社労士の営業がうまくいかない一人社長へ|質問だけで顧問契約が決まる3つのコツ
「労務の専門家として価値ある提案をしているはずなのに、なぜか『考えます』で終わってしまう」。これは社労士で開業した一人社長から、いちばん多くいただく相談です。士業はサービスの中身で勝負する仕事ですが、契約は中身だけでは決まりません。
私自身、22年間で1,000人を超える営業相談に乗ってきました。経験から言えるのは、社労士の営業は商品説明をやめて、質問に置き換えた瞬間に契約率が上がるという事実です。
この記事を読んでいただくことで、説明型の営業を卒業して、初回面談で「ぜひ顧問でお願いします」と言われる流れが作れます。最後までご覧ください。
こんな人におすすめの記事です。
- 独立してすぐの社労士で、見込みクライアントへの初回面談がうまく決まらない一人社長
- 就業規則や労務トラブルの相談から、月額顧問契約に発展しないと悩んでいる方
- 「他の社労士と比べて何が違うのですか?」と聞かれて答えに詰まったことがある方
これから一つひとつ見ていきましょう。
社労士の営業がうまくいかない本当の理由
社労士の営業現場でいちばん多い失敗は、専門知識をしゃべりすぎることです。
顧問料が月2万円から5万円という決して安くない金額を提案する以上、社長は「この人に何かを任せる価値があるか」を見極めようとします。そのときに、改正労基法の話、36協定の細かい手続き、助成金の最新動向を一気に説明されると、社長の頭の中はこうなります。「内容はわかった。でも、いま本当に困ってるのはこの話じゃない」。
ある士業の受講生(50代の社会保険労務士)は、まさにこのパターンで苦しんでいました。労務トラブル相談で訪問するたびに、丁寧な制度解説を1時間。社長は「ありがとうございました」と言うだけで、顧問契約までは進まない。専門性は十分に高いのに、なぜ契約に至らないのか、ご本人もずっと悩んでいたのです。
転機は、私が「フォローアップを成果を確かめる対話に再定義しましょう」とお伝えしたときでした。同じ社長との面談で、初回から制度説明を一切やめて、現状の質問だけに切り替えてもらった。1ヶ月後、育児短時間勤務規定を導入したクライアント企業で「うちの会社で長く働けると思えました」と社員さんに泣いて感謝されたという報告が、社長から先生に届いたのです。結果、紹介が2件入り、うち1社は業界団体の幹部企業で、そこから講師依頼が殺到しました。
社労士の営業は、説明力ではなく質問力で決まります。
これから具体的な3つのコツをお伝えします。
社労士が質問だけで顧問契約に至る3つのコツ
コツ1|冒頭で「いまの労務体制はどんな感じですか?」と聞く
初回面談の出だしで、自分の事務所の説明から入っていませんか?
社労士に会いに来る社長は、必ず何かしらの労務不安を抱えています。残業代の請求リスクが頭をよぎっている。社員から有給の質問を受けて答えに詰まった。新しく人を雇うが何から準備すればいいかわからない。それを話したくて来ているのに、こちらが先に「弊事務所の強みは」と語り出すと、社長の本音は出てこなくなるのです。
冒頭の最初のひと言は、こうしてください。「いまの労務体制って、どんな感じでやられてますか?」。これだけです。社長が話し出したら、「たとえば?」「なるほど、それでどうされていますか?」「ということは、いまいちばん気になっているのは何ですか?」とつないでいく。「現状→欲求→課題→解決策」の順で聞くと、社長自身の口から「うちは社労士が必要かもしれない」が出てきます。
会話配分の理想は、社長が8割、こちらが2割。質問は深掘りが命です。「なぜ」「たとえば」「ということは」の3つを使い回せば、専門知識を一切しゃべらなくても面談は1時間もちます。社長があなたの事務所の説明を求めるのは、社長自身の課題が言語化された後です。順番を逆にしないでください。
コツ2|「他社さんとの違い」は説明せずに質問で返す
社労士の面談で必ず出てくる質問があります。「他の社労士さんと比べて、先生は何が違うのですか?」。この質問にどう答えるかで、契約率は大きく変わります。
ありがちな失敗は、ここで自分の経歴・対応スピード・報酬体系を一気に並べてしまうこと。社長が聞きたかったのはスペックではなく、「この人にうちを任せて大丈夫か」という安心感の答えです。スペックをいくら並べても、安心感は伝わりません。
こう返してください。「ありがとうございます。逆にお聞きしてもいいですか? いままで他の社労士さんに相談されたとき、どんなところがちょっと物足りなかったですか?」。こう質問すると、社長は具体的に語り出します。「前は契約してたんだけど、こちらから連絡しないと何も動いてくれなくて」「制度の説明だけで、うちの状況に合わせた提案がなかった」。これが社長の真の欲求です。
社長の答えを聞いてから、それに対して自分がどう応えられるかを後から伝えてください。これが「後出しジャンケン」です。先に手を見せるから負けるのです。相手の手を見てから自分の手を出す。これだけで、同じ説明でも刺さり方がまったく変わります。
コツ3|クロージングは「どうしたいとお思いですか?」で終わらせる
面談の終盤、社労士のほとんどが詰まるのがクロージングです。
顧問契約は月額の継続支払い、しかも長期になります。社長としては大きな決断です。ここで「ご契約いただけますか?」と直球を投げると、ほぼ確実に「考えます」が返ってきます。考えますは断りの婉曲表現で、その後の連絡も途絶えがちです。
