営業に異動した不安を すぐ解消できる

営業に異動した不安をすぐ解消できる【7つのチェックポイント】

営業に異動して追い詰められた不安感を一発解消するためにチェックポイントは200ほどありますが、その中でも代表的な7つのチェックポイントについてご紹介します。この記事を読むことで明日から具体的な行動に移せます。異動で苦しんだ私の経験も交えてお話しします。
異動辞令

目次

はじめに

営業に異動した人の気持ちとは

営業未経験のあなたが配置転換や人事異動ではじめて営業になって、こんな気持ちになっているかもしれません。
営業に左遷

  • 突然、営業に人事異動になって寝耳に水。
  • 営業なんてやるものかと思っていたのに・・
  • 配属先が営業なんて・・受け入れられない。
  • 誰にも相談できず悶々としている。
  • 見える世界が変わり両膝をかかえこむ孤独感がある

そう思うのはムリもありません。当然のことだと思います。今まで営業とはまったく違う部署で働いてきたのですから。自分が営業をするなんて思ってもみなかったことでしょう。営業は私以外の人がするもの私には関わりのない職種だ、とさえ思っていた人もいるはず。

本記事を読むと営業に異動した不安を一発解消できる方法がわかります。

営業に異動した不安をすぐ解消できる【7つのチェックポイント】

営業に異動チェックリスト

  • 人事異動の理由や背景を知る。
  • 家族、友人、知人と話す。
  • 異動先の営業部署の上司と話す。
  • 事前の教育訓練・研修内容を確認する。
  • 商談スキルを身につける。
  • 自分の現在地を知る。
  • 他の成功事例を知る。

人事異動の理由や背景を知る。

営業に異動した人がすぐやってしまうこと

営業に異動した人がすぐにやろうとするのは、「自分が扱う商品/サービスの下調べしよう。」「情報収集して商品知識をつけよう。」など目先のこと。気持ちばかり焦ってしまい、周りが見えなくなってしまいがちです。

最初にやっていただきたいのは人事異動の理由や背景を知ること。人事異動になった理由や背景がはっきりしないまま、営業として進んで行くにはモチベーションの維持が難しくなるから。あなたが次のような状態であればとくに要注意です。
納得できない

  • 電話で上司から人事異動を知らされ納得していない
  • 上司と打ち合わせの機会もなく不満に思っている。
  • 上司以外の同僚から情報を聞かされ、いまだに戸惑っている
  • 人事部門から告げられた人事異動の説明が腹落ちしなかった
  • 上司との面談では頭が真っ白になり言葉が出なかった。

誰から人事異動や配置転換の情報を知らされるかは、あなたの直属の上司、その上の上司、人事部門など会社によってさまざまでしょう。知らされたときのショックからすぐ立ち直れず、業務に支障をきたす恐れもあります。ポイントは自分から働きかけてみることです。
上司との面談

  • 上司と落ち着いて話せる時間を取ってもらう。
  • 直属の上司に疑問を素直に話してみる。
  • 上司の説明で納得がいかなければ、その上の上司との時間をとる。
  • ランチや食事など社外で上司との時間を設ける。

長年ひとつの会社で勤めてとくにベテランになってくると「誰も何もアドバイスをくれない」状態に陥りがちです。私もその一人でして、周りが気を使ってしまって、自分が動かないと情報が得られない環境でした。

上司との面談で押さえるポイント

面談で聞くこと
面談の時間を取れたら、次のポイントは押さえておきましょう。

  • あなたが人事異動になった理由
  • あなたの今後のキャリアに影響があるのか。
  • 将来的なキャリアの展望
  • 営業部署であなたに求められること
  • 経営者視点から見た営業部署の未来。
  • 給与や待遇、福利厚生の変更があるか。

上司との打ち合わせ

私の場合は直属の上司と経営層が同席して説明してくださいました。面談で人事異動になると聞いた時は頭が真っ白になり、受け入れるしかない状況で、思ってることを何も話せませんでした。その後、上司と1対1で飲みに行き腹を割って話し合いました。

異動を伝える側の視点

一方で「伝える側の問題でしょう。」「上司や人事部門が本人が納得するまで丁寧に話すことが筋だ。」「趣旨の伝達が不足していてコミュニケーションのギャップがあって不満だ。」という意見もあるでしょう。その気持ちも理解できます。伝える側の視点から見ると、なかには「事細かに言わなくても自分で解釈してくれるはずだ。」「長年うちの会社に勤めてきたのだから、分かってくれるだろう。」「人事異動は会社命令。」と安易に考えている可能性は否めません。

