくと気が楽です。
白石さんは、商談前に話題をたくさん用意することをやめました。代わりに、相手の仕事の流れを聞く一問だけを用意しました。相手の業種によって、朝の予定、昼の確認、夕方の報告のどれから聞くかを変えます。
設備担当者なら、朝の予定から聞きやすいです。店舗責任者なら、昼の確認から入ることがあります。経営者なら、夕方の報告や翌日の判断から聞くこともあります。相手の仕事に近い時間帯を選ぶと、雑談は自然に本題へ近づきます。
本題につなげる短い受け方
仕事の流れを聞いた後は、相手の言葉を短く受けます。ここで営業側が説明を足しすぎると、相手は自分の話に戻れなくなります。
担当者が昼までの異音確認について話したら、白石さんはその予定を短く受けます。その後に、「その確認で毎回時間がかかる箇所から見てもよいですか?」と聞きます。
この受け方なら、相手の言葉から離れません。朝の予定、昼の確認、夕方の報告のどれを聞いても、相手の言葉を短く受けて、本題の入口を合わせます。
白石さんは、以前なら「弊社の設備保守は迅速対応が強みです」と話していました。今は、相手が話した仕事の流れを先に使います。相手が昼の確認を話したなら、昼までに必要な初動を話します。相手が夕方の報告を話したなら、報告に使う記録を話します。
本題につなげる時は、次の一文でつなぎます。
「今の〇〇に合わせて、今日の話は△△から見てもよいですか?」
〇〇には相手が話した仕事の流れを入れます。△△には自分の商品やサービスのうち、その流れに関係する部分を入れます。この形なら、雑談が商談から浮きません。
今日から使う入口の一問
雑談が苦手な営業が使いやすい一問があります。
「今日はこの後、どの確認から入ることが多いですか?」
この一問は、相手の仕事に関係しています。天気や趣味の話を無理に広げなくても、相手は自分の予定を話せます。予定の中に困りごとがあれば、自然に本題へ入れます。
同じ担当者との二回目の商談で、白石さんが「今日はこの後、どの確認から入ることが多いですか?」と聞くと、担当者は席に着く前に「今から機械室です。一緒に見ますか?」と答えました。前の商談では白石さんが資料を開いて説明していた相手が、今度は現場まで案内しています。面白い雑談を考えなくてよくなったぶん、白石さんは会話の入口に迷わなくなりました。
話術を鍛えなくても、商談の入口は作れます。営業の雑談は、相手の仕事を知り、今日の商談をどこからはじめるかを合わせる時間です。朝の予定、昼の確認、夕方の報告を聞くと、相手の一日の中に商談の入口が見えてきます。
相手の予定を使った次回の入り方
白石さんは、初回商談だけでなく、次回商談の入口にも相手の予定を使いました。前回、担当者が昼までの異音確認について話していたなら、次回はそこからはじめます。
白石さん「前回、昼までの異音確認について伺いました。今日は、その時に一番時間がかかった確認から聞いてもよいですか?」
この入り方なら、雑談を一から作る必要がありません。前回の仕事の流れを受けて、今回の商談に入れます。相手も、自分が話した予定からはじまるので答えやすくなります。
白石さんは、商談後のメールにも同じ考え方を使いました。「本日はありがとうございました」だけで終えず、「昼の確認で出た異音の件をもとに、次回は初動連絡の順番を確認します」と書きます。相手の仕事の流れが残っていれば、次回の入口も自然に作れます。
雑談が苦手な方ほど、毎回新しい話題を探そうとしがちです。けれど、営業で使いやすいのは、前回相手が話した予定です。朝の予定、昼の確認、夕方の報告のどれかを短く受けて、今回の確認に入ります。
白石さんは、商談前の準備も変えました。相手の会社について調べる時、沿革や商品情報だけでなく、その担当者が一日の中でどんな確認をしていそうかを考えます。設備担当者なら朝の点検、店舗責任者なら昼の売場確認、経営者なら夕方の報告から考えます。
準備で大事なのは、相手の仕事を決めつけないことです。「朝は点検ですよね」と言うと、外れた時に会話が止まります。「朝いちばんに見るのは、どの現場のことが多いですか?」と聞けば、相手が自分の仕事を説明できます。
白石さんがこう聞くようになってから、相手の短い返事も次の質問につなげやすくなりました。「今日は報告だけです」と言われたら、「夕方の報告で一番聞かれやすいことは何ですか?」と続けます。報告の相手が上司なのか、現場なのか、協力会社なのかで、提案の見せ方は変わります。
雑談を広げる力がなくても、相手の仕事の流れを一つ深く聞くことはできます。商談の入口で聞く一問が決まっていれば、沈黙を恐れて資料を急いで開く必要も少なくなります。
営業Q&A
雑談をしないと冷たい印象になりませんか?
会話を和ませたいけれど、雑談が苦手な場面です。
回答
冷たい印象にはなりません。相手の仕事の流れを聞くことも、相手に興味をもつ会話です。無理に私生活の話を広げるより、仕事に関係する一問の方が話しやすい相手もいます。
相手が短くしか答えない時はどうしますか?
質問しても会話が広がらない場面です。
回答
答えを広げようとせず、一つだけ具体化します。「午前中です」と返ってきたら、「午前中に最初に見る作業は何ですか?」と聞きます。短い答えでも、仕事の場面に近づけます。
本題に入るための予定確認
営業で雑談が苦手なら、天気や趣味を広げようとせず、相手の仕事の流れを聞きます。朝の予定、昼の確認、夕方の報告を聞くと、商談の入口を相手の一日の中に作れます。
- 天気の話で止まらない仕事の流れの質問
- 朝の予定、昼の確認、夕方の報告の三つ
- 相手の言葉から本題に入る短い受け方
次の商談では、雑談をうまく話そうとする前に、相手のこの後の仕事を一つ聞いてください。その答えを受けるだけで、本題の入り方は自然になります。
木村 守(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント)
最新記事 by 木村 守(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント) (全て見る)
- 見積の入数と注文数量の違い|受注前に確かめる単位と合計個数 - 2026年10月30日
- 聞こえにくいお客様との商談|筆談と話し方を本人の希望に合わせる - 2026年10月29日
- 通訳が同席する商談での話し方|短く伝えてお客様の返答を待つ - 2026年10月28日

