営業で即答できない時は持ち帰る理由を先に伝える
答えられない質問で信頼を守る返し方
営業の商談では、その場で答えられない質問を受けることがあります。仕様の細かな条件、納期の例外、担当部署の判断、契約書の文言。分からないまま答えると、後で訂正する場面が出てきます。
石田拓也さん(仮名、業務用清掃サービスの商談を担当)は、以前、即答できない質問にも何とか答えようとしていました。相手から「夜間だけ別料金ですか?」と聞かれた時、石田さんは「おそらく大丈夫です」と返しました。
その後、確認すると夜間作業には別の条件がありました。石田さんは急いで訂正しましたが、相手は「最初と話が違いますね」と不安そうに言いました。問題は、分からなかったことそのものではありません。分からないのに、分かったように返したことでした。
営業で即答できない時は、答えを急ぐより、持ち帰る理由を先に伝えます。何を確認し、誰に確認し、いつ返すのか。この三つが見えると、相手は待つ理由を受け取れます。
「確認して返します」だけでは、相手は何を待つのか分かりません。この記事では、即答できない質問を受けた時に、信頼を守りながら持ち帰る方法を解説します。
こんな人におすすめの記事です。
- 商談で細かな質問を受けると焦って答えてしまう方
- 持ち帰り回答をすると相手の熱が下がると感じる方
- 分からない質問を受けても信頼を落とさず進めたい方
これから一つひとつ見ていきましょう。
あいまいな即答が生む不安
即答できない質問に出会うと、営業側は沈黙を避けたくなります。相手を待たせたくないですし、頼りなく見られたくもありません。そう感じるほど、確かめないまま返事をしてしまいます。
しかし、あいまいな即答は相手の判断を助けません。「たぶん大丈夫です」「基本的には対応しています」「多くの場合は問題ありません」と返すと、その場は進んだように見えます。けれど、相手は後で社内に説明する時に困ります。
石田さんの相手も、夜間作業の料金を社内に伝える必要がありました。相手が知りたかったのは、営業側の感覚ではなく、確認済みの条件です。そこをあいまいにすると、相手は「この人に任せてよいのか」と迷います。
即答できない時に見るのは、質問の難しさよりも、相手がその答えを何に使うかという点です。契約判断に使うのか、社内説明に使うのか、現場の日程調整に使うのか。使い道が分かれば、持ち帰る理由も伝えやすくなります。
使い道が違えば、こちらから先に聞く一言も変わります。社内説明に使うなら、「その場で聞かれるのは経理の方ですか、現場の方ですか?」と確かめます。日程調整に使うなら、「何日の作業から逆算していますか?」と聞きます。説明相手が分かれば費用の内訳まで用意できますし、作業日が分かれば返す時間を前倒しできるかどうかも判断できます。
石田さんは、次の商談から返し方を変えました。分からない質問が出たら、すぐ答えを作らず、まずその答えを何に使うのかを聞きます。
石田さん「夜間作業の料金ですね。社内で費用を出すために確認されていますか?」
担当者「はい。夜間しか入れない現場があるので、社内に説明したいです」
石田さん「社内説明に使う条件なら、ここであいまいに答えません。作業責任者と見積担当に確認して、今日の17時までに返します」
この返し方なら、分からないことを隠していません。相手の使い道に合わせて、正確に確認する理由を伝えています。商談では、知っているふりより、確認の質が信頼につながります。
持ち帰る前に分ける三つの確認
石田さんは、即答できない質問を受けた時、確認する内容、確認する相手、返す時間の三つに分けました。この三つは、表でも社内への連絡でも同じ言い方で通します。
| 持ち帰る時に分けること | 相手に伝える言い方 |
|---|---|
| 確認する内容 | 夜間作業の料金条件を確認します |
| 確認する相手 | 作業責任者と見積担当に確認します |
| 返す時間 | 今日の17時までに返します |
この三つがそろうと、「持ち帰ります」がただの先送りに見えにくくなります。確認する内容があるから持ち帰る。確認する相手がいるから時間をもらう。返す時間があるから、相手は待てます。
反対に、三つのうちどれかが抜けると不安が残ります。確認する内容だけを伝えても、誰に聞くのかが分からなければ相手は心配します。確認する相手だけを伝えても、いつ返るのかが見えなければ予定を組めません。
即答できない時の信用は、答えそのものより、確認の進め方で決まります。
石田さんは、持ち帰りの言い方を決めておくことにしました。「確認します」では終わらせず、「夜間作業の料金条件を、作業責任者と見積担当に確認し、今日の17時までに返します」と言います。
この一文は長く見えますが、相手にとっては聞きやすい説明です。何を待てばよいかが分かるからです。相手が社内で聞かれた時も、「料金条件を確認中で、17時に返答があります」と伝えられます。
答えられない時の二往復
石田さんが変えたのは、分からない質問を受けた直後の二往復です。以前は質問に対してすぐ答えを作っていました。今は、質問の使い道を聞き、持ち帰る理由を伝えます。
担当者「会議資料には夜間分も載せますか?」
石田さん「その料金は、来週の会議の資料に入りますか?」
担当者「入ります。金額が変わると社内の承認先も変わります」
