紹介営業の初回面談は紹介理由を聞いてから提案に入る
紹介先と会う前に守る紹介者の信用
紹介で営業に行く時は、いつもの新規商談より話しやすく感じます。紹介者の名前があるため、相手も最初から少し聞く姿勢をもってくれます。だからこそ、最初の一言を間違えると紹介者の信用まで傷つけます。
紹介先に会うと、営業側はつい自社の説明を急ぎます。「ご紹介いただきまして」と挨拶し、すぐ商品やサービスの話に入る。これでは、紹介者がなぜつないでくれたのかが分からないまま商談が進みます。
紹介後の初回面談で先に聞くのは、紹介理由、相手の期待、紹介者に返す言葉です。紹介営業では、売る前に紹介者の顔を守る会話から入ります。
槙島冬馬さん(仮名、法人向け福利厚生サービスの提案を担当)は、紹介先との面談で成約を急いでいました。紹介者から「話を聞いてあげて」と言われていたため、相手も前向きだと思っていたのです。
この記事では、営業で紹介を受けた後、初回面談の前半で紹介理由、相手の期待、紹介者に返す言葉を聞き、紹介者の信用を守りながら次の商談に進む方法を解説します。紹介後の営業は、紹介者が何を見てつないだのかを最初に確かめます。
こんな人におすすめの記事です。
- 紹介をもらった後、初回面談の入口で何から聞けばよいか迷う方
- 紹介先でサービス説明を急ぎ、その場の返事をもらえない方
- 紹介者へ面談内容をどこまで伝えてよいか決められない方
これから一つひとつ見ていきましょう。
紹介された安心で急いだ説明
槙島さんは、紹介先の総務担当者と初めて会いました。紹介者は、既存顧客の人事部長です。槙島さんは信頼関係があると感じ、面談の最初からサービス説明に入りました。
担当者は笑顔で聞いてくれましたが、途中で「いったん社内で考えます」と言いました。槙島さんは、紹介だからこそ話が早いと思っていたため、少し拍子抜けしました。
あとで紹介者に聞くと、紹介理由は若手社員の面談後フォローでした。紹介先の会社でその作業に時間がかかっていたのを見て、福利厚生サービスを扱う槙島さんならと思い、つないでくれたのです。
この紹介理由を面談の最初に聞いていれば、説明の入口は変わりました。サービス全体ではなく、若手社員の面談後フォローから話せたはずです。
売り込む前に取る二つの許可
槙島さんは、次の紹介面談から、説明に入る前に二つの許可を取ることにしました。一つ目は、紹介理由から話してよいか。二つ目は、面談後に紹介者に返す範囲を最後に確認してよいかです。
この二つの許可があると、営業側だけが紹介者の名前を使って話を進める形になりません。相手も、今日の話がどこから始まり、どこまで紹介者に返るのかを分かったうえで話せます。
槙島さんは、紹介理由、相手の期待、紹介者に返す言葉という順番だけを手帳の一行目に書いておきました。ただし面談中は、三つを表のように並べて見せず、相手の答えを聞きながら、冒頭と最後に分けて確認します。
紹介理由を背景、相手の期待をニーズ、紹介者に返す言葉を報告内容と言い換えすぎると、紹介営業で大事な人のつながりが見えにくくなります。槙島さんは、相手の言葉を短く扱うことにしました。
紹介理由、相手の期待、紹介者に返す言葉を先に聞くと、紹介者の信用を借りっぱなしにしない商談になります。
紹介理由から入った会話
槙島さんは、紹介先との面談で挨拶の後すぐ、紹介理由を聞きました。サービス説明をはじめる前の段階です。
槙島さん「今日は山田部長からご紹介いただきました。山田部長からは、どのような話として聞いておられますか?」
担当者「若手社員の面談後フォローが大変だと話したら、槙島さんに聞いてみたらと言われました」
槙島さん「若手社員の面談後フォローですね。今日はそこから聞かせてください」
この会話では、若手社員の面談後フォローという言葉を変えていません。人材定着、組織課題、制度設計と言い換えると、紹介者がつないでくれた理由から離れます。
槙島さんは、先ほどの会話に続けて相手の期待を聞きました。「今日の30分で、面談後フォローのどこまで分かると助かりますか?」。担当者は「上司に相談する前に、現場で減らせる作業を知りたいです」と答えました。
ここで初めて、槙島さんはサービスの画面を見せました。若手社員の面談後フォローに関係するページだけを開き、担当者が自分で読める時間を取りました。説明を急がないことで、相手は自分の会社の場面に当てはめて考えられます。
紹介者に返す言葉の確認
紹介営業では、面談後に紹介者に何を返すかも大事です。紹介者は、自分の名前を貸したうえでつないでいます。この人なら相手に役立つはずだと考えて紹介してくれています。
槙島さんは、面談の終わりにこう聞きました。「山田部長には、今日どこまで話せたとお伝えすればよいですか?」。担当者は「若手社員の面談後フォローについて、現場の作業を減らせるか確認中と伝えてください」と答えました。
槙島さんは、担当者が言ってよいとした範囲だけを紹介者に返しました。面談で聞いた社内の細かい事情は、了承をもらうまで自分のところで止めておきます。その一手間があるので、担当者は次の面談でも社内の事情を話してくれます。
紹介者に返す言葉を面談中に確認すると、紹介先にも紹介者にも失礼の少ない進め方になります。
この確認を入れると、紹介者に送る報告メールも短くなります。槙島さんは、担当者の了承がある一文だけを書きました。紹介者は進み具合を把握でき、紹介先は話していない内容まで共有される心配がありません。