厚生労働省のモデル就業規則には次の通りの記載があります。
就業規則

厚生労働省 モデル就業規則
(人事異動)
第1条 会社は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び従事する業務の変更を命ずることがある。

2 会社は、業務上必要がある場合に、労働者を在籍のまま関係会社へ出向させることがある。

3 前2項の場合、労働者は正当な理由なくこれを拒むことはできない。
引用元:厚生労働省 モデル就業規則について

就業規則で人事異動について定められているとはいえ、労働者と企業側が向き合って理解し合うことは大切だと私は思います。

50歳で出向。異動を決めた責任者からの話がなかった。

取材した50代の男性は50歳で子会社への出向が決定。味わった挫折失敗談を赤裸々に語ってくれました。「出向が決まって、尾を引くように感傷に浸ったのが頭から離れません。なぜかと考えてみると、出向で左遷だと感じた理由がありました。私の出向を決めた責任者からの話がまったく無かったからです。」
絶望
一度、会社側が失った信頼は容易に取り戻せません。加えて彼は、正式な出向人事を聞く前に、上司以外の人間から先に出向について聞かされた経験も。人事は本人の人生を左右するもの。適切に対象者に伝えるのは会社側の責任だと私は思います。

企業側としても、さまざまな角度から検討した上で配置転換や人事異動の打診をするにもかかわらず、労働者側からの理解が得られにくいと次のデータから見て取れます。私の過去を振り返っても、企業側の陰の苦労は見えずに実際に見聞きすることしか実感が湧きませんでした。

企業側の課題の1位「職種ごとの専門性が高い」

配置転換の課題
企業側の課題として「職種ごとの専門性が高い」がダントツで59.1%。技術職から営業へ、内勤から営業へなど専門性がガラッと変わることに対する労働者からの反発や抵抗は必至。働く側としては生活がかかっていますから、給与の引き下げや、転勤・単身赴任など労働条件の変更は恐ろしいハードル。私は総合職で全国転勤が可能という雇用契約でしたので、企業側は動かしやすかったのかもしれません。

配置転換の課題について、企業側の認識では、「職種ごとの専門性が高い」「職種変更に対する、本人の同意が得られにくい」を課題としてあげる割合が高い。
配置転換の課題
引用元:厚生労働省 限られた人材の活躍に向けた企業・労働者の課題

労働者側の受け止め方1位は「一定の条件が確保されれば、協力したい」

このアンケートでは、労働者側の配置転換の受け止め方が「条件を問わず、積極的に協力したい」「一定の条件が確保されれば、協力したい(検討余地がある)」で9割。
営業初心者

配置転換の経験の有無、受け止め方
引用元:厚生労働省 限られた人材の活躍に向けた企業・労働者の課題P172

実際、配置転換の通告は受け入れがたいと身にしみるように感じます。

もっておきたい視点

企業側がどのような意図であなたを人事異動するのか知ることは貴重な経験。労働者と経営者の双方の視点をもつことが出来て、一皮むけるのではないかと私は思います。
もっておきたい視点

  • 営業の現場を経験させてダイナミックに育てたい。
  • ゆくゆくは幹部候補。現場の感覚を身につけさせたい。
  • 営業部署の起爆剤として投入したい。
  • 顧客の声を聞いて将来のキャリアに活かしてほしい。
  • 経営や組織改革の大きな流れを知ってほしい。

などさまざま挙げられるでしょう。私の場合はずいぶん遠回りをしました。「まっさらな事業を成長させるために西日本の主軸になってほしい。」という経営者の想いを聞いて、自分で自分を奮い立たせていました。

異動させる理由1位「従業員の処遇・適材適所」

企業側への調査では、配置転換の目的について次のデータが出ています。

配置転換の目的

配置転換の目的については、「従業員の処遇・適材適所」が70.1%と最も多く、次いで、「異動による組織の活性化」が62.5%、「事業活動の変化への対応」が56.0%、「従業員の人材育成」が54.7%などとなっている。「その他」は0.9%あり、具体的には「不祥事防止」や「内部牽制」の記述が多く、「個人の事情への配慮」や「長期滞留者の解消」「退職者の補充」「新店の出店」などの記述もあった(図表3-2、付属統計表第54表)。
引用元:独立行政法人労働政策研究・研修機構 第3章 配置転換・出向・転籍についてP41 