石田さん「承認まで進む数字ですね。作業責任者と見積担当に確認したうえで、夜間作業の料金条件を今日の17時までにお返しします」
この会話では、即答していません。それでも、相手を置き去りにしてはいません。質問の使い道を聞き、その使い道に合う確認の仕方を示しています。
「分からない」と言うだけでは不安になりますが、「正確に確認する理由」まで言えば、相手は待ちやすくなります。
石田さんは、社内で確認する時も同じ三つを使いました。確認する内容は夜間作業の料金条件、確認する相手は作業責任者と見積担当、返す時間は今日の17時。この三つを社内にも伝えると、周囲も何を返せばよいか分かります。
持ち帰り回答が遅れる原因は、社内で質問がぼやけることにもあります。「夜間作業について教えてください」では、相手も何を答えればよいか迷います。「夜間作業の料金条件を確認したい」と言えば、返すべき内容が絞れます。
返す時間を守るための伝え方
返す時間は、早ければよいわけではありません。守れる時間を伝えることが大事です。石田さんは、確認先が二人以上いる時、余裕を見て時間を伝えるようにしました。
相手にとって一番困るのは、早い時間を聞いたのに返答が来ないことです。15時と言われて18時になるより、17時と言われて17時に返る方が信頼しやすくなります。
石田さんは、返す時間を言う前に一度だけ社内の確認にかかる時間を考えました。作業責任者が現場にいるのか。見積担当が外出していないか。契約書の確認まで必要か。ここを見てから、相手に返す時間を伝えます。
また、予定より早く分かった時は、早く返します。17時までと言ったから17時まで待つ必要はありません。16時に分かれば、その時点で返す方が親切です。
石田さんは、確認が遅れる時の連絡も決めました。17時までに答えがそろわないと分かったら、16時30分に途中経過を伝えます。「作業責任者の確認は取れました。見積担当の確認だけ17時30分までかかります」と言えば、相手は状況を把握できます。
ここでも、確認する内容、確認する相手、返す時間を崩しません。途中経過でも同じ三つを使うと、相手は何が終わり、何を待っているのかが分かります。
今日から使う持ち帰りの一文
持ち帰ると決めた時は、次の一文をそのまま使います。
「その答えは社内説明に使う条件なので、ここで推測では答えません。〇〇を、□□に確認し、△時までに返します」
〇〇には確認する内容、□□には確認する相手、△時には返す時間を入れます。この形なら、分からないことを隠さず、相手が待てる理由を示せます。
同じ質問を受けた別の商談で、石田さんは17時より前に電話をかけました。担当者は「会議の資料、これで作れます」と言い、そのまま費用の欄を読み上げました。即答しなかったことより、あいまいに答えなかったことが評価されたのです。
営業では、全部をその場で知っている必要はありません。必要なのは、相手の判断に関わる質問を軽く扱わないことです。分からない時ほど、確認する内容、確認する相手、返す時間をはっきり伝えましょう。
持ち帰り後の最初の返答
石田さんは、返答のメールにも同じ三つを入れました。確認する内容、確認する相手、返す時間を守ったうえで、分かった条件を短く書きます。
「夜間作業の料金条件を、作業責任者と見積担当に確認しました。19時以降は夜間単価になります。来週の会議で使うなら、昼間作業との差額も同じ表に入れておきます」
この返答では、最初に約束した確認先を明かしています。相手は、営業側の思いつきではなく、作業責任者と見積担当に確認した答えだと分かります。
石田さんは、返答の最後に次の確認も一つだけ置きました。「会議資料に入れるなら、昼間作業との差額まで出しましょうか?」。相手が社内で使う場面まで考えると、持ち帰り回答は単なる回答で終わりません。
ここで追加提案を急がないようにします。夜間作業の条件を聞かれたら、まず夜間作業の条件に答えます。別の清掃範囲や追加作業まで一気に広げると、相手は質問した答えを見失います。確認した内容に答え、必要なら次の確認を一つだけ添えます。
営業Q&A
分からないと言うと頼りなく見えませんか?
その場で答えられないことを弱みだと感じる場面です。
回答
頼りなく見えるのは、分からないことではなく、確認の進め方が見えない時です。確認する内容、確認する相手、返す時間を伝えれば、相手は安心して待てます。
返す時間までに答えが出ない時はどうしますか?
確認先から返答がそろわない場面です。
回答
約束の時間より前に途中経過を伝えます。どこまで確認でき、何が未確認で、次にいつ返すのかを短く伝えます。連絡がない状態にしないことが大事です。
確認の進め方で守る信頼
営業で即答できない時は、答えを作る前に、持ち帰る理由を伝えます。確認する内容、確認する相手、返す時間をそろえると、相手は何を待つのか分かります。
- 推測で答えない、相手の判断に関わる質問
- 確認する内容、確認する相手、返す時間の三つ
- 遅れる前に伝える途中経過
次の商談で答えられない質問を受けたら、まず質問の使い道を聞いてください。そのうえで三つを伝えれば、持ち帰り回答も信頼を守る会話になります。
木村 守(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント)
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