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営業の最初の一言が硬い時は相手の現状から入る

自己紹介より先に置く現状の入口

営業の最初の一言が硬くなると、商談の入口で相手も身構えます。名刺交換の後に自己紹介を長く話し、会社の強みや実績を並べるほど、相手は聞く側に回ります。

水野亮介さん(仮名、法人向け防災用品販売業)は、初回訪問で「弊社は防災用品を幅広く扱っています」と始めていました。相手は丁寧に聞いてくれましたが、会話は商品説明のまま進み、現場の困りごとが出てきませんでした。

訪問後に振り返ると、水野さんは最初の一言で自分の説明をはじめていたことに気づきました。相手の現状を聞く前に、こちらの情報を出しすぎていたのです。営業の最初の一言が硬い時は、自己紹介を短くして、相手の現状から入ります。

この記事では、最初の一言を振り返り、相手が話しやすい入口に変える流れを解説します。入口を変えるだけで、商談は説明の時間から相手を知る時間に変わります。

この記事は、次のような悩みに近い方向けです。

  • 初回訪問で自己紹介が長くなりやすい方
  • 名刺交換後の一言がいつも硬くなる方
  • 相手の現状を自然に聞く入口を作りたい方

硬い入口で止まる会話

水野さんの初回訪問は、礼儀正しく始まっていました。名刺を渡し、会社名を伝え、扱っている防災用品の種類を説明します。失礼な対応ではありません。

それでも、相手の総務担当者はなかなか自分の話をしませんでした。水野さんが説明を続けるほど、担当者は「はい」「そうですね」と短く答えるだけになりました。

この時、問題は商品説明の内容ではありません。最初の一言が、相手に話してもらう入口になっていませんでした。営業側が説明を始めると、相手は聞く役になりやすいです。

水野さんは、訪問後に最初の一分を紙に書き出しました。「弊社は」「当社では」「幅広く扱っています」という言葉が続いていました。相手の現状を聞く言葉は、まだ出ていませんでした。

最初の一言は、営業側を立派に見せるためのものではありません。 相手が今の状況を話しはじめるための入口です。

自己紹介を短くする振り返り

水野さんは、次回訪問前に自己紹介を短くしました。「防災用品のことで、現場の備え方を一緒に確認している水野です」とだけ伝える形です。

その後に、「いま防災用品の管理で、期限、置き場所、社員に案内する方法のどこが一番気になっていますか」と聞く練習をしました。説明の前に、相手の現状を聞く入口を置いたのです。

ロープレでは、相手役が「置き場所です」と答えました。水野さんは「置き場所が気になっているのですね」と受けました。続けて、「保管する場所が足りないのか、社員が取りに行きにくいのか、どちらに近いですか」と聞きました。

本番では、総務担当者が「期限切れを見落とすのが不安です」と話しました。水野さんは「期限切れを見落とすのが不安なのですね」と受けました。

ロープレの質問と本番の発言は役割が違います。練習では置き場所を例にし、本番では相手が話した期限切れの不安から入っています。

振り返るべきなのは、自己紹介の上手さより、相手の現状を聞く言葉が最初にあったかどうかです。

最初の一言の改善記録

水野さんは、訪問後の記録に、最初の一言と相手の最初の返事だけを残しました。長い議事録にはしません。入口の一文が相手の話を引き出したかを見るためです。

改善前の記録は会社説明から始まっていました。相手の返事は短い相づちだけでした。これでは相手の現状が出ていません。

改善後の記録には、「期限、置き場所、案内の仕方のうち、いま気になっているところはどこですか」とありました。相手の返事には期限切れの不安が出ていました。

この違いを見ると、水野さんは自分の話し方を責めるだけで終わりません。変える場所が分かります。次回も、自己紹介を短くして現状を聞く入口を置けばよいのです。

その後の商談では、防災用品の種類をすぐ並べませんでした。相手が話した期限切れの不安をもとに、更新月、保管場所、社員に案内する文面を確認しました。

担当者は「去年、期限切れに気づいたのが遅れました」と話しました。水野さんは「去年、期限切れに気づいたのが遅れたのですね」と短く受けました。そこから、点検表の話ではなく、誰が気づく仕組みにするかを一緒に見ました。

水野さんが売ったのは、ただの備蓄セットではありません。担当者が不安に思っていた期限切れを見落とさないための提案です。入口の一言が変わったから、提案の中身も変わりました。

最初の一言は、商談全体の方向を決めます。 自分の説明から入ると商品説明に寄り、相手の現状から入ると相談になります。

入り方を比べる表

硬くなりやすい入口 話しやすい入口
会社の強みを長く話す 相手の現状を短く聞く
商品一覧から入る 今困っている管理場面から入る
実績で安心させようとする 相手の言葉を受けて次を聞く

