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弁護士の営業がうまくいかない一人社長へ|質問だけで依頼が決まる3つのコツ



初回相談には来てくださるのに、見積を出した瞬間に連絡が途絶える。法律の説明を丁寧にすればするほど、お客様の表情がかたくなっていく。あなたも、面談のあとに「またご連絡します」のまま終わることはありませんか?
独立した弁護士の一人社長にとって、営業はロースクールでも修習でも教わらなかった未知の領域です。実は、面談で説明を頑張る弁護士ほど、依頼が遠のいているのです。
この記事を読んでいただくことで、初回相談から自然に受任につながる質問のコツがつかめるようになります。最後までご覧ください。



こんな人におすすめの記事です。

  • 初回相談からの受任率が伸び悩んでいる弁護士の一人社長
  • 着手金や弁護士費用の話を切り出すと相手が引いてしまう一人社長
  • 説明から抜け出して質問でお客様の心を動かしたい一人社長

これから一つひとつ見ていきましょう。



弁護士の営業がうまくいかない一人社長によくある誤解



私はメーカーで有形商材の営業から、人材紹介や求人媒体など無形商材の営業まで22年間、現場を経験してきました。1,000件以上の商談、1,000人以上の一人社長との対話の中で、士業の方の営業相談も数多く受けてきました。



独立後の弁護士の方からよく聞くのは、こんな悩みです。「相談者は何人も来るのに、依頼につながらない」「法的な見立てを丁寧に説明したのに、その場で決まらない」「他の事務所と比較されて値段で負ける」
これらは別々の悩みのようでいて、原因は一つです。面談で「説明」をしすぎているのです。



法的な解説が、依頼を遠ざける理由



相談者は法律を聞きたくて事務所に来ているのではありません。
相談者が知りたいのは、自分の苦しい状況がいつ終わり、どんな日常が戻ってくるのかです。



離婚問題で来られた方は、養育費の相場ではなく「子どもとどんな暮らしがしたいか」を考えています。労働問題で来られた方は、解雇権濫用法理の解説ではなく「明日からどう生きていけるか」を知りたがっているのです。
法律の解説は商品の特徴説明と同じ。お客様が買っているのはモノではなく、その先の変化なのです。



専門用語を使えば使うほど、信頼が遠のく



「請求の趣旨」「主張立証責任」「保全処分」。これらの言葉を相手に投げると、相手は黙ります。質問できなくなり、頷くしかなくなります。
頷きはしますが、その表情は理解ではなく緊張なのです。
依頼の決断は、緊張した状態では出てきません。依頼は、相談者が自分の言葉で未来を語れたときに動き出すのです。



質問だけで依頼が決まる3つのコツ



ここから、初回法律相談で実証されてきたコツを紹介します。
特別な話術は要りません。質問の型と順番を意識するだけで、面談の空気は変わります。



  1. 法律の説明から入らず、相談者の状況を聞き切る
  2. 面談の冒頭は「ご挨拶にお伺いいたしました」の姿勢で入ります。「私どものことはご存じでございますか?」と一言挟み、相手にも話してもらう余白をつくるのです。法律の見立てを話すのは、現状・気持ち・経緯をすべて聞き終えたあとに回します。

  3. 解決後の生活を質問で描いてもらう
  4. 「この問題が解決したら、どんな日々を過ごしたいですか?」と聞いてください。相談者自身に未来を言葉にしてもらう質問です。法律の話ではなく、生活の話に焦点を絞ります。お客様は感じる→考える→行動するの順でしか動きません。まず「感じる」段階で、解決後の景色を相手の中に立ち上げるのです。

  5. テストクロージングで意思を確認する
  6. 説明を尽くしてから「ご検討ください」と渡すのではなく、面談の途中で「ここまでのお話で、どのように感じられますか?」と聞いてください。「ご自身がいいと思ったら、依頼されますか?」も型です。テストクロージングは契約を迫る技術ではなく、相手の意思確認です。迷いがあるなら無理に進めません。タイミングを待つのです。



なぜこの順番なのか。状況を聞き切って信頼が立ち、未来を描いて気持ちが動き、意思確認で行動が引き出されるからです。
営業は後出しジャンケンです。相手の手をすべて見てから自分の手を出すから負けないのです。



