職場の人間関係にイライラ。書き出すのは効果的ですか?
●質問
職場の人間関係でイライラします。
私は営業になりたてで、ようやく一人で営業の訪問に出るようになりました。
同期の同僚はすでに営業成績を上げていて、まだ私は一件もあがっていません。
先日その同僚から「昨日訪問した企業は契約取れましたか?」とヘラヘラ笑って言ってきたのでムカつきました。
穏やかに過ごしたいと思っていますが、ついイライラしたりカッとなったりしてしまいます。
手帳やメモ帳に書き出すのがいいと聞いたことがありますが効果的なのでしょうか?
● 回答
イライラした時に書き出すことが効果的かについて知りたいと思われてるのですね。
とても素晴らしい質問だと思います。実はこれ、営業マンにとっては大切なノウハウですがなかなか知られていないようです。私もイライラした時に使っているテクニックがありますので、経験談や失敗談を含めてお話ししたいと思います。
私自身は心穏やかに毎日暮らしていきたいと思っていますが、例えば職場の人間関係で上司から厳しい指摘を受けたり、同僚から余計なことで口を挟まれたりするとイライラすることは多々あります。世間一般の方も、職場の人間関係や営業という仕事上のストレスにさらされて、イライラすることもあるのではないでしょうか?
最近では、オンライン化やテレワークが進んできて自宅=職場になってイライラするということも起こっているようです。
今の働き方に不満を持つ人も3割いた。24%が「もっとテレワークを増やしたい」と考える一方、在宅勤務などで「家事育児の時間が増えて仕事の効率が落ちた」との声も14%あった。
A子さん 「『自宅=職場』となり、オン・オフの切り替えができない。あと少し仕事をしたいという気持ちから、毎日2時間ほど残業してしまう。仕事中に子どもが甘えてくるとイライラしたり、散らかった部屋が気になったり、ジレンマで自己嫌悪になる」
出典:2021/09/27 日本経済新聞 朝刊 29ページ
イライラした時の失敗例
イライラした気持ちで営業に出かける、イライラしたまま職場で仕事をこなす、これが続いてくとこのように失敗することがあります。これは実際に私が経験した失敗談です。
- 商談に集中できない。
せっかく準備をして臨んだ商談にかかわらず、商談以外のイライラで頭がいっぱいになってしまって今一つ集中できなかったことがありました。 - 頼まれていたことを忘れてしまう。
お客様から商談の最後に宿題を預かっていたのですが、商談前にイライラしたことを引きずってしまい、対応が出遅れたことがありました。 - 会議で意見・アイデアを出せない。
上司から厳しく指摘されたことで、上司に対してのイライラが止まらず、議題に集中できないことがありました。 - 仕事が楽しくなくなる。
負のスパイラルに陥ってしまって営業が楽しくないし職場にいても辛いだけ、ということがありました。 - 休みの日もイライラしてしまう。
仕事の時間内でイライラが解消されない時に、休みで家族で公園にピクニックに行った時も頭の中はイライラでぐるぐる回ってしまっていました。
以上は私の体験談ですが少なからず他の人にも当てはまる部分があるのではないでしょうか?
イライラを書き出すことの効果
イライラした時に書き出すことは効果的だと私は思っています。実際に書き出してみて「効果があった」と思ったのは次の通りです。
- 客観視できる。
イライラして思っていることを全て書き出すことによって、自分の気持ちが手帳やメモに文章になってアウトプットできます。第三者の視点で客観的に見つめ直すことができるようになります。「不安は『持ち越し苦労』と『取り越し苦労』の2種類しかない」(大平氏)。持ち越し苦労は意識が過去の経験にとらわれすぎている状態、取り越し苦労は意識が未来の予想にとらわれすぎている状態を指す。それを理解すると、不安を客観的に把握しやすくなるという。
不安を正面から受け止める最短の方法は「いま抱えている不安」を箇条書きで書くことだ。「会社が倒産して無職になるかもしれない」「子供がふさぎこんでいる」など、思い付くことを全て書き出す。その後「対策や今できること」を書き出してみると、不安を客観視でき、対処法も見えてくる。
出典:2021/03/10 日経MJ(流通新聞) 3ページ - 自分を取り戻すきっかけになる。
イライラした気持ちに振り回されると普段の自分の力が発揮できなくなります。書き出すことによって今何が起こっているのかを明確に見える化できるので、自分自身を取り戻すきっかけになります。その日に起きた良いことを夜に3つ書き出す「スリー・グッド・シングス」がこころの健康に役立つと、先週紹介した。書き出す行為は、良いことだけでなく、良くないことが起きたときに気持ちを整理するのにも役に立つ。
良くないことが起きて動揺したときに、その出来事やそのときの気持ち、考えたことを書き出しているうちに気持ちが落ち着いてくる。書くという行為を取ることで、心理的な距離を取って自分自身について、そして自分が置かれた状況について眺めることができるようになるからだ。
良くないことが起きると、自分に自信が無くなってくるし、誰にも助けてもらえないような孤独感が高まる。将来への不安が強くなって、あれこれ良くない可能性を考えるようになる。無意識的に、良くない可能性を改善する手立てを考えようとしているのかもしれない。
しかし、良くないことが起きて悪い想像ばかりしていると、過去に起こった良くないことも思い出されてくる。本来持っている自分の力や、現実に起きている出来事の良い面に目が向かなくなる。その結果、自分を見失ってしまうことになる。
「書く」という行為は自分を取り戻すきっかけになる。何が起きているかを少し冷静になって見ることができるようになる。書き出す行為が持つ力について、私の患者さんが「分身の術のようなものですね」と表現したことがあるが、その通りだ。もう一人の自分をつくり出せれば、良くないことだけでなく、良いことにも目が向くようになる。
