営業で商談メモが多すぎる時は次回行動だけ先に見る
長い商談メモから次回行動を先に拾う
商談のあと、メモが多すぎて次に何をすればよいか分からなくなることがあります。相手の発言、商品説明、金額、雑談、宿題、感想。丁寧に残したつもりでも、次回商談の前に読み返すと、重要な点が埋もれます。
谷口尚人さん(仮名、複数店舗の小売業へ在庫管理システムを提案)は、商談中に相手の言葉をたくさん書いていました。忘れないためです。ところが、次回の前日になると、どこから見ればよいか分からなくなっていました。
谷口さんが困っていたのは、メモの量ではありません。次回行動、相手の未回答、営業側の宿題が混ざっていました。読み返しても、次に聞くことが一目で見えなかったのです。
営業で商談メモが多すぎる時は、全部を整理しようとせず、次回行動に必要な三つだけを残します。
商談メモはきれいに残すためではなく、次回の一問を決めるために使います。この記事では、書きすぎた商談メモから次回行動を先に見る方法を解説します。
こんな人におすすめの記事です。
- 商談後のメモが長くなり読み返せない方
- 次回商談で何から聞くか迷う方
- 相手の発言を活かしたフォローをしたい方
これから一つひとつ見ていきましょう。
書き残しても次に動けない理由
商談メモが多いこと自体は悪くありません。相手の発言は大切に残します。問題は、次回に使う情報とそうでない情報が同じ並びになっている点です。
谷口さんのメモには、相手の発言、利用人数、導入時期、雑談、過去の失敗、上司の名前、競合サービス、金額感が並んでいました。どれも商談中には大事に見えます。けれど、次回商談で使うものは限られます。
次回に使う情報が見えないと、営業側はもう一度同じ質問をします。相手は「前回も話しました」と感じます。商談メモを取ったのに、相手の話を活かせていない状態になります。
谷口さんは、次回商談の前にメモを読み返す時間が長くなっていました。読む量が多いほど不安になり、結局、資料説明からはじめてしまいます。そこで、メモの目的を変えました。
商談メモは、記録を完璧にするためだけに使いません。次回行動、相手の未回答、営業側の宿題を見つけるために使います。
三つに分ける商談メモ
谷口さんは、商談メモを次回行動、相手の未回答、営業側の宿題の三つに分けました。この三つの呼び方は、印の意味としてそのまま使い続けます。
| メモに付ける印 | 見る内容 |
|---|---|
| 次回行動 | 次の商談で最初にすること |
| 相手の未回答 | 相手がまだ答えられていないこと |
| 営業側の宿題 | 営業側が調べて返すこと |
三つの違いは、次に何が要るかです。次回行動は、次の商談でこちらが最初にすることです。相手の未回答は、相手から答えをもらうまで決まりません。営業側の宿題は、こちらが調べて返す約束です。この三つを分けると、メモを読み返す順番が決まります。
次回行動、相手の未回答、営業側の宿題を分けると、長いメモでも次に聞くことが見えます。
谷口さんは、商談直後にメモに印を付けました。全部をきれいに整える必要はありません。次回行動には丸、相手の未回答には四角、営業側の宿題には星を付けます。印の形は何でも構いません。三つの意味を混ぜないようにします。
たとえば、担当者が「店長によって現場の反応が違います」と話したなら、これは相手の未回答です。どの店長が何に迷っているか、まだ分かっていないからです。一方、「過去の資料を送ります」は営業側の宿題です。
商談直後の三分だけの見直し
谷口さんは、商談直後の三分だけを見直し時間にしました。時間を長く取ると、文章を整えたくなります。三分なら、次回行動、相手の未回答、営業側の宿題を拾うことに集中できます。
谷口さん「店長ごとの現場の反応が違うと話していましたね。次回は、導入に前向きだった店長さんの具体例から聞いてもよいですか?」
担当者「はい。そこを話せると、社内でも説明しやすいです」
この一往復が次回行動です。メモの中に相手の未回答が見つかったから、次回行動が決まりました。営業側の宿題として、店長別の導入案を一枚で返します。
私が面談でお会いした中に、自動車部品や機械を扱う商社で営業をしている方がいます。成果を急ぐあまり、商談では自分が話しすぎて、顧客の本音や課題を引き出しきれていなかったのです。その方は、振り返りのノートを習慣にして、前回の会話を次の訪問に活かすようにしたと話してくれました。顧客が深い課題を打ち明けてくれるようになったことも、本人から聞いています。
商談直後に見るのは、うまく話せた感想ではありません。次回の最初に聞く一問です。
谷口さんは、三分の見直しで長い文章を書かなくなりました。代わりに、「次回は導入に前向きだった店長の具体例から聞く」と一文で残します。この一文があれば、次回商談の入口に迷いません。
書きすぎを防ぐ聞き直し
商談中にすべてを書こうとすると、相手の表情や間を見落とします。谷口さんも、書くことに集中しすぎて、相手が考えている時間を見逃していました。
そこで、書ききれない時は聞き直すことにしました。「いまの話は、次回こちらが確認して返す内容ですか? それとも、御社で確認する内容ですか?」。この一問で、営業側の宿題か相手の未回答かが分かれます。
聞き直すと、メモの量は減ります。相手も、自分がまだ答えることと、営業側から返ってくることを分けられます。
