酒屋営業は納品前に売場の欠品時対応を聞く
本数より先に見る売場の困りごと
この記事は、次のような酒屋営業の場面に役立ちます。
- 飲食店に酒類を提案しても価格比較で止まりやすい方
- 欠品や納品日の不安をうまく聞けていない方
- 代替商品を売り込みに見せず案内したい方
飲食店に酒類を提案する時、つい銘柄、価格、納品本数の話から入りたくなります。どの商品を何本入れるかが商談の中心に見えるからです。
黒田美咲さん(仮名、地域の飲食店に酒類を届ける酒屋営業の担当者)は、居酒屋の店長から「週末だけハイボール用の在庫が読みにくいです」と聞きました。
黒田さんは以前なら、人気銘柄の在庫数と価格をすぐ説明していました。けれど、店長が困っていたのは銘柄選びだけではありません。週末に欠品した時、スタッフが何を代わりに出せばよいか決まっていなかったのです。
酒屋営業では、納品前に売場の欠品時対応を聞きます。 本数を増やす提案だけでは、店長の週末不安は減りません。
この記事では、酒屋営業で飲食店に提案する時に、納品本数より先に売場の困りごとを聞く進め方を解説します。欠品時対応まで聞くと、価格だけでは見えない判断材料が出てきます。
納品本数だけで進む商談
酒屋営業の商談では、数量の話が前に出ます。今週は何本、来週は何ケース、月末はどれくらい。数字が見えるため、営業側も話しやすいです。
しかし、店長の困りごとは数字だけで完結しません。週末のピーク時に足りない、スタッフが代替を迷う、常連のお客様に説明しにくい。こうした売場の場面が後ろにあります。
黒田さんは、店長が週末のハイボール用在庫を読みにくいと話した場面を、商談の入口にしました。
ここで「在庫管理の問題ですね」とまとめると、店長の実感が薄れます。店長は管理表を作りたいのではなく、週末に売場が止まらないようにしたいのです。
納品本数だけを見ると、答えは多めに入れることに寄ります。けれど、多めに入れれば保管場所、期限、現金負担の問題も出ます。だからこそ、欠品した時の売場対応を先に聞きます。
飲食店の冷蔵庫には、ビール、サワー、割材、食材が同じ週末前に入ります。一本増やすだけに見えても、棚の位置、スタッフの取り出しやすさ、開栓後の回転まで影響します。黒田さんは本数の提案を急ぐ前に、店内でどの時間に何が詰まるのかを聞くようにしました。
この確認を入れると、店長は価格比較だけでなく、週末営業の流れとして話せます。何本買うかの前に、欠品した時にお客様に何を案内するか、誰が判断するか、追加連絡を何時までに入れるかが見えてきます。
店長の言葉をそのまま使う入口
黒田さんは、店長の言葉をそのまま使って聞き返しました。週末のどの時間に在庫が読みにくくなるのかを、曜日と時間帯に分けて聞いたのです。
店長は、土曜の二回転目で21時前が多いと答えました。ここで、ただの在庫不足ではなく、時間帯と売場の動きが見えました。
さらに黒田さんは、その時間に足りなくなった時の代替案内を聞きました。店長は、スタッフごとにレモンサワーをすすめることもあると説明しました。
この答えが出ると、提案は変わります。銘柄を増やす話の前に、欠品時にすすめる代替、スタッフへの伝え方、納品日の前倒しを分けて考えられます。
このロープレで黒田さんが見た店長の反応は、商品名を出した時よりも具体的でした。店長は腕を組んで価格表を見る姿勢から、スタッフの動きを思い出す姿勢へ変わりました。現場の時間帯を聞くと、納品の話が店内の動きとつながったのです。
黒田さんはその後、店長に確認する項目を三つに絞りました。欠品しやすい時間、代替をすすめるスタッフ、追加連絡を受けられる締め時間です。この三つが分かれば、本数を増やす提案も売り込みに見えにくくなります。
お客様の言葉をそのまま使うと、売場で起きている時間と対応が見えます。
欠品時対応を聞く会話例
黒田さんは、納品本数の話へ入る前に、欠品時対応を聞く短い会話を練習しました。店長の言葉を変えず、売場で起きる動きを聞きます。
黒田さん「週末だけハイボール用の在庫が読みにくいです、というのは、何曜日のどの時間帯が多いですか」
店長「土曜の二回転目、21時前です」
黒田さん「その時間に足りなくなった時、スタッフの方は何を代わりに出していますか」
店長「その場の判断でレモンサワーをすすめる人もいます」
この会話では、黒田さんはすぐに商品名を並べていません。店長の困りごとを、時間帯と売場対応に分けています。
店長が土曜の二回転目、21時前に足りなくなりやすいと答えた後なら、納品日の提案も具体的になります。週末の前に何を入れるか、欠品時に何を代わりに出すか、スタッフにどう伝えるかを一緒に決められます。
黒田さんは、後の提案でも週末のハイボール用在庫という困りごとを軸にしました。店長の言葉を軸にしたため、話が価格表だけへ流れませんでした。
