ご質問ご回答Q&A

工具販売営業は価格より使う作業と替える時期を聞く

使う作業と替える時期から選ぶ工具

「安い方で大丈夫ですか?」。工具販売の商談では、相手が価格表を見ながら迷う場面があります。ドリル、レンチ、脚立、測定器。商品は似ていても、使う作業と替える時期が違えば、選び方は変わります。

梶原隆之さん(仮名、工具販売店で建設現場向けの機種選びを担当)は、以前、価格、耐久性、メーカー名を順に説明していました。型番ごとの違いまで説明すれば、相手は選びやすくなると考えていました。

納品後の確認電話で、設備会社の担当者は別の不安を話しました。「現場で落とすことがあります」「新人が使う日もあります」「今の工具は替え時が分かりません」。梶原さんは、価格を比べる前に、使う作業、使う人、替える時期を聞いていませんでした。

工具販売営業では、価格より先に使う作業、使う人、替える時期を聞きます。同じ工具でも、現場で起きる使い方が違えば説明する順番が変わるからです。

相手が知りたいのは安い工具ではなく、現場で困りにくい選び方です。この記事では、工具販売営業で価格表の前に聞きたい項目を解説します。

この記事で見るのは、価格表を出す前の短い確認です。聞く順番を一つ変えるだけで、相手が話す中身が変わります。

こんな人におすすめの記事です。

  • 工具の商談で価格説明から入ってしまう方
  • 現場で使う人の違いを聞き切れていない方
  • 替える時期まで提案に入れたい方

まずは、価格だけでは選べない理由から見ていきます。

価格だけでは選べない現場の事情

工具は価格の違いが分かりやすい商品です。相手も、まず金額を知りたいと感じます。営業側も、価格を早く出せば親切に見えるでしょう。

しかし、価格だけでは合う工具を選べません。高所で使うのか、狭い場所で使うのか、油で滑りやすい場所で使うのか。慣れた職人が使うのか、新人が使うのか。毎日使うのか、月に数回なのか。ここが違うと、同じ価格帯でも説明するポイントは変わります。

梶原さんは、ある法人相談で安いインパクトドライバーを先に見せました。価格は相手の希望に合っていました。けれど、担当者は「新人が脚立の上で使う日もあります」と言いました。そこで見るべきだったのは、価格だけではありません。使う作業と使う人でした。

工具販売営業で先に見るのは、使う作業、使う人、替える時期です。この三つが分かると、価格の話も現場に合います。どの条件なら使いやすいかを比べられます。

工具の相談を受ける時は、担当者が現場の全員分を説明できるとは限りません。だからこそ、「誰が使いますか?」と聞くだけで終わらせません。「新人さんが使う場面はありますか?」「高所で片手を離せない場面はありますか?」と聞くと、使う作業が見えやすくなります。

三つに分ける工具選び

梶原さんは、工具の相談を使う作業、使う人、替える時期に分けました。この三つの呼び方は、見積書でも納品後の電話でもそろえます。

価格の前に見る条件 先に聞くこと
使う作業 高所、狭い場所、油の多い場所など
使う人 慣れた人だけか、入って間もない人も触るか
替える時期 壊れてからか、事故前に替えるか

使う作業を聞くと、工具の重さや持ち方が見えます。使う人を聞くと、扱いやすさや安全確認が見えます。替える時期を聞くと、今買う理由が見えます。

使う作業、使う人、替える時期を分けると、価格表は現場で選ぶための判断材料になります。

梶原さんは、担当者に次のように聞きました。

梶原さん「今回の工具は、主に高所作業で使いますか?」
担当者「はい。脚立に乗って使うことが多いです」
梶原さん「脚立で使う工具ですね。使う人は慣れた職人さんだけですか?」
担当者「新人も使います。落とすのが心配です」

この会話では、メーカー名を先に比べていません。使う作業と使う人を先に見ています。すると、落下防止、重さ、握りやすさの説明が相手の不安に合います。

売場で見る手元の動き

工具の相談では、相手が口にした条件だけでなく、実際に持った時の手つきも見ます。梶原さんは、担当者が価格札だけを見るのか、実際に握って重さを確かめるのかを観察するようにしました。

担当者が工具を持ち上げて「これ、片手で持つと重いですね」と言った時、梶原さんは価格説明を止めました。相手が確かめようとしていたのは、金額ではなく、その工具を使う作業の中身でした。

梶原さん「片手で持つ重さを見ているのですね。作業中に片手がふさがる場面がありますか?」
担当者「あります。脚立で配線を押さえながら使います」

この返事を聞けたので、梶原さんは説明の順番を入れ替えました。片手で持ちやすい順、落としにくい順、替える時期を決めやすい順に話します。

売場で相手の手が止まったところは、現場で不安に思っている作業とつながっています。

梶原さんは、相手が工具を逆の手で握り直した時に、「作業中の持ち替えも気になりますか?」と聞くようにしました。相手がグリップの滑り止めを親指で押していたら、「手袋をしたまま使う日もありますか?」と聞きます。聞いているのは、相手がその場でしていた動きの理由だけです。質問を増やすより、手が止まった理由を一つ確かめます。