過去・現在・未来の順で聞く理由



初回相談では、過去・現在・未来の順で質問するのです。



  • 過去:「これまで、どのような経緯でここまで来られましたか?」
  • 現在:「いま、いちばん辛いと感じておられるのは何ですか?」
  • 未来:「解決した先で、どんな日々が戻ってきてほしいですか?」



過去を聞くと相手は安心します。現在を聞くと感情が動きます。未来を聞くと行動の準備ができます。この順番を飛ばして法律の話に入ると、依頼の決断は出てこないのです。



初回法律相談のロープレ|質問だけで進める入り方



離婚相談で来られた40代女性のお客様を例に、面談の流れを再現します。



弁護士「ご来所いただきありがとうございます。少しお話を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」
お客様「はい、お願いします」
弁護士「私どものことはご存じでございますか?」
お客様「ご紹介の方から少しお伺いしました」
弁護士「ありがとうございます。今日のご相談ですが、まず、これまでの経緯から教えていただけますか?」
お客様「結婚して10年で、ずっとモラハラがあって……」
弁護士「なるほど、つらい時間を過ごされてきたのですね。具体的には、どんなことがありましたか?」
お客様「(30分間、自分のペースで話す)」
弁護士「お話しいただきありがとうございます。いま、いちばん苦しいと感じておられるのは何ですか?」
お客様「子どもの前で言い合いになるのが、もう本当に嫌で……」
弁護士「お子さんを守りたいというお気持ちが伝わります。もしこの状況が解決したら、どんな日々が戻ってきてほしいですか?」
お客様「子どもと一緒に夕食を笑って食べたいです。あと、子どもの宿題を見てあげる余裕がほしいです」
弁護士「とても大切な日常ですね。それを取り戻すためにご一緒できることを整理してみますね」



ここで初めて、法的な見立てを話します。未来の景色が相手の中で立ち上がっているので、説明はすっと入っていくのです。



受任前の意思確認



見立てを話したあと、即決を迫るのではなく、相手の意思を確かめます。



弁護士「ここまでのお話を聞いて、どのように感じておられますか?」
お客様「やっぱり、子どもの環境は守りたいなと思いました」
弁護士「ご自身がこの方向でいいと思われたら、ご一緒に進めていきますか?」
お客様「はい、お願いしたいです」



もし相手に迷いが残っていたら、こう返します。
弁護士「無理に決めなくて大丈夫です。本音のところ、いまどう感じておられますか?」
迷いの中身を聞き出し、解決できるなら一緒に整理し、解決できないならタイミングを待つのです。
売らない勇気は、士業ほど持ちやすい武器なのです。



受任が伸びない弁護士と伸びる弁護士のちがい



士業の現場で見てきた中で、受任率が伸びない方と伸びる方には明確なちがいがあります。



受任が伸びない弁護士 受任が伸びる弁護士
面談冒頭から法的見立てを話す 過去・現在・未来の順で相手を聞き切る
専門用語で説明する 相手の言葉でそのまま返す
解決後の生活に触れない 「どんな日々が戻ってきてほしいですか?」を聞く
「ご検討ください」で締める 「どのように感じられますか?」と意思確認する
金額の比較で勝とうとする 解決後の景色で選んでもらう
その場で決めさせようと押す 迷いが残るならタイミングを待つ



左の列に当てはまる行動が多いほど、面談は説明型に偏っています。一つでも右の列に動かしてみてください。受任の決まり方が変わるのを実感できるのです。



面談の入り方を変えただけで受任が伸びた事例



2人の弁護士業の一人社長を例に、ビフォーとアフターを見てみましょう。



  • Cさん(弁護士業の一人社長) 「以前は、初回相談でひととおり論点を整理して、見立てを丁寧に話していました。でも『検討します』のまま終わることが多くて。最近は、過去の経緯と『解決した先でどんな生活がしたいか』を聞き切る時間を倍にしました。法律の話はそのあとです。受任のかたちが自然になりました。」
  • Dさん(弁護士業の一人社長) 「相続案件で、ご兄弟が揉めていらっしゃる方の相談でした。法律の話を急がず、まず家族の歴史をお聞きしました。お母様のことを思い出しながら話してくださる中で、ご本人が『母が望んだ家族でいたい』と口にされました。そこから先は、私が説明するまでもなく、依頼の方向にご自身で進まれました。」



