営業で他社比較を出されたら判断基準を先に聞く
他社比較で先に見る判断基準
営業で相手から「他社とも比べています」と言われると、すぐ自社の強みを話したくなります。機能、価格、実績、サポート。説明できる材料はありますが、相手が何を比べているのかを聞かないまま話すと、会話は営業側の都合に寄ります。
北村大地さん(仮名、法人向け予約管理システムを担当する営業担当者)は、競合名が出るたびに機能差を並べていました。画面の見やすさ、登録できる人数、通知方法を順番に説明し、相手の不安を減らそうとしていたのです。
けれど、相手が見ていたのは機能一覧ではありませんでした。担当者は比較表の導入後の作業欄を何度も見ていました。北村さんに必要だったのは、他社に勝つ説明より、相手がどの基準で止まっているかを聞く一言でした。
営業で他社比較を出された時は、強みを話す前に「導入後に増やしたくない作業」を一つ聞きます。その答えが出ると、比較表のどこを見ればよいかが決まります。
この記事では、他社比較の場面で自社説明を増やす前に、一つの質問で相手の判断基準を見つける進め方を解説します。競合名そのものより、相手が導入後に避けたい作業を見ることが大事です。
機能差だけを話した商談
他社の名前が出ると、営業側は自社が優れている点を探します。料金が安い。操作が簡単。導入実績がある。どれも説明としては使えますが、相手の比較軸と合っていなければ、話すほど相手は選びにくくなります。
北村さんも、担当者が「他社も見ています」と言った瞬間に、画面共有で機能表を開きました。予約枠の設定、顧客登録、リマインド通知を説明し、他社より広く対応できると伝えました。
担当者はうなずきましたが、何度も戻って見ていたのは導入後の作業欄でした。現場のスタッフが新しい画面を覚えられるか、予約変更の電話が減るか、店長が確認する時間が増えないか。そこが判断材料だったのです。
この時に機能差を増やしても、相手の迷いは動きません。導入後に増やしたくない作業が見えないままでは、説明も比較表の中で散らばります。
比較表を閉じて一問に戻す
他社比較では、いきなり表の上から順に説明しません。まず比較表をいったん閉じて、導入後に増やしたくない作業を聞きます。この一問で、相手が見ている場所が画面、価格、社内説明のどこなのかが分かります。
聞く内容を一つに絞ると、営業側も落ち着きます。競合の機能差を全部説明する必要はありません。相手が避けたい作業に関係する部分だけを開けばよいからです。
北村さんの場合、答えは予約変更の電話でした。店長が操作を確認し、本部に上げる前に、電話対応が増えないかを見ていたのです。
ここまで見えると、自社説明の順番も変わります。最初に話すのは機能数ではなく、店長が一日の終わりに見る画面と、電話予約を変更する時の流れです。
他社比較で先に聞くのは、どちらが上かではなく、相手が避けたい作業です。
導入後の作業を聞いた会話
北村さんは次の商談で、競合名が出てもすぐ機能表を開きませんでした。担当者が導入後の作業欄を見ていたため、そこから聞きました。
北村さん「他社と比べる時に、導入後に増やしたくない作業は何ですか」
担当者「予約変更の電話です」
北村さん「予約変更の電話ですね。では、その流れだけ先に画面で見ましょう」
この会話では、相手の言葉を変えていません。予約変更の電話と出たなら、後段でも予約変更の電話です。問い合わせ対応、顧客連絡、運用負荷と言い換えすぎると、担当者が確かめたい一点がぼやけます。
北村さんは、予約変更の電話が入った時に店長がどの画面を見るかを先に示しました。続けて、スタッフが入力する欄、確認メールが送られるタイミング、本部に報告する画面を順番に見せました。
機能の数を並べた時よりも、担当者の質問は具体的になりました。「この欄なら店長が見られそうです」「本部報告は週末で間に合います」と、相手の職場の動きが会話に出てきたからです。
自社の強みを後から置く順番
自社の強みは、話してはいけないものではありません。問題は順番です。相手の判断基準を聞く前に強みを並べると、相手はどれを使って比べればよいか分かりにくくなります。
北村さんは、導入後の作業を聞いた後で初めて自社の強みを出しました。予約変更の電話が中心なら、説明する強みは通知機能、履歴画面、スタッフ権限の三つで足ります。
価格の話になった時も、すぐ値引きに入りませんでした。「価格を見る時に、月額と初期設定の手間のどちらが気になりますか」と聞きます。価格という言葉を受けながら、相手が避けたい負担を一つに絞るのです。
この聞き方なら、相手は自分の判断を言葉にしやすくなります。営業側も、強みを全部話さずに済みます。
強みは、相手が避けたい作業に合わせて後から置く方が伝わります。
ロープレで直す競合反応