労働者側としては、企業側の「建前と本音」と感じる人もおられるでしょう。私も同じ労働者側の立場として十分理解できます。

ある人事担当者のエピソード

医療系の企業で全国の人材配置の管理をしていたある人事担当者に取材をしました。「従業員の人事異動で課題になることは?」と尋ねたところ、彼はこう答えました。
人材資源
「全国に数十の営業所や各部署がある中で、かつては各事業所のマネージャー同士が人材配置を相談しあって決めていました。どのマネージャーもできる部下を他の事業所や部署に行かせたくないため、自分の部署で抱え込んでしまうという問題が頻発。本人の可能性を閉ざしてしまうことにもなるため、全国の人事権を本部に一極集中させました。私がその責任者となって、埋もれていた人材の掘り出しと適材適所で配置を図ったのです。各事業所のマネージャーの説得するのに気苦労が絶えませんでした。それが事業活動の推進や組織の発展につながると確信していました。」と。人事部門の苦労を痛感するエピソードでした。

福利厚生面はチェック必須

上司に確認すべきことに記載した、給与や年収など待遇や福利厚生に大幅な違いがないかは必ず確認しましょう。
福利厚生のチェック
上司との面談は口頭でのやり取りが主になることと思います。転勤や単身赴任などある場合はなおさら詳しく確認しておく必要があります。上司だけでなく必要に応じて総務部門や人事部門にも連携をとっておきましょう。住めば都というとおり、転勤や単身赴任は本人の環境の変化もあり影響は大きいです。準備をスムーズに進めるためにもチェックリストなどを作っておきましょう

家族、友人、知人と話す

人への相談が精神的なダメージを和らげる。

人事異動や配置転換は精神的なダメージを負うことがあります。それを和らげるためにも家族や友人、知人、上司や同僚など、あなたが信頼のおける人に気持ちを打ち明けることが大切。一人で抱え込んでしまうとストレスが積み重なって、営業部署でベストなパフォーマンスを発揮しにくくなってしまうからです。
知人友人家族

  • 自分が営業として成果を上げられるか胸を痛めている
  • 人事異動の内容に納得ができない怒り。
  • 自分が評価されず酷い仕打ちを受けた悲しさ
  • 二度と元の部署に戻れないと希望をなくしている
  • 今まで積み上げてきた経験が音を立てて崩れていく苦しさ。

など、あなたが感じる素直な気持ちを打ち明けてみるのです。

青天の霹靂 私の左遷エピソード

かつてのある秋の日、重苦しい気持ちで私は上司との面談をむかえました。「木村さんには新しい事業部に行ってもらいます。」と。
晴天の霹靂
私にとってはまさに青天の霹靂でした。管理職として役割を果たし切れなかったと、悔しいやら情けないやら涙がこみ上げてきました。今までとは異なる商材を扱う部署で自分はやっていけるのか、不安になりました。

長年勤めてきた今までの部署への思い入れがあるものの、内示を断るわけにはいかない。「断ればもうこの会社でのキャリアアップは望めない」、「昇進の可能性を閉ざしてしまう」と。現実を受け入れられない自分と葛藤しました。私は管理職からいち営業に左遷されたと思っています。

半年間の引き継ぎを終え、片道切符の新事業部で、いち営業マンとして働きはじめたのです。
崖っぷち
私自身が人事異動の通告を受けた時は、今まで携わってきた部署を離れ崖っぷちに立たされました。その日は煮え湯を飲まされた気分で不甲斐なさもあり、うつろな表情に。帰りの通勤電車で肩を落とし、最寄り駅から自宅までトボトボと歩きました。自宅のドアをあけるのに躊躇して、妻に何と話せばよいか戸惑ったのを覚えています。妻が「1からやりなおせばいいじゃない。」と私の気持ちに寄り添ってくれたことで随分助けられました。
妻の支え

営業に異動して生きがいを失った40代男性。

40代で営業への異動を経験した方に取材しました。彼は「異動するまで献身的に仕事に打ち込んでいただけに、異動は生きがいを絶たれたようだった。」といいます。異動は精神的なダメージが伴うもの。彼の奥様が、当時を振り返って「帰ってくるなり一言も話さず、呆然としていた。まるで魂を吸い取られたみたいに、力を失っていた。」と。「あのときは妻にずいぶん心配をかけました。」と本人は苦笑い。「絶望の淵に追いやられていたなか、妻と話すことで気持ちを解きほぐせた。」と。人に相談する大切さを感じます。
周囲のサポート
この記事をご覧のかたのなかには、