谷口さんは、聞き直しを使ってから、商談後の不安が減りました。書けなかった内容を思い出す必要がなくなり、三つのどこに入るかを確認できるようになったからです。
次回商談の入口にする一文
次回商談の入口では、次の一文から入ります。
「前回は〇〇がまだ未回答でした。今日はそこから一つ確認してもよいですか?」
〇〇には、相手の未回答を入れます。たとえば、「店長ごとの反応」「導入後の確認先」「初回利用者の不安」などです。相手の未回答から入ると、前回の商談と今回の商談がつながります。
次の商談で谷口さんがこの一文から入ると、担当者は「その前に一つ聞いていいですか?」と言って、店長へ配る資料の枚数を先に確認してきました。前回は在庫画面の説明を最後まで聞いていた担当者が、今度は自分から確認事項を出しています。前回の相手の言葉から入ると、資料を急いで開く必要がありません。
営業側の宿題がある時は、先に返します。「前回の宿題だった店長別の導入案を一枚にしました。そのうえで、まだ未回答だった店長ごとの反応を聞かせてください」。この順番なら、約束を守ったうえで次の質問に入れます。
メモを提案に変える順番
商談メモを提案に変える時も、次回行動、相手の未回答、営業側の宿題を崩しません。まず次回行動を決めます。次に相手の未回答を聞きます。最後に営業側の宿題を返します。
谷口さんは、提案資料の冒頭にも三つを入れました。「前回の次回行動」「相手の未回答」「営業側の宿題」です。資料の見出しにこのまま書く必要はありませんが、作る順番としては役に立ちます。
たとえば、次回行動は店長別の反応確認、相手の未回答は導入に乗り気でなかった店長の理由、営業側の宿題は導入案の一枚化です。この三つが見えれば、提案の中心は機能一覧の羅列ではなく、店長が動きやすくなる説明になります。
商談メモが多すぎる時ほど、全部を提案に入れたくなります。けれど、相手が次に決めるために必要なものは限られます。三つに分ければ、提案に入れるものと、残しておくだけのものを分けられます。
一週間後に読み返す時の見方
商談から一週間たつと、相手がどの言葉で言いよどんだかまでは残りません。谷口さんも、商談直後は覚えていた相手の迷いを、一週間後には思い出しにくくなっていました。だからこそ、時間がたっても見える形で残すことが大事です。
一週間後に読み返す時も、見る順番は変えません。次回行動、相手の未回答、営業側の宿題です。まず次回行動を見ます。次に相手の未回答を見ます。最後に営業側の宿題が返せる状態になっているかを見ます。
谷口さんは、以前ならメモの最初から読み直していました。すると、雑談や背景説明まで拾い直し、準備に時間がかかります。今は、三つの印だけを先に見ます。必要な時だけ、周辺のメモを読みます。
たとえば、次回行動に「導入に前向きだった店長の具体例から聞く」とあれば、商談前にその一問だけ声に出します。相手の未回答に「導入に乗り気でなかった店長の理由」とあれば、質問の順番をそこに合わせます。営業側の宿題に「店長別の導入案」とあれば、資料が返せる状態かを確認します。
この見方に変えると、メモを読み返す時間が短くなります。短くなるだけではありません。次回の最初の一問が決まるので、商談前の不安も減ります。
谷口さんは、商談の朝に長い準備をしなくなりました。三つの印を見て、次回行動を一つ声に出す。そこまでできれば、前回の話を受けた商談としてはじめられます。
さらに、谷口さんは商談前に声に出す印を一つだけに決めました。三つとも目は通しますが、口に出すのは丸を付けた次回行動だけです。そのうえで「今日の最初の一問は何か」と自分に問いかけます。この問いに答えられない時は、メモを読み直す量ではなく、次回行動の決め方を見直します。
最初の一問が決まれば、資料を開くタイミングも変わります。相手の未回答を一つ聞いてから資料を出すのか、営業側の宿題を返してから資料を見るのかが決まるからです。メモは、資料説明を早めるためではなく、相手の前回の迷いを受けてはじめるために使います。
営業Q&A
相手の発言は全部残しますか?
聞き漏れが怖くて全部を書きたくなる場面です。
回答
全部を残そうとしなくて構いません。次回行動、相手の未回答、営業側の宿題に関わる発言を優先します。その他の発言は、必要なら補足として残します。
商談中に書く手が止まりません。どう直せばよいですか?
書くことに集中しすぎて相手を見られない場面です。
回答
書く量を減らす前に、聞き直しを入れます。「これは御社で確認する内容ですか、こちらが返す内容ですか?」と聞けば、相手の未回答と営業側の宿題を分けられます。
最初の一問を決める三つの印
営業で商談メモが多すぎる時は、全部をきれいに整えようとせず、次回行動、相手の未回答、営業側の宿題に分けます。三つが見えると、次回商談の入口が作れます。
- 次の商談で最初にする次回行動
- この場では答えが出なかった相手の未回答
- こちらが調べて次回に返す営業側の宿題
次の商談後は、三分だけ使って三つに印を付けてください。長いメモを整える前に、次回の一問を決めれば、商談は続けやすくなります。
木村 守(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント)
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