防災備蓄営業は数量より保管場所と配る相手を確認する
取りに行けない場所にある備蓄品
防災備蓄の商談では、数量や保存年数だけで話を進めると、相手の社内説明が止まりやすくなります。何人分を用意するかは大事ですが、実際には、どこに置き、誰が配り、いつ入れ替えるかで困りごとが変わるからです。
岡田拓真さん(仮名、防災備蓄の営業を担当)は、以前、水、非常食、簡易トイレ、毛布の数量表を順番に説明していました。相手が「人数分は要ります」と言えば、人数に合わせたセットを見せていました。
けれど、ある管理部門の商談で、担当者は資料を閉じました。「数は分かります。問題は、置き場所と配る担当が決まっていない点です」。岡田さんは、数量不足を聞いたつもりで、保管場所と配る相手を聞けていませんでした。
防災備蓄の営業では、数量表に入る前に、保管場所と配る相手を確認します。備える数だけでなく、災害時に取り出せる形が提案の理由になるからです。
こんな人におすすめの記事です。
- 備蓄品の数量説明だけで商談が止まりやすい方
- 総務や管理部門に社内説明しやすい理由を作りたい方
- 見積前に保管場所と配布担当を聞きたい方
防災備蓄の提案は、まず社内で取り出せる場所を見ます。この記事では、防災備蓄営業で確認する順番を解説します。
これから一つひとつ見ていきましょう。
人数分という言葉の中身
相手が「人数分は要ります」と言った時、営業側は数量を考えます。社員数、来客数、在庫日数、拠点数。どれも欠かせない確認です。
ただ、人数分という言葉には、数の問題だけでなく配れる形の問題が入っている場面があります。水は足りるけれど、倉庫の奥から出せない。非常食はあるけれど、フロアごとの担当が決まっていない。入替時期を誰も覚えていない。こうした困りごとは、数量表だけでは見えません。
岡田さんの商談でも、担当者が困っていた中心は備蓄品の数だけにありませんでした。地下倉庫にまとめて置くと、停電時に取り出しにくく、各フロアに配る担当も決まっていないことでした。
岡田さんは、この商談のメモを持って相談に来ました。「数量表の作り方を直したいのですが」と相談を受けます。私は数量表を開かず、メモに出てくる場所と人の名前を数えました。
メモには、地下倉庫、三階、管理部、入替確認という言葉がありました。この四つがあると、見積の理由が見えます。人数分の数量に加えて、必要な場所に分けて置く考え方が必要だと分かるのです。
担当者の動きも変わりました。以前なら「全社員分で」とだけ言っていましたが、次の打ち合わせでは、フロア図を持ってきて「三階だけ取りに行く人がいません」と説明しました。相手が自社の置き方を言葉にしはじめたことが、商談が前に進んだ合図でした。
岡田さんも、そこで提案の順番を変えました。セット内容を比べる前に、どこから取り出すかを聞くところからはじめたのです。担当者はフロア図のコピーに丸を付け、管理部と各フロアの置き場所を分けて示しました。数量だけを聞いていた時には出なかった動きです。
その後、担当者は役員に説明する時、各フロアで取り出せる配置の話を前面に出しました。言葉が変わると、役員も金額だけでなく災害時の動きを見られます。
保管場所を聞く一問
防災備蓄の商談で先に聞きたいのは、次の一問です。
岡田さん「災害時に最初に取り出す場所は、どこにする予定ですか?」
担当者「まだ決めていません。今は地下倉庫にまとめる想定です」
岡田さん「地下倉庫ですね。では、数量に加えて、各フロアで最初に配る場所も見てから選びましょう」
この聞き方なら、数量の話を否定していません。数量を選ぶ前に、取り出す場所を確認しています。
備蓄品の数は表で比べられます。けれど、取り出す場所は社内の動きを聞かなければ分かりません。
相手が「人数分」と言ったら、急いでセット数に進まず、取り出す場所を聞きます。本社の倉庫、各フロア、受付横、会議室の棚。場所が変われば、分け方も変わります。
この一問は、相手を細かく問い詰めるためではありません。災害時に社内で動ける形を営業側が知るためです。相手が「地下倉庫です」と答えたら、次は誰が鍵を持つのか、停電時に行けるのか、各フロアにどう配るのかを一つずつ見ます。相手の社内の動きに沿って、質問を足していくのです。
配る相手から見える不安
次に聞くのは配る相手です。社員数に対して何個置くかだけでなく、配る人が迷わないかを見ます。
岡田さんは以前、数量と保存年数だけを確認していました。何日分を置くか、どのセットにするか、期限を何年にするかを順番に聞いていたのです。もちろん大事です。ただ、営業の場面では、誰が配るかまで聞きます。
担当者は、災害時に管理部だけで全フロアを回ることを心配していました。岡田さんがその話を聞いた時、担当者はフロア図に付箋を貼り、「ここは総務が遠いです」と示しました。