競合名に反応して説明を増やす癖は、ロープレで直せます。練習するのは、相手が他社名を出した直後の一文です。
北村さんは、相手役に「A社も見ています」と言ってもらいました。その後、機能差を話す前に、一問だけ聞く練習をしました。
北村さん「A社も見ているのですね。導入後にどの作業が増えると困りますか」
相手役「電話対応が増えることです」
北村さん「電話対応ですね。では、店長が毎日触る画面から見ます」
ロープレで見るのは、競合に勝つ言い方ではありません。競合名を聞いた時に、自分の説明に走らず、相手の判断基準を聞けるかどうかです。
練習後、北村さんは商談記録の書き方も変えました。「他社比較あり」だけで終わらせず、「導入後に増やしたくない作業は予約変更の電話」と書きます。次回の説明がそのまま決まります。
この練習をすると、競合名を聞いた瞬間の肩の力も抜けます。北村さんは、以前ならA社の弱点を探していました。今は「相手は何と何を比べたいのか」を先に見るため、声の調子も落ち着きました。
相手役から「価格も気になります」と返された時も、北村さんはすぐ値引きに入りませんでした。月額と初期設定の手間のどちらが気になるかを聞き、価格という言葉を受けつつ、見る場所を一つに絞ったのです。
ロープレ後の振り返りでは、北村さんが話した強みを数えました。最初の練習では七つ話していましたが、最後は三つに減りました。話す量が減ったのに、相手役の質問は増えました。聞く順番が変わると、説明を削っても会話は細くなりません。
社内説明に使える比較
相手が社内で説明する時、営業側の強み一覧をそのまま使うとは限りません。社内で必要なのは、比較表の中でどこを見ればよいかが一目で分かることです。
北村さんは、提案書の冒頭に「予約変更の電話を増やさないための導入比較」と書きました。次に、店長の確認、本部報告、スタッフ入力の順で説明しました。
この並びなら、担当者は社内で話しやすくなります。価格だけの比較表ではなく、職場で起きる作業を基準に説明できるからです。
他社比較を出されたら、すぐ自社の優位点を並べず、導入後に増やしたくない作業を聞いてください。その答えが出ると、強みは相手が使いやすい説明に変わります。
担当者が社内で話す時には、競合名そのものよりも「予約変更の電話を増やさないために比べました」と言える方が伝わります。上司は、どちらが有名かより、現場の手間がどう変わるかを見たいからです。
北村さんは、提案書の末尾にも同じ言葉を残しました。「導入後に増やしたくない作業は、予約変更の電話です」。この一文があると、担当者は会議で説明を組み立てやすくなります。
ここまで見てから強みを話すと、自社の説明も押しつけに見えにくくなります。通知機能、履歴画面、スタッフ権限は、相手が避けたい作業を支える材料として読まれるからです。
会議前の確認でも、北村さんは比較表を送り直すだけにしませんでした。「店長確認の画面だけ先に見ればよいです」と添え、担当者が社内で最初に出す資料を一枚に絞りました。比べる材料を減らすことで、上司も判断する場所を見つけやすくなります。
商談後のメールでも同じです。添付資料を三つ送るより、「予約変更の電話が増えない流れだけ、二枚目にまとめました」と書く方が読まれます。競合比較を広げず、相手が気にしていた作業に戻すことが、次回の話を進めます。
比較表を見せる時も、北村さんは色を付ける箇所を一つにしました。店長が確認する画面、スタッフが入力する欄、本部に送る報告画面のうち、予約変更の電話に関係する欄だけを順番に見せます。相手は表を全部読まなくても、判断する場所を追えるようになります。
営業Q&A
競合名を出されたらすぐ違いを説明すべきですか?
他社に負けたくなくて、機能や価格差を急いで話したくなる場面です。
回答
すぐ違いを並べる前に、導入後に増やしたくない作業を聞きます。相手の答えが分かると、話すべき画面や条件を絞れます。
相手が価格だけで比べている時はどう聞けばよいですか?
値引きの話になりそうで、先に守る線を作りたい場面です。
回答
価格の中で見ている場所を一段だけ具体化します。「月額ですか、初期設定の手間ですか」と聞くと、値引きの前に相手が避けたい負担が見えます。
強みを三つに絞る
営業で他社比較を出された時は、導入後に増やしたくない作業を一つ聞きます。競合名だけに反応せず、相手の判断基準を見れば、自社の強みも必要な分だけ話せます。
次の商談では、他社名を聞いたら一呼吸置き、導入後に増やしたくない作業を聞いてください。相手の言葉を一つ受けてから、説明する強みを選びましょう。
木村 守(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント)
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