稟議(ringi)とは?顧客が稟議をあげるときの営業の注意点は?
●質問
顧客との営業商談を経て、稟議を生まれてはじめてあげてもらうことになりました。
そもそも稟議というのがどういうものか今一つわかっていません。
また、顧客が稟議をあげるときに営業の注意点がありましたら教えてください。
アドバイスよろしくお願いします。
● 回答
稟議をあげてもらえると言うのは素晴らしいですね。稟議がどのようなものなのか、顧客が稟議をあげる時に営業マンが注意することを知りたいと思っていらっしゃるのですね。
初めての経験ということで、気になるのは当然のことだと思います。
稟議は、契約に向けて最も重要な局面と言えます。また、顧客が稟議をあげるときの営業マンの注意点は顧客企業の現場担当者との商談でしっかり話し合えているかどうかが肝心です。
まず、稟議とは、顧客(企業・団体)に提案した商品について、決裁権を持っている経営層などに、顧客の現場担当者が文書などで決裁・承認を求めることです。
ちなみに決裁とは、決定権を持っている上位者が、部下が提出した文書の可否を決めることです。
稟議の種類は、購買稟議・契約稟議・採用稟議などがあると言われており、主に、備品の購入・外部との契約締結・採用・広告費の利用などがあげられます。あなたの商材にもよりますが、こまかな稟議の種類は気にする必要はありません。
つぎに、稟議の流れについてですが、まず顧客の現場担当者(あなたと最初に商談したお相手)が稟議書を作成します。その後、該当する上位者まで承認されれば決裁が通ったことになります。現場担当者から、チームリーダー、課長、部長、取締役、社長など、どの段階で決裁が完了するかは商品の金額によったり、顧客企業の方針によります。
京セラでは社員に経営意識をより持たせるために、決裁権を現場に近いセグメント長に持たせているそうです。
「社長決裁だった稟議(りんぎ)の8~9割をセグメント長の決裁にする。設備投資も数十億円くらいまでは現場が判断し、事業の強弱をつけやすくする。組織管理ではアメーバ経営を続けるが、今後はアメーバをくっつけたり離したりして、リソースをやり取りする必要がある。セグメント長が自分の部門内で人を回せるようにする」
出典:2021/03/04 日本経済新聞 朝刊 17ページ
また、稟議の流れのなかで、上位者から現場担当者により詳しい説明が求められること(いわゆるツッコミ)は多々あります。このときに現場担当者がばっちりと説明できるように仕込んでおくことは肝心です。
ちなみに、稟議書はいままではハンコ押印の文化が根付いていましたが近年では電子署名の流れに変わりつつあります。
日本経済新聞社の第16回「企業法務・弁護士調査」では、半数を超える企業が脱ハンコに取り組んでいた。
社内文書では稟議(りんぎ)書(40%)がトップで、次いで経費精算(27%)、会議資料(26%)が多かった。
政府は電子署名の有効性などについて行政見解を出し、企業が電子契約を導入することを後押ししている。
出典:2021/02/01 日本経済新聞 朝刊
最近では電子署名の稟議書のシステムで、部下と上司がコメントでやり取りできるものもあるようです。
エイトレッドのシステムは社内の稟議や決裁などの承認の流れを電子化する。申請や承認などの手続きがスマホからできる。
社員が電子化された書類にコメントできる機能があり、承認者が社員の考えを把握できる。
岡本康広社長は「社長にとっては社員の意思がくみ取れるシステムだ」と話す。稟議書に限らず、勤務簿などの社内申請に幅広く利用できる。
出典:2021/10/13 日経産業新聞 4ページ
それでは、「顧客が稟議を上げる時の営業マンの注意点」について具体的な事例をもちいてお話をしていきます。ポイントは、現場担当者と経営層でどちらに決定権の比重がおかれているかについて見極めることです。あなたに当てはまるのはどれか思い浮かべながら読んでいってくださいね。
現場担当者が経営層の顔色を伺いながら稟議を上げる場合。