配る相手は、人数表に加えて、実際に手渡す担当者として聞きます。
岡田さんは、備蓄数を確認した後、あえて「災害時に各フロアで最初に配る人は決まっていますか?」と切り出しました。担当者はすぐに答えられず、各部署の管理担当に確認しました。そこで、三階だけ配る担当者が決まっていないことが分かりました。
この確認があると、同じ数量でも提案が変わります。箱を分け、表示ラベルを付け、入替確認表と配布担当者の一覧まで見られるからです。岡田さんはその場でセット数を決めず、次回までにフロア別の分け方を二案にして持ってくることにしました。
この現場確認を入れてから、担当者は備蓄品を買う話だけでなく、災害時に動ける状態を社内で説明できるようになりました。
価格説明に入る前の確認
防災備蓄は金額差が出やすい商品です。食品の種類、水の量、保存年数、配送費、入替サービス。営業側は早く価格理由を説明したくなります。
しかし、保管場所と配る相手を聞かないまま価格説明に入ると、相手は高いか安いかだけで比べます。取り出せる場所、配る担当、入替確認が見えていないからです。
岡田さんは、価格を出す前に一文を入れるようにしました。「金額の前に、どこに置いて誰が最初に配るかだけ確認してもよいですか?」。この一文で、価格の話が社内の備え方とつながります。
担当者はその後、各部署の管理担当に確認しました。「災害時に最初に配れる人はいますか?」と聞くと、三階の担当者が「鍵の場所が分かりません」と答えました。岡田さんは、その言葉を次回の見積理由に使いました。
見積書の表題は「三日分の防災備蓄セット」でした。岡田さんはこれを「各フロアで取り出しやすい分散保管」に直しました。担当者は、その一文を役員に説明する時に使いました。
役員の反応も変わりました。最初は「全員分でいくらになりますか?」と尋ねていましたが、担当者が三階の鍵の話をすると、「それなら置き場所も決めよう」と答えました。価格の話から、社内で配れる形の話に進んだのです。
次回までに確認する一点
初回商談で全部を決める必要はありません。数量、賞味期限、配送、入替、保管棚をすべて聞こうとすると、相手も疲れます。
まずは、保管場所と配る相手を聞き、次回までに確認する一点を決めます。たとえば、三階で最初に配る人。地下倉庫の鍵を持つ人。入替時期を確認する人。
岡田さんは、次回までの確認を「三階で最初に配る人」に絞りました。担当者は各部署に聞き、次回の商談で「三階の管理担当が配れます」と答えました。そこで提案する箱の分け方が変わりました。
この変化は、営業側の説明量では出ません。相手が社内で確かめたから出た答えです。防災備蓄の営業では、この一つの確認が見積の質を変えます。
岡田さんは、その後の見積にも確認した担当者を書きました。三階の管理担当が最初に配る、という一文です。商品名の前にその一文があると、担当者は見積を見ながら社内の動きを思い出せます。
岡田さんは、次回商談の最後に、もう一つだけ確認しました。「入替時期を最初に見るのはどなたですか?」。担当者は、管理部の備品担当者の名前を出しました。これで、納品後の確認相手まで決まりました。
見積前に保管場所を聞き、配る相手を見て、入替を確かめる人を決める。この流れにすると、防災備蓄の提案は購入品の話から、社内で取り出せる備えの話に変わります。
営業Q&A
数量を先に聞かないと見積できませんか?
必要数を早く聞きたい場面です。
回答
数量も確認します。ただ、先に保管場所と配る相手を聞くと、数量に理由が付きます。数字だけを聞くより、相手が社内で説明しやすくなります。
担当者が忙しくて詳しく聞けない時はどうしますか?
総務や管理部門で時間が取れない場面です。
回答
その場で全部聞こうとしません。「次回までに、三階で最初に配る人だけ見ていただけますか?」と一点に絞ります。相手も確認しやすくなります。
見積前に決める置き方と担当者
防災備蓄の営業では、数量や価格に入る前に、保管場所と配る相手を聞きます。どこに置き、誰が最初に配るのかが分かると、見積の理由が相手に伝わります。備蓄の提案は、数量表だけでなく社内の取り出し方から作るのです。
- 最初に取り出す保管場所
- 各フロアで配る担当者
- 次回までに確認する一人
次の防災備蓄の相談では、「どこに置き、誰が最初に配りますか?」と聞いてください。その答えが、数量と価格を説明する土台になります。
木村 守(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント)
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