(認知行動療法研修開発センター 大野裕)
出典:2021/03/08 日本経済新聞 朝刊 17ページ - 感情の棚卸しができる。
自分の中にある感情を全て棚卸しして吐き出すことで、自分がイライラしている理由や、イライラする対象に対して自分がどうするべきなのか解決策が見えることがあります。次にどんな行動ができるのかが見えてきます。ビジネスで手帳を使いこなすには、どのような点に留意すればよいのか。手帳に関する著作の多い手帳評論家の舘神龍彦さんに聞いた。
「仕事に取りかかる前にノートページにプロジェクトについて必要な情報を書きだし、整理することで全貌を把握することもお勧めだ。いきなり仕事に取りかかると、仕事自体の目的や全体像を見失いがちだ。まず紙に書き出すことで、あやふやなまま仕事に取りかかることがなくなり、ミスを減らせる」
出典:2021/09/28 日本経済新聞 夕刊 2ページ
私の体験談
- かつての同僚のAさんに対してのイライラ
あるとき、私の同僚から「木村さんその話し方は間違いですよ。他の人がこうやってるから、木村さんもこうした方がいいですよ。」と口を挟まれたことがありました。いわゆるマウントを取られるというやつですね。上から目線で私に向かって、指導するような言い方で指摘をされました。私は「参考にさせていただきます」と答えましたが内心はイライラが止まりません。しばらくしてその方は退職してしまいましたので、もう会うこともなく直接言うこともできません。数日経っても私のイライラは収まらず、夜寝る前に枕元にあったメモ帳とペンで、自分の気持ちを殴り書きするように書き出しました。「そんなにきつく言うことないでしょ。ひどい。」「腹が立つ。抑えきれない。」などなど。
すると完全にではないですがだいぶ心がすっきりしてぐっすり眠れたことがありました。
- かつての上司のBさんに対してのイライラ
ある営業会議で、営業メンバー大勢の前で、上司から「先日同行したけど、木村さんの営業はちょっとイマイチだったよな。木村さんは気づかなかったかもしれないけど○○した方がいいよ」と言われました。私は真摯に受け止め「次回から気をつけます。」と言いましたが心の中はムッとしてイライラしてしまいました。次の日になってもイライラは止まらなかったので付箋に書き出すことにしました。「営業同行で気づいたならその直後に言ってほしい。悔しい。」「みんなの前で言わなくてもいいんじゃない。腹立つ。」などなど。やはりこれも書き出すことで私の気持ちがずいぶん楽になりました。
イライラを書き出す始め方
今までイライラを書き出すなんてしてこなかったという人にとってはどうやって始めればいいかと思いますよね。紙とペンさえあればどこでもいつでもできます。どんな出来事か起こったのかという事実を書いて、それに対してあなたがどう思ったのかというのを書いていくと良いでしょう。私の体験談の書き出し方も見ながら参考にしてもらえるといいと思います。
厚生労働省のホームページにこのような記載がありました。詳しく記載されていますのでよければ URL からご覧ください。
まず何が問題なのかをはっきりさせましょう。今ある問題を紙に書き出してみましょう。困った場面では感情に押し流されて問題が見えなくなりがちですが、書き出すことで冷静に整理できますが、書き出すことで冷静に整理できます。次に何個か問題が見つかったら関係するものを矢印でつないでみてください。どの問題が重要なのかわかってくるでしょう。
出典:厚生労働省ホームページ
イライラした気持ちを書き出すことによって整理をする仕事術の本が出版されています。具体的な方法を知りたい方は書籍を読んでみるのも良いでしょう。
周囲と衝突せず、誰も傷つけず、誰にも傷つけられず、怒りも焦りも不安も持たず、心穏やかに過ごしたい。そう願いながらも、些細なことで感情的になるのも、また人間。何が心を乱すのかーーイラついた理由を書き出して可視化する、他人に愚痴って吐き出す、雑事・雑用に没頭する、心を鎮める書や言葉を予め持っておくなど、ネガティブ感情の元凶を繙きながらそのコントロール方法を具体的に提示する。感情整理のノウハウ満載。
出典:イライラしない本 ネガティブ感情の整理法 (幻冬舎新書)齋藤 孝著 amazonホームページ
ちょっと特殊な方法ですが、最近ではこのようなイライラを書き出すノートも売られているようです。
心のもやもやをノートを使って成仏させる、通称「もやちんノート」が紙製品を扱う「菁文堂」(東京・台東、https://seibundo.jp.net/)から発売され、話題となっている。
長引くコロナ禍によって気分が晴れない状況を少しでも解消できればと開発された。イライラ、もやもやした気分を書き込む専用ノートは容器に入れて水を注ぎ、レンジで「チン」すると溶けてしまう。怒りを記録する「アンガーログ」の手法を用い、書きたい放題書いて、最後は悩みもノートも水に流すという仕組み。「ストレスを上手にコントロールする一助になれば」と担当者。
出典:2021/10/25 日経MJ(流通新聞) 14ページ
まとめ
営業マンはチームプレイの部分も多々ありますが個人プレイのシチュエーションも多々あります。孤独感に苛まれたり一人の戦いに苦しくなったりすることもあります。外回りや営業先であなたが経験することは他の誰しもが気持ちを分かち合えることでもないでしょう。相談できる人が常にそばにいてくれるとは限らない現実もあります。
自分で感情をコントロールして自分とうまく付き合っていくのも営業スキルの一つになります。イライラを書き出すノウハウが身につければ、自己管理ができてあなたの最大限の力を発揮することができるようになるでしょう。
ですので、「たかが紙とペンで何が出来るのか」と思わずに、使えるノウハウはどんどん使っていきましょう。
木村まもる(逆転営業アカデミー 売上UPマジシャン)
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