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営業の自己紹介は実績を並べる前に相手の現状を聞く

名乗る前に相手が知りたいこと

初回面談の冒頭で、相手から「まず自己紹介をお願いします」と言われると、実績やサービス内容をきれいに話したくなります。準備してきた経歴を伝えれば安心してもらえる。そう考えて、長く話してしまう方は少なくありません。

けれど、相手が知りたいのは、こちらの経歴そのものとは限りません。自分の困りごとに合う人か。今日の30分でどこまで相談できるのか。先にそこが見えないと、実績を聞いても判断しにくいのです。

三浦圭吾さん(仮名、法人向け研修プログラムを提案する営業担当者)は、初回面談の最初に3分ほど自己紹介をしていました。会社の沿革、支援実績、研修メニューを順に話します。相手はうなずきますが、質問は増えませんでした。

営業の自己紹介では、実績を並べる前に相手が今日知りたいことを聞きます。その一問があると、自己紹介は自分の説明ではなく、相手が判断するための材料に変わります。

この記事では、営業の初回面談で自己紹介が長くなりやすい時に、相手の現状、今日知りたいこと、相談後の判断を先に聞く進め方を解説します。自己紹介の役割は、自分を大きく見せることではなく、相手が話しやすくなる入口を作ることです。

特に、次のような場面で役立ちます。

  • 初回面談で自己紹介を長く話してしまう場面
  • 実績を話しても相手から質問が出ない場面
  • 何を聞かれたいのか分からないまま説明をはじめる場面

実績紹介で止まる冒頭

三浦さんは、初回面談の冒頭で丁寧に話していました。名刺を出し、会社の説明をし、過去の支援例を並べます。話し方は落ち着いていましたが、相手の表情は途中から資料に向きました。

相手は失礼な態度を取っていたわけではありません。聞く姿勢はあります。ただ、自分の相談とどこが関係するのかを探していたのです。三浦さんの説明は正確でしたが、相手の現状に結びつく前に長くなっていました。

自己紹介が長くなると、営業側は安心します。話す内容を準備できるからです。一方で、相手はまだ自分の話をしていません。どの実績が役に立つかを選べないまま、営業側の説明を聞く時間が続きます。

三浦さんは、面談後に振り返りました。相手が資料を見はじめたのは、研修実績のページを開いた時です。そこで必要だったのは、さらに別の実績を足すことではありません。相手が何を判断したいのかを聞くことでした。

自己紹介前に聞く三語

自己紹介前に聞く三語は、現状、今日知りたいこと、相談後の判断です。この三語を先に聞くと、自己紹介で話す範囲を相手に合わせられます。

先に聞く三語 相手に聞く内容
現状 いま何に困って面談の時間を取ったのか
今日知りたいこと この場で確認できると助かる点は何か
相談後の判断 面談後に誰が何を決めるのか

この三語は、後の本文でも同じ言葉で扱います。現状を背景、今日知りたいことを課題、相談後の判断を決裁条件と言い換えすぎると、相手が話した言葉から離れます。

三浦さんは、自己紹介の前に「最初に一つだけ確認してもよいですか。今日の面談では、現状、今日知りたいこと、相談後の判断のどこを一番知りたいですか」と聞く形に変えました。

現状、今日知りたいこと、相談後の判断を聞いてから名乗ると、自己紹介の長さを相手の関心に合わせられます。

短く名乗ってから聞く会話

三浦さんは、次の商談で冒頭の流れを変えました。自己紹介をはじめる前に、相手が今日知りたいことを聞きました。

三浦さん「本日はよろしくお願いします。先に、今日知りたいことを一つだけ聞かせてください」
担当者「若手が現場で続けられる研修かを知りたいです」
三浦さん「若手が現場で続けられる研修ですね。では、その判断に関係する部分だけ先にお話しします」

この会話では、若手が現場で続けられる研修という相手の言葉を変えていません。定着支援、教育設計、人材育成施策と広げる前に、相手の言葉をそのまま扱います。

三浦さんは、会社説明を短くしました。話したのは、現場で続けるために毎週どのように振り返るか、担当者がどこで参加者の反応を見るかだけです。相手は「そこを聞きたかったです」と言いました。

長い自己紹介が出る三つの癖

自己紹介が長くなる人には、よくある癖があります。相手に安心してもらうために全部話す癖、沈黙が怖くて経歴を足す癖、聞かれていない実績まで先に出す癖です。

長くなる癖 直す一言
全部話す 今日知りたいことに関係する部分だけ話す
経歴を足す 相手の現状を聞いてから補う
実績を先に出す 相談後の判断に使う実績だけ選ぶ

この表で決めた対応は、本番でも同じ対応で使います。全部話していると気づいたら、今日知りたいことに関係する部分だけ話します。経歴を足しそうになったら、相手の現状を聞いてから補います。