Cさん、Dさんのどちらが身近に感じましたか?
ビフォーとアフターのギャップが大きいほど、人は興味と関心をもつものです。あなたの面談も、最初の30分の使い方を変えるだけで受任が変わります。



具体的な数字で見る効果



士業に近い形で成果が出た事例を2つ紹介します。



  • 50代の社会保険労務士:相談を「成果を確かめる対話」と再定義し、3つの視点で質問を準備した結果、紹介2件、うち1社は業界団体の幹部企業で講師依頼が殺到
  • 40代のメンタルトレーナー:感謝された場面の棚卸しから自分の役立ち方を再定義した結果、初回面談からの成約率が13%→32%→54%→76%と段階的に伸びた



どちらの方も、専門知識を増やしたわけではありません。
変えたのは、面談の入り方を「自分の説明」から「相手の状況と未来の質問」に切り替えただけなのです。



営業Q&A



●質問 着手金の話を切り出すのが苦手です

初回相談で見立てを話すまでは進められるのですが、着手金や弁護士費用の話になると、相手の表情が固まります。

こちらも気が引けて、結局「ご検討ください」と紙だけ渡して終わってしまいます。

金額の話を切り出すコツがあれば教えてほしいです。



● 回答

金額の話で空気が固まるお気持ち、よく分かります。

こんなコツがあります。

  1. 未来の景色を確認してから金額を出す
  2. 「どのように感じられますか?」を必ず挟む
  3. 迷いが残るならタイミングを待つ

なぜなら、金額は相手の「未来への投資」が見えていなければ高く感じ、見えていれば妥当に映るからです。順番が逆だと、相手は数字だけで判断する形になるのです。



1つ目で金額の意味が変わります。「子どもとの夕食を取り戻すための投資」と「単なる弁護士費用」は同じ金額でもまったく別物に見えるのです。
2つ目で相手の本音が出ます。固まった表情のままサインさせない型です。
3つ目で売らない勇気を発動します。「いまではないかもしれません」と相手が口にしたら、無理に進めずにタイミングを待つのです。短期の数字より、信頼が残ります。



金額は説得するものではなく、相手が納得する順番で出すものなのです。



●質問 相談者がずっと黙ってしまう時はどうすればいいですか

面談中、相談者が言葉に詰まって黙ってしまうことがあります。

沈黙が気まずくて、つい私から質問を畳みかけてしまいます。

結果として、こちらばかり話してしまい、お客様の本音が出ないまま終わってしまうのです。



● 回答

沈黙の時間に焦ってしまうのですね。

こんなコツがあります。

  1. 沈黙はお客様が考えている時間と捉える
  2. うなずきだけで待つ
  3. 出てきた言葉をそのままなぞる

なぜなら、相談者が黙る瞬間は、いちばん大事なことを言葉にしようとしている時間だからです。こちらから言葉を被せると、その大事なものは消えてしまうのです。



1つ目で焦りが消えます。沈黙はマイナスではなく、むしろプラスの兆しです。
2つ目で相手は安心します。あごを引いてゆっくり頷くだけで「待ってくれている」という空気が伝わるのです。
3つ目で相手の言葉が動きます。「子どもとの時間を取り戻したい」と相手が言ったら「子どもとの時間を取り戻したい、ということですね」とそのまま返します。要約はしないでください。要約した瞬間、相手の感情はリセットされてしまうのです。



繊細な弁護士の方ほど、沈黙を扱う力が育ちます。繊細さは営業の武器なのです。



まとめ

弁護士の営業がうまくいかない一人社長へ、質問だけで依頼が決まるコツを解説しました。いかがでしたか? 初回相談で何を変えればよいか、ツボがつかめたはずです。
明日の相談から取り入れたい行動。

  • 過去・現在・未来の順で相手を聞き切る面談
  • 解決後の生活を相手に語ってもらう質問
  • 「どのように感じられますか?」での意思確認

焦っているだけではどうにもなりません。
まずは次の初回相談から、最初の30分を「聞く」に振ってみましょう。
応援しています。

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営業指導歴22年。1000件以上の顧客との商談経験。1000人以上の営業相談に応じてきた。ある経営者との出会いを機に営業ノウハウを体系化。元ニートの落ちこぼれ営業を最下位グループからたった1か月で全国300人中トップに一発逆転させた。営業経験・実績に基づいた、わかりやすい営業ノウハウ・セミナーでの解説に定評がある。

 
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