厨房機器営業は入替日の動きを店長と一緒に決める
店を止める日の不安を先にほどく
厨房機器営業で店長が迷うのは、機械を買うかどうかだけではありません。入替日に店を開けられるのか、最初に誰が使うのか、片付けが増えないか。店の一日に直接かかわる不安が残ると、よい機種でも返事は止まります。
カタログには、処理能力や寸法や消費電力が並んでいます。営業側にとっては説明しやすい数字です。ただ、店長の頭の中では、ランチ後に古い機械を外せるのか、夜の営業前に試運転できるのか、閉店後の清掃が増えないかが先に浮かんでいます。
厨房機器営業では、機種説明の前に入替日の動きを店長と一緒に決めます。止める時間、最初に使う人、残る作業を先にそろえると、提案が店の営業日に合います。
藤井彩花さん(仮名、飲食店向け厨房設備の入替提案を担当する営業担当者)は、以前、食洗機の性能表から説明していました。資料は分かりやすく作っていたのに、店長からは「それで当日は回りますか」と聞かれることが続きました。
この記事では、厨房機器営業で入替日の動きを先に決め、店長が営業を止めずに判断できる提案に変える方法を解説します。機械の良さは、店長が当日の動きを想像できてから伝わります。
この記事で扱う相談は、次のような場面です。
- 食洗機や冷蔵庫の入替日に店を開けられるか不安な場面
- 最初に使うスタッフにする説明が店長の負担になる場面
- 見積の前に設置当日の段取りを決めたい場面
店長の一言で止まった商談
藤井さんは、飲食店の店長に新しい食洗機を提案しました。今の機種より洗える量が多く、省エネ性能も高い機種でした。店長も資料は見てくれましたが、表情はあまり動きません。
説明の途中で、店長は入替日の運営を気にしました。藤井さんは、設置会社が対応できると答えました。しかし店長が聞きたかったのは、設置会社の都合ではありません。店のスタッフがその日の夜に使えるかでした。
その商談では、見積を出した後も返事が遅れました。店長は本部に金額を出す前に、現場の料理長に入替日の動きを説明する必要があったのです。藤井さんは、機種の良さより先に当日の動きを決める必要があると気づきました。
ここから藤井さんは、商談の入口を変えました。資料を開く前に、店長と入替日の動きを紙に書きます。機種を選ぶ話は、その紙の空欄が埋まってからにしました。
入替日の三つの空欄
藤井さんが紙に書く空欄は、止める時間、最初に使う人、残る作業です。この三語を決めると、店長は入替日を自分の店の予定として考えられます。
| 入替日の空欄 | 店長と決める内容 |
|---|---|
| 止める時間 | 店の営業を止められる時間帯 |
| 最初に使う人 | 新しい機械を最初に触るスタッフ |
| 残る作業 | 清掃、補充、片付けで残る作業 |
この三語は、後の会話でも同じ言葉で使います。止める時間を工事枠、最初に使う人を教育対象、残る作業を運用負荷と言い換えすぎると、店長がスタッフに伝える言葉から離れてしまいます。
藤井さんは、厨房で店長と立ったまま紙に書きました。止める時間はランチ後30分、最初に使う人は夜の社員、残る作業は閉店後の清掃です。現場で書くと、店長の答えが機械の位置や人の動きと結びつきます。
止める時間、最初に使う人、残る作業を決めると、見積前に入替日の不安を減らせます。
三つの分岐で提案を変える
入替日の空欄が埋まると、提案は三つに分かれます。当日夜から使う提案、翌朝から使う提案、定休日にまとめる提案です。機種の候補は同じでも、店長に見せる順番が変わります。
当日夜から使うなら、最初に見るのは試運転です。翌朝から使うなら、閉店後の設置と朝の確認を分けます。定休日にまとめるなら、スタッフ説明の時間を長めに取れます。
藤井さんは、店長に分岐を選んでもらいました。「当日夜から使う形、翌朝から使う形、定休日にまとめる形なら、店としていちばん無理が少ないのはどれですか」。店長は「当日夜から使いたいです」と答えました。
ここで初めて、藤井さんは食洗機の候補を二つに絞りました。どちらも処理能力は足ります。違いは、設置後の試運転にかかる時間と、夜の社員が覚える操作の少なさでした。
店長と歩いて確認する
厨房機器は、店長だけが使うものではありません。ランチのアルバイト、夜の社員、閉店後に片付けるスタッフ。それぞれが違うタイミングで機械に触れます。
藤井さんは、店長と一緒に食器の動きを歩いて確認しました。使用済みの食器を置く場所、洗浄後の食器を戻す場所、排水まわりを拭く位置です。資料だけでは、この動きは見えません。
店長は、夜の社員が洗浄後の食器を戻す場所で一度立ち止まりました。藤井さんは、その場で「最初に使う人は夜の社員ですね」と確認しました。店長は「そこを間違えると夜が詰まります」と答えました。
店長と歩いて確認すると、機械の機能ではなく、スタッフが詰まりやすい動きが見えます。その動きに合わせて説明する方が、導入後の不安を減らせます。