  • 「誰かに話したところで何も解決しない。」
  • 「人事異動は何も変わらないのだから話すことに意味はない。」
  • 「アドバイスされても役に立たない。」

と思われる方もいるでしょう。たしかに今すぐ課題が解決するというわけではないので、そう感じて当然だと思います。こころのケアという意味では人に話すことは重要なことのひとつです。

上司や同僚・家族のサポートの重要性

厚生労働省の資料にあるNIOSHの職業性ストレスモデルの中で、上司や同僚家族や友人からのサポートは、緩衝要因と呼ばれその役割は大きいとされています。

NIOSHの職業性ストレスモデル
引用元:厚生労働省 こころの健康 気づきのヒント集

「相談できる相手がいない」けどモチベーションを高くできる方法。

「自分には信頼のおける家族・友人・知人はいない。」という方もおられるでしょう。2つのアイデアがあります。
書き出す

  • 1つ目は「あなたの親友がいたとして、あなたに言葉をかけてくれるとしたら何と言ってくれるか。」を書き出すことです。どう励ましてくれるのか想像してみるのもいいですね。
  • 2つ目は「けど」を工夫して使ってみることです。「人事異動になった”けど”、私は元気に生きている」などネガディブな要素がある”けど”ポジティブな要素がある、という言い方をしてみるのです。これらを活用することで少し気分が楽になるかもしれません。

モチベーションを高く持ち続けることは営業部署で働くあなたにとって大切なことです。自分を支えてくれる存在に、アンテナを張ってみましょう

異動先の営業部署の上司と話す

営業の上司

あなたに求められる役割を把握するため

「営業部署に行ってから上司に挨拶すればいい。」「営業部署の上司から連絡があるまで放っておこう。」「まだ積極的に営業部署と連携を取る必要はないだろう。」などと思う方が多いのではないでしょうか。

できれば、あなたが異動してお世話になる営業部署の上司と連絡を取りましょう。異動元の部署の上司から聞いているあなたの役割と、異動先の営業部署の上司が認識しているあなたの役割を把握するためです。ギャップが大きければ、話し合う必要があります。

営業部署の上司との連絡の仕方

営業部署の上司とは次のような方法で連携を取ってみましょう。
上司と連携

  • メールでご挨拶、日程調整する。
  • 時間を約束した上で落ち着いて電話する
  • 予定を決めてオンライン会議をする。
  • ミーティングルームで1対1の対面会議をする。
  • 「差し」でランチ/食事に行く

緊張が解けた空間で話をできるとお互いに腹を割って話せると思います。私の場合は異動先の営業部署の上司が、かつて同じ事業部の先輩で、電話でじっくりお話ししました。営業部署の事業の方向性や私に求められる役割をお聞きしてホッとしたのを覚えています。

営業部署の上司と話すポイント

1on1
次のような内容を話し合えるとよいでしょう。

  • あなたに求められている役割
  • 営業部署の未来
  • 営業部署の課題
  • 営業としてのやりがい
  • お客様に喜ばれている事例

営業に苦手意識がある場合

あなたが営業に対して苦手意識を持っておられる場合は、とくに「営業としてどのようなやりがいがあるのか。」「商品サービスがお客様に喜ばれた事例」を聞いておくことは重要です。苦手意識を持ったまま営業部署に入ってしまうと負のスパイラルに陥る場合があります。あなたが営業に対してポジティブなイメージを持てる打ち合わせができると理想的です。

「気を使ってしまうので連絡できない。」「営業部署の上司に失礼に当たらないかと心配。」「都落ち・島流しも同然で諦めている。」と仰る方もおられるでしょう。営業部署の上司とはこれから何年もお付き合いする可能性があります。出発時点のお互いの認識がずれていると、少しずつ歯車が噛み合わなくなり、業務をスムーズに回せなくなることになりかねません。

現在の勤務先で、引き続き働くことを 希望する労働者の割合
引用元:厚生労働省 限られた人材の活躍に向けた企業・労働者の課題P172

現在の勤務先でこれからも引き続き働くことを希望するのであれば、認識のすり合わせを早い段階で行いましょう

事前の教育訓練、研修について確認する。

引き継ぎ期間にやっておきたいこと

営業研修
営業に異動が決まったあなたは、現部署の業務の引き継ぎ期間を過ごしておられるかもしれません。「引き継ぎだけで毎日手一杯だ。」「営業部署のことまで考えられない。」「営業のことを考えるだけで憂鬱になる」と感じる方もおられるでしょう。業務過多になってしまいムリを重ねることは禁物です。心に少しでもゆとりがあるのであれば次のことを考えてみましょう。