クロージングはこう投げてください。「お話を聞かせていただいた中で、本音のところ、御社としてはどういうふうにしていきたいとお思いですか?」。これがテストクロージングです。テストクロージングは契約を迫る技術ではなく、相手の意思を確かめる行為です。社長の口から「やっぱり顧問でお願いしたい」「まずスポットで就業規則だけ見てもらえますか」が出てきたら、こちらは具体的な手続きを進めるだけです。
もし社長がまだ迷っているようであれば、無理に押さない。「今回は情報共有という形にしておきましょうか。御社のタイミングが合ったときに、また呼んでいただければと思います」と引いてください。引ける社労士のほうが、長期的には信頼を得て契約につながります。これが「売らないと決める勇気」です。
契約に至る社労士と至らない社労士はどこが違うのか
初回面談での具体的な行動を、左右に並べてみました。
| 契約に至らない社労士(×) | 顧問契約が決まる社労士(○) |
|---|---|
| 名刺交換のあとすぐに事務所紹介と業務範囲の説明 | 「いまの労務体制はどんな感じですか?」から入る |
| 労基法・社保の制度解説を熱心に話す | 社長の言葉を「たとえば?」「なぜ?」で深掘る |
| 「他の社労士との違い」をスペックで答える | 「過去に物足りなかった点は?」と質問で返す |
| 顧問料表を提示して「ご契約いただけますか?」 | 「本音のところ、どうしたいとお思いですか?」 |
| 断られそうになると報酬の値引きで詰める | 「タイミングではないかもしれませんね」と引ける |
| 契約後は手続き連絡のみ | 導入後の社員さんの変化を社長に質問する |
左の列を見ていてドキッとした方もいるかもしれません。私が見てきた1,000人以上の営業相談者の中で、士業の方の8割は左の列をやっています。専門家として真面目に仕事をしようとするほど、説明型に陥りやすいのです。
社労士の現場のビフォー・アフター
社労士の方の2つの事例を紹介します。
- Aさん(社労士業の一人社長) 「以前は初回面談で就業規則のひな型を持参して、改正点をひととおり説明していました。社長は『ありがとうございます』で終わり。質問だけに切り替えたら、初回で『来月から顧問お願いできますか』と言われたのが3ヶ月で4件続きました。」
- Bさん(社労士業の一人社長) 「労務トラブル相談から顧問へのつなげ方が課題でした。トラブル解決の説明をやめて『どんな労務管理をしていきたいですか?』と聞くようにしたら、相談者の5割がスポット契約から月額顧問へ移行するようになりました。」
Aさん、Bさんに共通しているのは、自分が話す時間を半分以下に減らしたこと。資料の説明をやめて、社長の口から課題が出てくるのを待ったことです。社労士の専門性は、契約後にこそ発揮されます。初回面談で全部を見せる必要はありません。
営業Q&A|社労士の面談で詰まる場面
●質問 顧問料が他事務所より高いと言われたら?
社労士業の一人社長です。1年前に独立して、紹介で初回面談まではいくのですが、最後に「他の事務所さんは月2万円って聞きましたよ」と価格比較で詰まります。
うちは月4万円からの設定で、相談頻度や対応範囲を考えればむしろ妥当だと思っているのですが、その場でうまく答えられず、結局「お力になれず」で終わるパターンが続いています。どう対処すればよいでしょうか。
● 回答
価格で詰まるのは、価格より先に「価値」が伝わっていないからです。コツは3つあります。
- 価格の話が出たら、まず共感する
- 「ちなみに、いま御社で起きていることってどんなことですか?」と聞き返す
- 「タイミングではないかもしれませんね」と引く選択肢を出す
「ご予算のこと、本当に大事なポイントですよね。社員さんの給与もありますし、無駄な支出は避けたいのは当然のお気持ちです」。まずこれです。社長は値切ろうとしているのではなく、自分の判断が間違っていないかを確認したいだけです。共感で防御を解いてください。
価格比較で迷う社長は、自社の労務リスクの大きさを過小評価しています。月2万円の事務所で対応できる範囲と、御社が必要としているサポートの範囲を、社長自身に言語化してもらってください。「労基署の調査が入ったとき」「社員から残業代を請求されたとき」「メンタル不調者が出たとき」。一つひとつ質問すると、月4万円の意味が社長の頭の中で組み立てられていきます。
それでも社長が迷うなら、無理に押さないでください。「今回はタイミングが合わないかもしれませんね。スポットで気になる箇所だけ整えるところから始めましょうか」と引いてみてください。引いた瞬間に「いや、やっぱり顧問でお願いします」が出てくるケースが意外と多いのです。
価格は説得で動かないのです。社長自身が「この事務所の価値はこれだけある」と納得しないと、月額の支払いは続きません。価格交渉は、商品説明の延長線上ではなく、価値を社長の口から言語化してもらう質問の延長線上にあります。
まとめ
社労士の営業で顧問契約が決まらない一人社長へ、質問だけで契約に至る3つのコツを解説しました。いかがでしたか? 説明型から質問へ切り替える方向性のコツがつかめたはずです。
社労士の営業は、専門知識の提示ではなく、社長の現状を引き出す質問で決まります。
- 冒頭で「いまの労務体制はどんな感じですか?」から入る現状質問
- 「他社との違い」は説明せず質問で返す後出しジャンケン
- 「どうしたいとお思いですか?」で終わらせるテストクロージング
焦っているだけではどうにもなりません。
まずは次の初回面談で、事務所紹介を後回しにして、現状質問からはじめましょう。
応援しています。
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