代替提案が売り込みに見える時
酒屋営業で代替商品を出す時は、売り込みに見えやすいです。お客様から見ると、欠品を理由に別の商品を増やされるように感じます。
黒田さんは、「こちらも置きませんか」とはじめませんでした。先に「欠品した時にスタッフの方が案内しやすい代替は必要ですか」と聞きました。
店長は「必要です。ただ、味の方向が変わると困ります」と答えました。この時点で、代替の条件が出ました。安さよりも、いつもの注文と近い味であることが大事だったのです。
ここで商品説明を増やしすぎると、店長は比較に疲れます。黒田さんは、候補を二つに絞り、週末の在庫不安に合う方から見せました。
一つ目の候補は、いつものハイボールと味の方向が近い商品です。二つ目の候補は、スタッフが短く案内しやすい商品です。黒田さんは、どちらを置くかではなく、欠品時にどちらならお客様に説明しやすいかを店長に聞きました。
店長は、追加で何を売るかより、スタッフが迷わないことを重視していました。そこで黒田さんは、商品カードの文言を一行だけ添える提案に変えました。味の違いを長く説明するより、スタッフが同じ言葉で案内できる方が実務に合っていたからです。
代替提案は、商品を増やす話ではありません。売場でスタッフが迷わないようにする話です。この順番なら、追加納品も押しつけに見えにくくなります。
価格と納期を同時に見ない順番
酒屋営業では、価格と納期を同時に聞かれます。安く入るか、早く届くか、欠品しないか。全部を一度に答えようとすると、説明が長くなります。
黒田さんは、まず売場で一番困る時間を確認しました。次に、その時間までに揃える本数を聞きました。最後に、代替を使うかどうかを店長と確認しました。
この順番にすると、価格だけで判断されにくくなります。店長は、週末の売場を止めないために何を見るかを考えられるからです。
もちろん価格は大事です。けれど、店長が困っている場面を聞かずに価格だけを出すと、他店との比較表に入るだけです。
価格を出す前に、欠品した時の売場対応を聞くと、納期と代替の意味が伝わります。
黒田さんは、最後に土曜の二回転目、21時前に間に合う納品日を確認しました。最初に聞いた時間帯を最後まで同じ言葉で扱ったため、店長も判断しやすくなりました。
納期を決める時も、発注締め切りだけを伝えません。金曜の何時までに連絡をもらえれば土曜の営業前に間に合うのか、欠品時の代替をどこに置くのか、スタッフに誰が伝えるのかまで一緒に確認します。
この順番なら、店長は安い仕入れ先を探すだけの判断になりません。週末の売場を止めないために、酒屋営業がどの段階を支えられるかを見られます。
黒田さんは、納品後の確認も一つだけ入れました。土曜の営業後に、足りなかった本数、余った本数、スタッフが案内しやすかった代替の三つを店長に聞くことです。ここまで決めておくと、翌週の本数調整も感覚だけになりません。
酒屋営業の強みは、商品を運ぶことだけではありません。飲食店の営業日ごとの波を見て、店長が次の発注を考えやすい形にすることです。そのために、価格表の前に売場で何が起きるかを聞きます。
この聞き方なら、翌週の提案も前回の続きになります。先週の土曜二回転目で何が足りなかったのか、代替案内でお客様の反応はどうだったのかを起点にすれば、店長は発注数を判断しやすくなります。
営業Q&A
酒屋営業で飲食店に何から聞けばよいですか?
銘柄や価格の話から入り、店長の困りごとが見えにくい場面です。
回答
まず、売場で足りなくなる時間帯を聞きます。次に、欠品した時にスタッフが何を代わりに出しているかを聞くと、納品本数、代替商品、伝え方の順番が見えます。
代替商品を提案すると売り込みに見えませんか?
欠品対策として別商品を案内したいものの、押しつけに見せたくない場面です。
回答
先に、欠品した時にスタッフが案内しやすい代替が役立つかを聞きます。役立つと分かった後で、味の方向や価格帯を店長の言葉に合わせて絞りましょう。
週末不安に合う納品提案
酒屋営業では、納品本数や価格の前に、売場で欠品した時の対応を聞きます。店長の言葉をそのまま使うと、週末の困りごとに合う提案がしやすくなります。
- 納品本数だけで進む商談
- 欠品時にスタッフが迷う売場
- 価格と納期を分けて見る順番
次の飲食店商談では、銘柄を並べる前に「足りなくなるのは何曜日のどの時間帯ですか」と聞いてください。その答えから、納品日と代替対応を一緒に決めましょう。
木村 守(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント)
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