営業部署に行く前に、事前の教育訓練や、営業研修があるのか、どのような内容かについて確認することです。今の会社で勤められてきたあなただからこそ、営業の即戦力として求められるからです。たとえば、事前の教育訓練や営業研修では次のようなことを学びます。

  • 業界に関する専門知識や最新情報。
  • 商品サービスに関する知識。
  • 競合他社に関する情報。
  • 現在の業績や今後の売上目標。
  • 営業の基礎的なマナー。
  • 顧客とのコミュニケーションの仕方。
  • セールストーク。
  • パンフレットや営業ツールの使い方。
  • 商品/サービスの導入事例。
  • 社内の情報共有ツールの使い方。
  • 顧客管理システムの使い方。
  • 目標管理シートの入力の仕方。

異動する条件第4位は「事前に教育訓練を行ってくれること」

厚生労働省の資料にある労働者への調査で、配置転換の条件として「事前に教育訓練を行ってくれること」が第4位26.4%となっています。営業部署で実際に業務が始まる前の段階で、知識やスキルを習得しておきたいという気持ちが見て取れます。何も事前準備をせず、営業部署での活動をチャレンジしはじめると、周りについていけなくなったり、置いていかれてしまったりしかねません。

配置転換の条件
引用元:厚生労働省 限られた人材の活躍に向けた企業・労働者の課題

ステップアップ
「研修なんか受けている暇はない。」「営業は学んでも身につかない。」「きっと営業現場で数をこなせば身につくはず。」と思われる方もいるでしょう。引継ぎ業務で一息つく暇さえなく、そこまで手が回らないというのは障壁です。やったことのない営業が、どうすれば身につくのか、まだ見えないと思うのも当然。少なくともあなたがおさえておくべきポイントを整理することをお勧めします。

私の失敗事例

私は異動で営業部署に配置され、右も左もわからない状態で業務開始。何も準備せず、事前の教育研修もほぼないまま自力で情報を集めていった失敗パターンで迷路に迷い込んだのです。
私の失敗事例
当時の営業部隊は少数精鋭で私への教育研修に時間を割く余裕はなく、顧客対応に追われてばかり。大企業のように中途社員への研修制度が確立されていれば、教育研修を行う専門のスタッフや外部研修講師が関わってくれるでしょう。
頓挫
私の知る限り、多くの中小企業は限られた営業人員で研修スケジュール、研修内容、研修担当を調整しています。繁忙期や閑散期に大きく左右され、スケジュールを組んでいた研修日程が頓挫するのもたびたび。研修なしで営業現場に駆り出される方もいました。

会社ではベテランの私でしたが、新卒社員の方が先輩でわからないことを一つひとつ丁寧に聞いて覚える毎日。同期は出世しており後輩に追い抜かされる状況のなか、歯を食いしばって情報集めに奔走しました。

人材育成にかける投資額が少ない日本

企業側の目線では、本来は教育研修を行って人材育成を図りたいところです。予算を潤沢に確保できている企業は統計を見ても少数派。最近では、外部研修講師の説明動画を閲覧できるプログラムを導入している企業もあります。私の会社も同様で私自身も動画で学ぼうと思いました。私の実力不足のせいもあり現場との乖離と感じたので活かせませんでした

公益財団法人 日本生産性本部 生産性総合研究センターの日本企業の人材育成投資の実態と今後の方向性の資料によると、GDPに対する人材投資の額は、世界の主要6カ国の中で日本が最も低いのです。

人材投資/GDPの国際比較
引用元:公益財団法人 日本生産性本部 生産性総合研究センター日本企業の人材育成投資の実態と今後の方向性P2 人材投資/GDPの国際比較

長年勤務をしていると、与えられた情報の中でやりくりする癖がついて受身の姿勢になることは私もあります。企業側からの支援を求めて情報を待つのではなくて、「自分から情報を得よう」という視点に立っておくことを私はお勧めします。

商談スキルを身につける。

商談スキルのチェックリスト。

商談スキル
企業が営業マンに最も求めることの一つは【売上を上げる】こと。営業マンは顧客との商談を経て成約を目指します。成約の確率を高めるために、商談スキルは不可欠。商談スキルを身につけずに顧客との商談をするのは、武器を持たずに勝負に出るようなもの。商談スキルを懇切丁寧に教育する企業は数少ないと私は感じています。「商談スキルを会社が教えてくれたか?」と聞かれると、残念ながら私の答えは「NO」です。