表で見ると、違いは話す量だけではありません。硬くなりやすい入口は、営業側が主語です。話しやすい入口は、相手の現状が主語になります。

水野さんは、自分の会社を紹介しないわけではありません。最初に短く名乗り、何のために来たのかを伝えます。そのうえで、相手の現状を聞きます。

この順番なら、相手は「売り込まれる」と感じにくくなります。自分の会社のことを分かってもらえるかもしれない、と感じやすくなります。

逆転営業では、営業はお役立ちです。お役立ちであるためには、先に相手の状況を知らなければなりません。最初の一言は、その姿勢を見せる場所です。

初回訪問で使う短い入口

名乗りの短さ

名乗りは短くて構いません。水野さんは「防災用品の管理を一緒に確認している水野です」と言いました。そこからすぐ相手の現状を聞きました。

肩書きや実績を長く説明しなくても、相手が話し始めれば信頼は作れます。信頼は、自分を大きく見せることだけで生まれるものではありません。

現状の聞き方

現状の聞き方は、相手が答えやすい言葉にします。水野さんは「防災用品はどうですか」と広く聞かず、「期限、置き場所、案内の仕方。このあたりで気になるところはありますか」と聞きました。

選択肢を置くと、相手は話しやすくなります。ただし、選択肢を増やしすぎると迷います。相手の仕事に近い範囲で絞って聞きます。

初回訪問の入口は、長い台本を覚える必要はありません。名乗りを短くし、相手の現状を聞く一文を用意します。

水野さんは、次の訪問でも同じ考え方を使いました。相手が工場の担当者なら、「保管場所、持ち出しやすさ、点検日のどこが気になっていますか」と聞きます。相手が事務所の担当者なら、「社員に案内する方法、更新月、備蓄数のどこが気になっていますか」と聞きます。

聞く範囲は相手に合わせて変えます。けれど、入口の考え方は同じです。自分の説明を短くして、相手の現状を聞きます。

この一文があると、その後の商品説明も変わります。相手が期限切れを不安に思っているなら、点検しやすい管理方法を先に話します。置き場所が気になるなら、保管スペースと持ち出し動線を先に確認します。

次回訪問前の振り返り

水野さんは、訪問後に毎回、最初の一言を見直しました。うまくいった商談だけでなく、話が広がらなかった商談も見ます。

見るのは、相手の最初の返事です。短い相づちで終わったのか、「実は期限が気になっています」と話し始めたのか。ここに入口の良し悪しが出ます。短くても、次回の改善材料になります。

もし相手の返事が短かったら、次回は聞く範囲を変えます。防災用品という広い言葉で止まったなら、期限、置き場所、案内文のように具体化します。具体化しすぎて相手が選びにくかったなら、今いちばん気になるところを聞く形にします。

振り返りでは、商談全体を反省で埋めません。最初の一言と相手の最初の返事に絞れば、次に変える場所が見えます。

水野さんは、三回目の訪問で「本日は、期限切れの見落としが起きにくい管理の仕方を一緒に確認させてください」と始めました。担当者は「それを知りたいです」と答えました。

この時、水野さんは最初から商品を売り込んでいません。相手が知りたい現状を入口にして、商談を始めています。

最初の一言が硬い時ほど、気の利いた挨拶を探したくなります。けれど、営業で大事なのは、相手が自分の話をしやすくなる流れです。現状を聞く短い一文があれば、入口は十分に変えられます。

営業Q&A

自己紹介を短くすると失礼に見えませんか?

初回訪問で会社説明を省くことに対する不安です。

回答

名乗りと訪問目的はきちんと伝えます。そのうえで、相手の現状を先に聞きます。長い自己紹介より、相手の話を聞く姿勢の方が信頼につながる場面も多いです。

相手の現状を聞いても答えが短い時はどうしますか?

最初の質問に相手が乗ってこない時の対応です。

回答

聞く範囲を少し具体化します。防災用品全般について聞くと広すぎるなら、「期限、置き場所、社員に案内する方法で気になる点はありますか」と聞くと答えやすくなります。

入口で相手が話し始める一文

営業の最初の一言が硬い時の直し方を解説しました。自己紹介を長くするより、短く名乗り、相手の現状を聞く入口を置くことが鍵です。

  • 自己紹介を短くする振り返り
  • 相手の現状を聞く入口の準備
  • 最初の返事から見る改善点

次の訪問前に、名乗りの後に置く現状質問を一文だけ書いてください。商談後は、その一文に対する相手の最初の返事を見れば、次に入口をどう変えるかが分かります。

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営業指導歴22年。1000件以上の顧客との商談経験。1000人以上の営業相談に応じてきた。ある経営者との出会いを機に営業ノウハウを体系化。元ニートの落ちこぼれ営業を最下位グループからたった1か月で全国300人中トップに一発逆転させた。営業経験・実績に基づいた、わかりやすい営業ノウハウ・セミナーでの解説に定評がある。

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