替える時期を聞く一言

工具は壊れてから買い替えることもあります。ただ、現場によっては、壊れる前に替える方が安全な場合もあります。

梶原さんは、価格を聞かれた時も、替える時期を一つ確認します。そこで使う一言があります。

「価格を比べる前に、今回の工具は壊れてから替えるものですか、それとも事故を避けるために早めに替えるものですか?」

この一言を添えると、相手は買う理由を考えやすくなります。壊れてから替えるなら、最低限の性能と納期を見ます。事故を避けるために替えるなら、使う作業と使う人を重く見ます。

梶原さんは、見積に替える時期の一文も添えました。「脚立で新人さんも使う工具なので、落下や持ち替えの不安が出る前に替える候補です」。この一文があると、担当者は社内で説明しやすくなります。

価格表に添える現場の言葉

工具販売の価格表は、数字だけだと比較が安い順になりがちです。梶原さんは、価格表の横に使う作業、使う人、替える時期を短く添えるようにしました。

たとえば、「脚立上で片手使用」「新人も使用」「事故前に早め交換」と書きます。この三つがあると、価格差の理由を説明しやすくなります。

相手が社内で聞かれた時も、「安いから」だけではありません。「脚立で新人も使うため、持ち替えしやすい方を選びました」と答えられます。これなら、工具の選定理由が現場の言葉になります。

梶原さんは、後日の電話の一言目を「脚立上で片手使用の件です」に決めました。担当者はこの一言で、どの現場のどの工具の話かをすぐ思い出します。前の商談から二週間たっていても、「ああ、あの脚立の」と返ってきます。使う作業、使う人、替える時期をそろえておけば、次回の会話を最初からやり直さずに済みます。

現場条件が変わった時の聞き直し

工具の商談では、後から条件が変わることもあります。新人は使わないことになりました。高所作業から床上作業に変わりました。交換の時期も来月にずれています。

梶原さんは、条件が変わった時も三つで聞き直します。「変わったのは使う作業ですか、使う人ですか、替える時期ですか?」と尋ねます。この聞き方なら、再提案の範囲がすぐ見えます。

使う作業が変わったなら、重さや長さを見直します。使う人が変わったなら、扱いやすさを見直します。替える時期が変わったなら、在庫と納期を見直します。三つを分けておけば、全部を説明し直す必要はありません。

この聞き直しをはじめてから、担当者からの電話の入り方が変わりました。以前は「見積をもう一度お願いします」だけでしたが、今は「使う人だけ変わりました。あとは前と同じです」と先に言ってきます。梶原さんが出し直す見積は一枚で済み、条件の変化を三つに分けたぶん、工具選びも前に進みます。

納品後に聞く使い心地

工具販売営業では、納品して終わりにしないことも大事です。梶原さんは、納品後の電話で「問題ありませんか?」とだけ聞いていました。相手は「大丈夫です」と答えます。けれど、その返事だけでは、次の提案に使う材料は残りません。

梶原さんは、納品後も使う作業、使う人、替える時期で聞くようにしました。「脚立で使う作業では持ちやすかったですか?」「新人さんが使った時に困った点はありましたか?」「次に替える時期は同じ頃になりそうですか?」。この三つなら、納品後の確認も現場に沿います。

担当者が「新人でも扱いやすかったです」と答えたら、それは使う人の確認です。次回は、新人が使う工具として別の商品を案内しやすくなります。担当者が「毎日使うので、替える時期を早めたいです」と答えたら、替える時期の相談へ移ります。

納品後の確認で使い心地を聞くと、工具の営業は単発で終わりにくくなります。売った商品の感想を聞くだけではなく、次に困る作業を一緒に見られるからです。

梶原さんは、納品後の確認欄にも三つを書きました。使う作業、使う人、替える時期。この三つが残っていれば、次の相談でも価格表からはじめず、現場の続きから話せます。

営業Q&A

価格を先に聞かれたらすぐ答えますか?

相手が金額を急いでいる場面です。

回答

答えます。ただし、価格だけで終えません。「金額はこちらです。あわせて、使う作業だけ確認してよいですか?」と添えます。価格を隠さず、現場条件も一つ聞きます。

使う人が決まっていない時はどう聞けばよいですか?

担当者が現場の割り振りまで分からない場面です。

回答

決めつけずに幅を聞きます。「慣れた方だけが使いますか? それとも新人さんが使う日もありますか?」と聞けば、使う人の範囲を確認できます。

価格表の前に聞く現場条件

工具販売営業では、価格を説明する前に、使う作業、使う人、替える時期を聞きます。三つが分かると、価格表の並び順よりも、現場で困りにくい一台が先に見えます。

  • 重さや持ち方に関わる使う作業
  • 安全確認に関わる使う人
  • 買う理由をはっきりさせる替える時期

次の相談では、価格表を出す前に「今回いちばん気になるのは、使う作業、使う人、替える時期のどれですか?」と聞いてください。相手が一つ選んだところから話せば、価格表は安い順の一覧ではなく、現場で使う人が選べる一覧に変わります。

The following two tabs change content below.
営業指導歴22年。1000件以上の顧客との商談経験。1000人以上の営業相談に応じてきた。ある経営者との出会いを機に営業ノウハウを体系化。元ニートの落ちこぼれ営業を最下位グループからたった1か月で全国300人中トップに一発逆転させた。営業経験・実績に基づいた、わかりやすい営業ノウハウ・セミナーでの解説に定評がある。

 
営業適正