商談スキルは細かいことをあげればチェックポイントは山ほど。ここではその中でも代表的な項目を記載します。

商談スキルのチェックリスト

  • アポイント取得
  • 挨拶
  • 人間関係づくり
  • 顧客の現状を知る
  • 顧客の気持ちを知る
  • 顧客の課題を知る
  • 顧客の取り組みを知る
  • 提案
  • クロージング
  • 反論への対処
  • フォローアップ
  • 紹介の獲得

「営業未経験だからムリ。」「センスがないから投げ出している。」とおっしゃる方もおられるでしょう。今できないからこそ、学んで身につけることが大事だと私は思います。私が以前関わったある営業マンは「営業未経験で内向的だから自信がありません。」とはじめは言っていました。
発声法
声の出し方をアドバイスして一から出直してもらったところ、「自分に自信が持てるようになりました。」と売上をあげられるように。あっという間の出来事でした。

商談スキルは誰もが持っている。

誰でも出来る
あなたは「このいずれかに当てはまるから営業ができない」と思っていませんか?

  • 内向的。
  • 自信がない。
  • 内気。
  • 人見知り。
  • 話が苦手。
  • 才能がない。
  • 営業センスがない。
  • 気合がない。
  • 押しが弱い。
  • 営業知識がない。
  • 根性がない。

あなたが当てはまると思うなら、まったくの誤解です。商談のスキルは誰もが持っています。運転の仕方がわからないから、車を運転できないと言っているのと同じ。運転未経験の人でも自動車学校に行けば身につきます。あなたが持っている力を引き出すかどうかだけ。営業の現場に出る前にどれだけ準備ができるのかが肝心です。

自分の現在地を知る。

営業スキルのレベルを知る。

現在地を知る
営業に異動して「これから営業に手をつけよう。」というなかで、あなたの現時点の営業スキルを知ることが大切です。現時点の営業スキルがわからないと、何を伸ばす必要があるのかが見えなくなるもの。地図を見ながらゴールに向かうために、必要な情報は【現在地がどこなのか】です。営業スキルについても同じことが言えます。

自分が見えていることは、ほんのわずかでしかありません。鏡の前に立たないと、自分の顔が見えないのと同じです。

あなたの営業スキルを的確にとらえ、改善すべきポイントを示してくれる人が必要です。メンターとは指導者であり支援者のこと
メンター
客観的な立場からあなたを見て、時にはアドバイスをして、時には背中を押します。上司が当てはまるのであれば、望ましいのかもしれません。人間はどうしても合う合わないがあります。「あなたにとってのメンターは誰なのか」を明確にしましょう。

他の事例を知る。

社外の仲間をもつ。

社外の仲間
営業マンの世界は、個人商店の集まりのようだと私は思います。一人ひとり、考え方・売り方・経験が違い、それぞれの個性があるから。個性のユニークなさまざまな営業マンの成功事例・失敗事例を知ることで得られるものは多い。ときには、あなたがまだ経験していないことを知ることも。お互いに励ましあうことで、前進する力にもなることでしょう。

私も今までたくさんの営業マンと接してきました。社内の営業マンはごく限られています。社外に目を向けることで、足し算ではなく、掛け算のように世界が広がります。目頭が熱くなったことを社外の営業マンに話し、一緒に喜び合うこともありました。

価値観がまったく違う社外の営業マンのつながりは、いくらあってもプラスに働きません。あなたの価値観に近い、営業マンと繋がっていくことが大切だと私は思います。

営業Q&A

【1】内勤職から営業職へ人事異動。モチベーションがあがりません。

◆質問
内勤から営業へ異動
内勤職から営業職への人事異動についてです。このたび、内勤職(総務)から営業職(紹介事業系)へ部署移動となりました。突然の異動でかなり戸惑っています。なぜ自分が選ばれたのか理由は知らされていません。

同僚からは「向いてそうだもんね~」といわれます。自分ではそんな風に思いません。

もともと人と話すことは好きなほうです。内勤職をしていた時は社内のひとか取引先の営業マンと話す程度だったのですが。
左遷なのではとも思っています。
今の業務は新規開拓のテレアポをしていますが、モチベーションがあがりません。
◆回答
急な人事異動で内勤職から営業職になられたのですね。
心の準備ができていないとなおさらあなたは戸惑いますよね。
モチベーション
いろいろと課題はありそうですが、モチベーションについて一つあなたにお話ししたいと思います。

