展示会で来場者に何を聞く? 実演と後日の連絡を決める会話例
ブースでの短い会話から決める案内の範囲
展示会で名刺を交換した来場者に、後日連絡しても話が進まない。会場では製品を熱心に見ていたのに、訪問を申し込むと「まだ情報収集なので」と断られる。こうした時は、ブースで相手が何を確かめたかったのかを振り返ってみましょう。製品を見ていたことと、購入の相談をしたいことは同じではありません。
出展担当者は限られた時間で製品を紹介したいでしょう。ただ、来場者にも、会場全体を見たい、実物を試したい、具体的な困りごとを相談したいという違いがあります。相手の来場目的に合わせて、その場で案内する内容と会期後の連絡を決めましょう。この記事では、すでにブースへ立ち寄り会話をしている来場者への質問を扱います。通路の人を呼び止める方法や、名刺の枚数を増やす方法ではありません。
産業交流展の公式の出展者向け支援情報でも、名刺交換が商談に結びつかない悩みを取り上げ、来場者の状況と検討段階を尋ねる方法を紹介しています。初対面から予算や決裁権だけを直接聞くことには注意を促しています。ここでは、その考え方を短いブース対応に使える会話例で説明します。
立ち寄った理由を尋ねる最初のやり取り
来場者が実演を見て「これは何に使うのですか?」と尋ねたら、まず質問に短く答えます。質問を返すために、相手が知りたい答えを後回しにしないようにしましょう。たとえばラベルプリンターなら、どんなラベルを作る機器なのかを伝えてから、何を見に来たのかを聞きます。
中村正樹さん(仮名、物流現場向けラベルプリンターの営業担当者)の架空の対応例を見てみましょう。以下の会話は、来場者の目的によって案内を変えるための練習例です。実際の成約事例ではありません。
中村さん「荷物に貼る送り状や、棚の商品ラベルを印刷する機器です。今日はどんな使い方を確かめにいらっしゃいましたか?」
来場者「倉庫で使えるものを探しています。今日は種類を見るくらいですが。」
この返事なら、会場で購入時期まで詰めるより、比較する時に見る点を案内できます。相手が見たいのは、ラベルの大きさなのか、使うパソコンとの接続なのか。答えを聞いてから、該当する展示へ案内します。中村さんは、会社紹介や全機種の特徴を続けて話すのをやめました。
「見ているだけです」と言われた時も、困りごとを答えさせようと質問を重ねないでください。「ご自由にご覧ください。試したい操作があればお声がけください」と伝えて、見学を続けてもらいます。相手が話したくない時に引くことも、逆転営業のお役立ちです。
一方、「今の印刷作業に時間がかかっていて」と話しはじめた来場者には、作業のどこで困るかを聞けるでしょう。相手が使った言葉を受け止めてから、具体的な場面へ進みます。「効率化したいのですね」と営業側の言葉でまとめるだけでは、機器の速さと貼付作業の遅れを取り違えかねません。
情報収集と現物確認と具体的な相談の違い
来場目的は、営業側で勝手にランク付けするために聞くものではありません。いま相手が知りたいことに答えるために確かめます。同じ「興味があります」という返事でも、その先に求めている案内は違うのです。情報収集、現物確認、具体的な相談は順番に進む段階ではなく、重なることもあります。次の表は、その時の返事に合う案内を考えるための例です。
| 来場者がしたいこと | その場で確かめる内容 | 案内の終え方 |
|---|---|---|
| 情報収集 | 探している製品の種類と比較したい点 | 該当する資料や展示を案内し、連絡の希望を尋ねる |
| 現物確認 | 実機で見たい操作や仕上がり | 試した結果と、実環境でまだ確かめたい点を分ける |
| 具体的な相談 | 使用条件と、導入前に解消したい問題 | 後日確認する内容と連絡方法を決める |
情報収集の段階なら、提案書を作るための細かい条件を一度に聞かなくても構いません。相手が比較する製品の範囲を知り、手元の資料でどこを見ればよいかを示します。展示品が用途に合わなければ、その違いも伝えましょう。名刺をもらうために、自社で対応できない用途まで曖昧に受けないようにします。
現物確認が目的なら、機能一覧の説明より、見たい操作を選んでもらいます。ラベルを印刷したいのか、用紙交換を試したいのか、文字の読みやすさを見たいのか。会場で見られる範囲を伝え、持参した素材を使えるかは担当者に確認してください。展示機での結果を、そのまま相手の現場での性能と約束してはいけません。
具体的な相談では、来場者の説明から現在の運用を聞き、まだ答えられない点を確認します。ここで営業側が急いで購入時期や予算だけを聞くと、製品が使えるかという相手の疑問を置き去りにしやすいでしょう。まず導入を検討する理由が分かれば、必要な条件も話の中で確かめやすくなります。
実演を見せる前に選ぶ確認箇所
中村さんのブースに、別の来場者が立ち寄ったと想定します。倉庫で荷物のラベルを貼る作業を担当していて、印刷後に文字を読み直すことがあると話しました。中村さんは機種の速さを説明する前に、読み直すのはどんな時かを尋ねます。
中村さん「読み直すのは、印刷した直後ですか? それとも荷物に貼った後ですか?」