三浦さんの場合は、経歴を足す癖が強く出ていました。相手が黙ると、別の支援実績を話して間を埋めます。そこで、沈黙が出たら「先に現状を聞かせてください。いま一番困っているのはどの場面ですか」と聞くようにしました。

自己紹介は、沈黙を埋めるための話ではありません。相手が自分の相談をはじめやすくするための短い案内です。

現場で見える聞き逃し

私は初回面談の同席で、相手が名刺を見ながら困りごとの資料を握ったままになる場面を何度も見ました。営業側は名刺交換の流れで自分の紹介をはじめますが、相手の手元にはすでに聞きたい資料があります。

ここで気づける人は、自己紹介を短く切れます。「その資料の件から聞いた方がよさそうですね」と言えば、相手は自分の相談から話せます。気づけない人は、準備した自己紹介を最後まで話してから本題に入ります。

三浦さんも、担当者が研修計画表を持っていることに途中で気づきました。以前なら最後まで会社説明をしていました。今は、「その計画表で今日知りたいことはどこですか」と聞きます。

相手は「現場リーダーが続けられるかです」と答えました。三浦さんは、その答えを現状、今日知りたいこと、相談後の判断に分けました。現状は若手研修が続かないこと、今日知りたいことは現場リーダーの負担、相談後の判断は来月の実施可否です。

自己紹介を30秒にする練習

自己紹介を短くするには、話す内容を削るだけでは足りません。相手が聞きたいことに合わせて、話す順番を変える練習をします。

三浦さんは、30秒で名乗る練習をしました。会社名、担当領域、今日できる支援の範囲だけです。その後に、相手の現状、今日知りたいこと、相談後の判断を聞きます。

三浦さん「研修後の現場定着を担当しています。今日は、現状、今日知りたいこと、相談後の判断のどこから聞くと話しやすいですか」
相手役「相談後の判断です」
三浦さん「相談後の判断ですね。面談後に、誰が実施可否を決めますか」

この練習では、うまく話すことを目標にしません。長く話しはじめる前に、一度相手に話を渡せるかを見ます。30秒で止まれると、相手の時間を奪いにくくなります。

最初は短くしすぎて、三浦さん自身が不安になりました。そこで、話さない情報を捨てるのではなく、相手の答えが出てから出す情報として横に置くことにしました。

相談後の判断に合わせる実績

自己紹介で実績を出すなら、相談後の判断に合わせます。相手が上司に説明するなら、上司が気にする期間や担当範囲を含む実績を一つだけ選びます。担当者本人が今日決めるなら、その場ではじめやすい小さな支援例を出します。

三浦さんは、以前なら大きな会社の事例から話していました。今は、相手の相談後の判断を聞いてから出す実績を変えます。上司に話す相手には「同じように現場リーダーの負担を見た例があります」と短く伝えました。

ここで大事なのは、実績を見せびらかさないことです。相手が今日知りたいことに関係しない実績は、どれだけ立派でも長く聞こえます。反対に、相手の現状にぴったり合う一例なら、30秒でも十分に伝わります。

面談の最後にも、三浦さんは同じ三語を使いました。「今日の現状は若手研修が続かないこと、今日知りたいことは現場リーダーの負担、相談後の判断は来月の実施可否でした」と確認しました。担当者は、自分が上司に話す内容をその場で言葉にできました。

この確認を入れると、自己紹介からはじまった面談でも、最後は相手の判断に戻れます。三浦さんは、次回メールにも現状、今日知りたいこと、相談後の判断を同じ順で書きました。担当者からは「上司に説明しやすいです」と返事がありました。

営業Q&A

自己紹介では実績を先に話した方がよいですか?

初回面談で信頼してもらいたくなり、過去の支援実績から話したくなる場面です。

回答

先に少しだけ名乗り、相手が今日知りたいことを聞きます。実績は、現状、今日知りたいこと、相談後の判断に関係するものだけを後から出す方が伝わります。

相手が自己紹介を求めた時も質問してよいですか?

自己紹介を頼まれた以上、質問を挟むと失礼に見えないか迷う場面です。

回答

質問して構いません。「関係するところから話したいので」と添えて、今日知りたいことを一つ聞きます。その答えに合わせて自己紹介を短くすれば、相手も聞きやすくなります。

相手の相談からはじまる名乗り方

営業の自己紹介では、実績を並べる前に現状、今日知りたいこと、相談後の判断を聞きます。相手が何を判断したいのかが分かると、自己紹介で話す内容を選べます。

次の初回面談では、30秒だけ名乗ってから「今日知りたいことは何ですか」と聞いてください。相手の答えに関係する実績だけを出し、相談の時間を相手の現状からはじめましょう。

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営業指導歴22年。1000件以上の顧客との商談経験。1000人以上の営業相談に応じてきた。ある経営者との出会いを機に営業ノウハウを体系化。元ニートの落ちこぼれ営業を最下位グループからたった1か月で全国300人中トップに一発逆転させた。営業経験・実績に基づいた、わかりやすい営業ノウハウ・セミナーでの解説に定評がある。

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