槙島さんが以前送っていた報告は、サービス説明の内容が中心でした。今は、紹介理由、相手の期待、紹介者に返す言葉の順で書きます。紹介者からは「先方の温度感が分かりやすい」と返事が来るようになりました。
紹介営業の入口ロープレ
紹介面談の入口は、短いロープレで練習できます。見るのは、紹介者の名前を出した後に、すぐ商品説明に入らないことです。
槙島さん「山田部長が心配していた点から確認してもよいですか?」
担当者「若手社員の面談後フォローの件です」
槙島さん「面談の終わりに、山田部長に返す範囲も一緒に確認してよいですか?」
この入口だけで、紹介理由をいつ聞くのか、紹介者に返す言葉をいつ確認するのかが決まります。長い自己紹介を足すより、紹介者がつないだ理由を聞く方が、相手も話しやすくなります。
スクールを営む方が行う無料面談では、商品のどこに興味をもったかを聞いても、表面的な答えしか返ってきませんでした。私はこの方に、商品の話より先に、相手がなぜ今日わざわざ時間を取って来てくれたのかを聞き、その理由を丁寧に掘り下げるよう伝えています。はぐらかすような答えにも優しく問い返せるようになり、相手が自分から本音を話すようになったと教えてくれました。
槙島さんは、以前のロープレでは「弊社のサービスは」と言い出していました。今は、紹介理由を聞く一文を最初に言います。すると、相手役が返してくる言葉も変わりました。
相手役は「聞く内容が分からない」と言わなくなりました。紹介理由から入るため、今日の面談で扱う話が見えます。こちらが画面を開く前に、相手役のほうから「うちなら面談記録の入力を見たいです」と言うようになりました。
期待と違った時の止まり方
紹介理由を聞くと、営業側が準備していた話とずれることもあります。その時に用意した商品説明をそのまま続けてしまうと、紹介者の信用を使って押したように見えます。
槙島さんは、別の紹介先で「今日は料金だけ聞きたいです」と言われました。以前なら料金表を見せていましたが、今回は相手の期待を聞き直しました。「料金を見る時に、面談後フォローのどの作業と比べたいですか?」と聞いたのです。
担当者は「上司が面談記録にかける時間です」と答えました。槙島さんは、料金表を出す前に、その時間がどれくらいかを聞きました。相手の期待が料金でも、紹介理由から離れないようにしたのです。
もし紹介理由と相手の期待が合わなければ、その場で無理に進めません。「今日は料金だけでよいのか、面談後フォローまで見るのか、どちらが助かりますか?」と聞きます。相手に選んでもらえば、紹介者の名前を使って急かす形になりません。
紹介者の信用を守る次回連絡
面談後の連絡でも、紹介理由、相手の期待、紹介者に返す言葉を使います。槙島さんは、次回メールに「若手社員の面談後フォローについて、現場の作業を減らせるかを次回確認します」と書きました。
この一文なら、紹介者がつないだ理由と、担当者が聞きたいことが同じ場所にあります。営業側の都合で追加提案を広げていないため、相手も返事をしやすいです。
紹介者へは、担当者が言った言葉のまま「確認中です」と伝えました。紹介者は「では、こちらからは急かさないでおきます」と言い、紹介先へ別の連絡を入れずに待ってくれました。
紹介営業で一番避けたいのは、紹介者の信用を借りたまま、相手に売り込みだけをすることです。紹介者が何を見てつないだのかを先に聞き、その理由に沿って面談を進めましょう。
槙島さんは、次回日程を決める時にも同じ三語を見直しました。紹介理由は若手社員の面談後フォロー、相手の期待は現場の作業を減らせるか、紹介者に返す言葉は確認中です。この三語が残っていると、二回目の面談でも話が広がりすぎません。
二回目の面談前には、紹介者の名前を改めて使いすぎないことも確認しました。紹介者の信用は入口で借りるものですが、次の判断は紹介先の課題に合わせて進める必要があります。
営業Q&A
紹介された相手にはすぐ提案してよいですか?
紹介者の名前があるだけで、相手も前向きに聞いてくれていると思ってしまいます。話が早いはずだと考えて、こちらから説明を足していきます。
回答
すぐ提案する前に、紹介理由と相手の期待を聞きます。紹介者が何を見てつないだのかを確認してから、必要なページだけを見せましょう。
紹介者にする報告はどこまで伝えてよいですか?
紹介者に失礼なく報告したい一方で、面談内容を話しすぎないか迷う場面です。
回答
面談中に、紹介者に返す言葉を確認します。相手が伝えてよいとした範囲だけを短く返すと、紹介先と紹介者の両方に配慮できます。
面談後に返す言葉まで決める
営業で紹介を受けた後は、紹介理由、相手の期待、紹介者に返す言葉を聞きます。紹介者の名前を入口にするだけで終えず、何を見てつないでくれたのかを最初に確かめます。
- 挨拶の直後に聞く、紹介者がつないだ理由
- 今日の面談で相手が知りたい一点
- 面談の終わりに了承をもらう、紹介者へ返す範囲
次の紹介面談では、「どのような話として聞いておられますか?」と聞いてください。相手の答えを起点にして、紹介者に返す言葉まで確認してから提案に進みましょう。
木村 守(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント)
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