営業マンのAさんが、とある金融系企業の現場担当者のXさんと商談しました。Xさんは現場担当者として責任職ではあるものの、決定は部長との話し合いで決めるということでした。Aさんが後日、Xさんに電話をしましたが、「いま検討していますので少々お待ちください」とそっけない回答でした。「前向きには考えてくれているだろう」とAさんは一瞬思いましたが、「これではらちが開かない」と感じて、Xさんに「経営層を含めてプレゼンの機会をいただけますか?」と相談しました。後日のプレゼンはXさんと部長含めた4人を相手にして説明ができ、無事稟議を通してもらえることに決定したそうです。
実は、Aさんはこの大事なプレゼンの前に、Xさんの疑問を電話で全て解消していたそうです。そして、プレゼンの場では、部長の感じている課題に着目して提案したのが勝因だったのです。
このように、現場担当者が抱える疑問や質問を解決しておくこと、決定権者の抱えている課題感にフォーカスすることはこのパターンではとっても大切です。また、全体で誰もが納得できるような落としどころを探っていくことも大切になります。
また、大切なプレゼンの場で営業マンが思いもよらなかったことを経営層から聞かれて、あたふたして答えられないというのが最も注意すべきポイントになります。経営層は当然のように金銭面や費用対効果を追求してくることが多々あります。首を突っ込まれて当たり前と思いながら準備しましょう。
このような事例をお話しすると「現場担当者がほぼ決裁権を持っている場合もあるんじゃないの?」と思いますよね。たとえばつぎのような事例があります。
現場担当者がほぼ決裁権を持っていて、稟議を出せば通る場合。
営業マンのBさんが。某鉄鋼系企業の総務部の現場担当者Zさんと商談しました。 Zさんは転職で入社され経験豊富で、経営者に対してズバズバとモノを言えるタイプの現場担当者でした。企業内での職位は高くないものの理路整然と話すため経営者もタジタジといった感じでした。Bさんは商談のなかでZさんの話をじっくり聞いて、人間関係を構築し、課題を明確にしてズバッと提案ができました。ほぼ即決となりZさんが稟議をあげてくれることになりました。Zさんは稟議をあげるにあたって、Bさんは必要な資料や情報を提供しました。稟議の進捗状況を逐一電話で確認して無事決裁をとることができたそうです。
Zさんに勝因を聞くと、「Bさんとの初回の商談のなかでBさんの仕事上のエピソードや取り組みについて深くきくことが出来たのが大きかった。」といいます。「Bさんの社内での立ち位置が手に取るようにわかって、そこからはどうやって稟議を通すか作戦会議をしている感覚でした。」とおっしゃっておられました。
つまり、現場担当者との商談の際にいかに人間関係を構築できているか、課題解決に向けて顧客目線で話し合えているかどうかがポイントだったようです。稟議については流れに乗ってしまえば決裁が取れる状況まで持ち込んだのも素晴らしいと感じました。
注意点は、顧客が必要としている資料や情報をもれなく用意することです。営業マンの代わりに現場担当者が上位者にプレゼンをしてもらうという感覚で準備するとよいでしょう。営業マンが「この商品は素晴らしい」というのと、現場担当者が「この商品は素晴らしい」というのでは説得力に雲泥の差があるからです。
いずれにしても、現場担当者と密接に情報交換ができているかがキーポイントです。そのためにも現場担当者との人間関係をつくって、課題を明確にする商談力を身に着けておくことが稟議をスムーズにとおすポイントになります。
商談力を身につけられている方は、商談現場でがっちりと話し込めているので稟議にのるとすごくラクになるとおっしゃいます。あなたもこれができればスムーズに稟議を通して、グッと成約率が高めることができるようになります。
あなたも商談力を一緒に身に着けませんか?
木村まもる(逆転営業アカデミー 売上UPマジシャン)
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