来場者「貼った後です。小さい荷物だと、端の文字が曲がって読みにくくなります。」
中村さん「貼った後の文字を確かめたいのですね。ここでは印刷見本と貼付後の見え方をご覧いただけます。どちらから見ましょうか?」
この練習例では、印刷速度の比較だけでは相手の疑問に答えられません。見るべき箇所が分かったので、印刷したラベルを平らな状態と荷物に貼った状態で確認する案内を選べます。実演では、来場者が確かめたい操作や仕上がりを先に決めておきます。本人が見て納得した点と、営業側が説明しただけの点を混ぜないようにしましょう。
また、曲面での見え方は、ラベルの寸法や素材、荷物の形によっても違うでしょう。展示見本で読めたからといって、どの荷物でも問題ないとは言い切れません。実物を持ち込む必要があるなら、その確認を会期後に行うかを相談します。未確認の条件に気づけたことも、次の商談で話す理由になります。
このロープレでは、デモ担当へ案内する場面も練習できます。別のスタッフに引き継ぐなら、来場者の目の前で、相手が確かめたい点と会場では答えられない点を伝えます。スタッフが替わるたびに会社紹介からやり直したり、同じ困りごとを聞き直したりしないためです。来場者にも認識が合っているかを確かめてから、担当を交代しましょう。
使う場面を聞いてから実演内容を選ぶ進め方は、商品の実演でお客様に確かめてもらう方法も参考にしてください。展示会では、誰にでも同じ説明をするより、限られた時間で何を確認するかを来場者と選ぶ点が大切です。
名刺交換の前後に合意する連絡内容
会話が進んだら、後日何を送るかを先に話します。「資料を送るので名刺をください」だけでは、どんな資料なのか、訪問まで求められるのかを相手が判断しにくいでしょう。情報収集の来場者に送る製品一覧と、具体的な相談への回答は分けて考えます。
展示機では確かめられなかったラベルの寸法について、社内に問い合わせると決めた場面を練習します。来場者は、まだ機種の選定まで進めるつもりはないと話しています。
中村さん「ご希望の寸法で印刷できるか、社内に確認して回答をお送りしたいのですが、メールで受け取られますか?」
来場者「お願いします。ただ、まずは回答だけで大丈夫です。」
中村さん「承知しました。寸法についての回答をお送りします。送付先は名刺のメールアドレスでよろしいですか?」
この返事なら、打ち合わせまで約束したとは扱いません。来場者が詳しい相談も希望していれば、その時に日程と参加する人を尋ねるでしょう。連絡先を受け取る前に用件を示し、相手が希望する範囲を確かめる練習です。
答えがその場で出ない時は、誰に確認し、いつまでに連絡できるかを調べてから約束しましょう。準備ができていないのに「明日には必ず分かります」と返すと、社内確認が間に合わなくなった時に相手を待たせます。会場で判断できない条件を、曖昧な返事で埋めないようにします。
「資料だけでよい」と希望された場合は、送る範囲を守ります。反対に、現物を使った確認を望まれたら、必要なサンプルや同席者について話を進められるでしょう。名刺交換をした事実だけで、訪問や長い説明にも同意されたと判断しないでください。相手が欲しい回答に合わせて、次の連絡方法を相談します。
お礼の文章を書く段階で迷うなら、商談後のお礼メールで次の確認を伝える方法を参照してください。会場で目的を聞き取れていないのに、メールの言い回しだけで取り返そうとしないようにしましょう。
営業Q&A
会場が混んでいて十分に話せない時はどうしますか?
回答
聞き取りを急いで終えるより、会場で答える内容を絞りましょう。話したいことが多ければ、別の時間に戻れるか、後日に詳しく話すことを希望するかを相談します。来場者が急いでいるなら、その場で長い質問を続けません。連絡先だけを受け取って後日詳しく聞く方法も、相手がその連絡を希望した時に選んでください。
話している人が購入担当者でなかったらどうしますか?
回答
実際に使う人なら、作業の困りごとや実機で見た結果を聞けるでしょう。購入を決める権限がないという理由だけで話を終えず、本人が持ち帰って確かめたい内容に答えます。そのうえで、社内のどなたと確認する予定かを尋ねてみてください。紹介や同席を求める時は、本人が取り次げるかを確認し、担当者の連絡先を無理に聞き出さないようにします。
出展前に練習する案内の切り替え
会期前のロープレでは、来場者役に目的を変えてもらうと、いつもの説明を続けてしまう場面に気づけます。商品を買うつもりの人ばかりを相手にする練習にしないでください。情報収集だけの人にも、現物を試したい人にも、答えを急がず案内を選べるかを確かめます。
次の出展準備では、来場者役の返事を聞いてから案内を変える練習をしましょう。同僚には、聞きたいことに答えてもらえたか、希望していない次の連絡を勧められなかったかを教えてもらってください。
木村 守(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント)
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