それは、どんなことが今まであなたのモチベーションだったかを振り返ること。

  • 今まで総務として内勤職を務めてきた中で一番印象的な出来事は何ですか?
  • 努力して苦労して乗り越えてきた経験について一つでいいので詳しく思い出してみてください。
  • そのときどんな感情になっていましたか?
  • そのなかでの気付きはどんなことがありますか?
  • 営業職としてモチベーションを高められるのはどんな時だと感じますか?
  • 実現した時のことをイメージして、自分の心に湧き上がってくる感情も味わってみてください。

次の行動や目標が見えてきたり、あなたのモチベーションの源が見えてくると私は思います。
試してみてください。

【2】管理部門から営業に異動。左遷だと思っています。

◆質問
管理部門
今まで管理部門に所属。先日、上司とトラブルで急に異動と言われ、営業部に左遷されてしまいました。
管理部門では役職者でしたが、営業部では一からのスタート。

営業部の若手からも冷たい目で見られている気がします。
2か月目に入った今、目標に少しずつ近づいて来ました。
すると周囲の人は急に態度が変わり、今まで見向きもしなかった人が挨拶をしてくれるようになりました。

立場や成績で急に態度を変えるというのに我慢できず、ショックでした。
この営業部でこれからやっていかないといけないのに、そんな人たちを仲間だと思えない自分がいて嫌になります。

どうしたらいいでしょうか?

◆回答
成績次第で急に態度が変わってしまったと感じてショックだったのですね。

あなたが本気で営業活動に取り組んだからこそ、目標に近づいていくことが出来たのだと私は思います。あなたの姿を見ていた営業部のメンバーの気持ちが変わってきたのだと思います。

営業部の同僚や上司など周囲のメンバーは、あなたが思っている以上にあなたのこの1か月の姿を見ていたはずだからです。管理部門では役職があられたあなたですので、周囲ははじめ気を使っていた部分もあったのかもしれません。この1ヵ月のあなたをみて、周囲もあなたを信頼のおける仲間だと思えるようになったのではないでしょうか。
コミュニケーション
あなたがこれから営業部で一緒にやっていく人たちです。あなたから話しかけたり、挨拶をしたり、相手のふところに入っていくことが出来ればさらに関係が良くなっていきます。

意思疎通が出来てくれば仲間だとお互いに思えるものだと思います。
あなた自身の心のハードルを解いてみてはいかがでしょうか。

【3】営業支援から営業に異動。お得意様の担当になり気が張ります。

◆質問
お得意様
社会人3年目の男性です。 今年の人事異動で、営業支援から営業に異動に。営業のなかでも私は十本の指に入るお得意様の担当になりました。

お得意様なので常に上司が私に目を光らせています。
私も常に気が張ってしまっています。

この状況を乗り切るのにどうすればいいでしょうか?
◆回答

極端に失敗を恐れずに、”今回の異動で貴重な経験をさせてもらえる”くらいのつもりでやればいい、と私は思います。あなたが気を張っているのは、上司も気を張っているから。

上司が気を張っているのは、イライラ・焦り・不安・心配などです。これらが重なったり強くなったりすると口調が荒くなったりするものです。

これらの正体が何なのかを突き止めてから報告・連絡・相談を繰り返して行動に移していくのです。一つひとつひも解いて、情報を集める行動にうつしてみましょう。
TODOリスト
下記はTODOリストです。

  • そのお得意様に対して今までどのような経緯があったのか。
  • 担当者の性格や企業および担当者としてのニーズ。
  • 過去にトラブルがあればどのような内容だったのか。
  • 上司が一番気にしていることが何なのかを上司に聞いてみる。
  • あなたの行動予定、行動に移す前の相談、結果の報告を上司に対して継続する。
  • そのほかにも、あなたが出来る最大限の準備をする。

行動した上で上司がどのような反応をするのかを見ましょう。誤解を恐れずにいうと上司の反応をチェックしながら試行錯誤していくぐらいのつもりでいいと私も思います。

あなたが営業支援の部隊にいたときを思い出してください。同じように営業マンが求めることを先回りして情報収集していませんでしたか?その経験があれば今回その経験を活かしましょう。

これらが一通りできれば、お得意様以外にも、上司からの要望を具体化でき、行動して成果がでると私は思います。やるべきことをはっきりと決めて臨んでいく試行錯誤の段階だ、というくらいの気持ちでやってみましょう。

【4】営業同行が嫌。営業はノルマを達成するのは快感なのでしょうか?