ロープレで一枚にする練習
厨房機器営業のロープレでは、商品説明を長くする練習より、入替日の紙を一枚で作る練習をします。見る項目は、止める時間、最初に使う人、残る作業だけです。
藤井さん「止める時間はランチ後30分ですね」
店長役「はい。夜は開けたいです」
藤井さん「最初に使う人は夜の社員でよいですか」
店長役「そうです。清掃だけ増えないか心配です」
このロープレでは、店長役の言葉を短く紙に書きます。夜は開けたい、夜の社員、清掃だけ増えないか。この三つが残れば、後で機種を説明する時に話がぶれません。
藤井さんは、紙の下に「当日夜から使う形」と書きました。これで、見積書を渡す時にも店長が本部に説明しやすくなります。機械の名前だけが残る見積より、入替日の判断が伝わります。
見積書に入れる当日の動き
見積書には、機種名と金額だけでなく、当日の動きを短く入れます。長い工程表は不要です。店長が本部や料理長に見せる時に、入替日の判断が伝わる量で十分です。
藤井さんは、備考欄に三行だけ書きました。止める時間はランチ後30分。最初に使う人は夜の社員。残る作業は閉店後の清掃確認。この三行なら、見積書だけが先に回っても、店長の不安が抜け落ちません。
店長から「本部にはどう説明すればよいですか」と聞かれた時も、藤井さんは機能一覧に戻りませんでした。「当日夜から使うために、試運転と夜の社員にする説明を見積に入れています」と返しました。
この一文があると、本部の確認も金額だけになりにくくなります。厨房機器営業では、機械そのものの説明より、店を開けるための段取りを先に見せることが、店長の判断を助けます。
設置会社に渡す前の確認
入替日の紙は、店長に見せるだけではありません。設置会社に渡す前にも使います。営業側が勝手に工程を組むと、店長が守りたい時間と設置側の作業順がずれることがあります。
藤井さんは、設置会社に連絡する前に店長に確認しました。「この紙では、夜の社員が最初に使えることを優先しています。設置会社には、この順番で相談してよいですか」。店長は「それでお願いします」と答えました。
この確認があると、設置会社との打ち合わせも短くなります。単に早く設置したいのではなく、当日夜から使うために試運転と説明を先に見たい。目的がはっきりしているため、作業順の相談がしやすくなります。
藤井さんは、設置会社から返ってきた案も三語で見直しました。止める時間は30分で収まるか。最初に使う人にする説明は夜営業前に組み込まれているか。残る作業は閉店後の清掃確認で済むか。この確認をしてから、店長に最終案を見せました。
店長は「これなら料理長に話せます」と言いました。厨房機器営業では、契約前の提案と設置日の相談が切れると不安が戻ります。入替日の紙を最後まで使うと、営業、店長、設置会社の見ている順番がそろいます。
また、設置後の初回連絡でも三語を使います。藤井さんは翌日に「夜の社員は使えましたか」「閉店後の清掃は増えすぎていませんか」と聞きました。売った後の確認まで入替日の紙に沿えば、次の相談にもつながります。
この聞き方なら、追加の不具合確認も責める形になりません。店長は、導入日の約束が守られたかを答えればよいからです。
次に別の機械を相談された時も、この紙は役に立ちます。店長は、前回と同じように当日の動きから話せるため、営業側も余計な性能説明から始めずに済みます。
営業Q&A
厨房機器営業では見積前に何を決めますか?
機種候補を出す前に、店長の不安を減らしたい場面です。
回答
止める時間、最初に使う人、残る作業を決めます。この三語がそろうと、機種説明を入替日の動きに合わせて話せます。
店長が当日の運営を心配している時はどうしますか?
性能表を見せても、返事が進まない場面です。
回答
店長と現場を歩き、スタッフが最初に詰まりそうな動きを確認します。そのうえで、当日夜から使う形、翌朝から使う形、定休日にまとめる形のどれが店に合うかを選んでもらいましょう。
当日の動きを一枚に残す
厨房機器営業では、機種説明の前に入替日の動きを店長と一緒に決めます。止める時間、最初に使う人、残る作業がそろうと、店長は自分の店で使えるかを判断しやすくなります。
次の商談では、資料を開く前に入替日の紙を一枚作ってください。止める時間、最初に使う人、残る作業を書き、機種説明をその三語に合わせましょう。
木村 守(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント)
最新記事 by 木村 守(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント) (全て見る)
- 営業の振り返りはうまく話せた点より返事の変化を見る - 2026年9月16日
- レンタカー営業は料金より使う日と返却時間を聞く - 2026年9月16日
- 営業プレゼンは資料を開く前に変えたい作業を聞く - 2026年9月16日