◆質問
営業ノルマ
営業に異動になりました。営業同行が嫌でいまから気分が落ち込んでいます。

営業できるようになって、目標金額やノルマを達成するのは快感なのでしょうか?
◆回答

目標金額やノルマを達成する充実感は格別。
評価されて月給があがるとか、賞与がでるとか、金銭的な欲が満たされる感覚はあります。

それだけで営業は長続きしません。

営業は長期戦だからです。

お客様に心から喜んでもらったり、新たなお客様のご紹介をいただいたりすることが何倍も嬉しいものです。
お客様も自分も喜べることが、営業の本当の喜びだと思います。

営業に異動されて営業同行が嫌なお気持ちもあるようですが、得られるものもあると思います。
営業マンはおのおの自分のやり方をもっていることが多いです。客観的な視点で、なぜこの営業マンは売れているのか、など分析して情報をあつめるつもりで同行するとおもしろくなってくると私は思います。

【5】技術職から営業に配属され困っています。

◆質問
私は今まで技術畑で勤務してきました。職場のメンバーとの意思疎通を図って、身を削るような思いでやってきたつもりです。職場でも信頼され技術畑でこのまま定年まで走る気でした。

しかし先月、上司から呼び出しがあり営業に配属が決まりました。青天の霹靂でまさか私が営業やると思っていませんでした。営業の技術もありませんし右も左もわかりません。正直営業やりたくないとも思っています。

家族を養っていくためには営業マンとしてやっていくほかありません。今回の人事異動は私にとって苦痛でこの世の終わりを迎えてしまったかのようです。私には商品知識しかないので不安でいっぱいです。私と同じような方がどのように乗り越えているのでしょうか?

◆回答
今まで技術畑と行ってこられたのに突然営業に異動になりショックだったのですね。お気持ちお察しします。

技術畑で勤めてこられて商品知識があるのは素晴らしいことです。技術職は商品の企画や設計・製造に至るまで基礎が備わっているはず。減点ではなく加点で考えていきましょう。

今はまだお客様とのやりとりや細かな営業ノウハウを手にしてないと思います。それらのスキルが身につけば十分に営業として戦っていけます

あるガラス加工会社は新入社員すべて技術職の現場からスタート。新人研修では徹底的にガラスの素材や加工技術を叩き込みます。知識が身についた後、2~3年経ってからやっと営業に配属されます。いくら営業をやりたいと希望したとしてもはじめは技術職からのスタート。先に技術に配属する理由は、知識がある営業マンは現場で顧客とタイトのレベルで話せるから。知識がある営業マンは信頼されやすいのです。

別のある金属の加工会社の営業社員は全員、技術職を兼ねています。営業何年しても技術の現場から外れることはありません。その会社は金網の加工会社でオーダーメイドの個別対応のきめ細やかな加工が自慢。スナック菓子を焼くような金網も作っています。取引先それぞれの現場の課題に着目して徹底的にヒアリングを実施。金網の細部にまで渡る細かな設計や、金属疲労の可能性・ひとつの製品ごとに比較にならないほどの大きな差がある顧客ニーズに応えています。

私がその会社に訪問したとき、営業マンは電話でお客様と話していました。「なるほどそのような状況なのですね。」「であれば太さを変えて作り直した方がいいですね。」「準備してサンプルお持ちしますのでお打ち合わせの日程を調整させてもらっていいですか?」と。顧客視点に立った電話のやり取りは親身にお客様の相談に乗る姿そのものでした。

あなたは今、営業のやり方が分からず戸惑っているかもしれません。この先あなたが経験していくことはプラスにしかならないのです。自分を卑下して追い詰める必要はありません。

一方で、「そうはいっても営業は技術畑とはまったく異なるから私にはムリだ」という人もいるでしょう。自分にはムリだと拒否したくなる気持ちはよくわかります。すでに商品知識があるあなたは営業の商談のステップの基本を理解するだけでレベルアップします。

技術職としてあなたが今までやってきた経験は営業で必ず活かされるでしょう。後ろを振り返るだけでなくてこれから前を向いて進んでいきましょう。

まとめ

営業に異動してどのように行動するのかはあなた次第です。この記事の中で活用できる点を行動に移してみてください。たとえ全て出来なかったとしても一つできれば一歩成長です。他人と比べるのではなく、あなた自身の成長を見つめて欲しいと私は思います。人事異動で営業に異動になった方のために営業チェックリストをつくりました。下記をクリックいただきぜひお申込みください。

営業チェックリスト

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2003年、22歳から営業マンとして18年の実績。お客様からの〝たった一言〟をきっけかに営業ノウハウを体系化。1000件以上の顧客との商談実績。500人以上の営業相談に応じてきた実績。経験・実績に基づいた、わかりやすい営業ノウハウ・セミナーでの解説に好評がある。

 
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