営業プレゼンは資料を開く前に変えたい作業を聞く
資料を開く前に聞く作業の変化
営業プレゼンで資料を開くと、話す側は準備してきた順番を守りたくなります。表紙、会社概要、導入実績、機能説明、料金。流れがあるほど、相手の反応より資料の次のページに目が向きます。
藤本航平さん(仮名、産業用ソフトの導入商談を担当する営業担当者)も、以前は資料を丁寧に説明するほど商談が重くなると感じていました。相手はうなずきます。けれど、最後に「社内で検討します」と言われ、何を社内で見るのかが分からないまま終わっていました。
問題は資料の出来より、聞く順番にありました。藤本さんは、相手が変えたい作業を聞く前に資料を開いていたのです。相手が今どこで止まり、何を減らしたいのかが見えないまま説明すると、良い機能も相手の仕事に結びつきません。
営業プレゼンは、相手が変えたい作業を一緒に確かめる場です。資料はその後に使うと、確認に使えます。
先に聞く一言は、「今日の資料で何を知りたいですか」より「今の作業で、変えたいところはどこですか」です。この記事では、資料を開く前の確認でプレゼンを商談に近づける方法を解説します。
こんな人におすすめの記事です。
- 営業プレゼンで資料説明が長くなりやすい方
- 相手の反応は悪くないのに次回につながらない方
- 資料を使って次回の話を前に進めたい方
これから一つひとつ見ていきましょう。
資料説明に急ぐと見えないもの
藤本さんは、資料の1枚目を開いた瞬間から説明役になっていました。相手の業務に合わせて話しているつもりでも、実際には資料の順番に沿って言葉を選んでいました。
そのため、相手の言葉は短くなります。うなずきや短い感想があるので悪い商談には見えません。けれど、この返事だけでは、相手がどの作業を変えたいのかまでは分かりません。
営業プレゼンで見たい中心は、作業の変化です。入力時間を減らしたいのか。承認の待ち時間を短くしたいのか。転記ミスを減らしたいのか。同じ産業用ソフトでも、変えたい作業が違えば、強調するページも変わります。
ここを聞かないまま進むと、相手は資料の情報を持ち帰ります。営業側は説明を終えた気になります。しかし、相手の社内では「結局、どの作業が変わるのか」という話が出ます。
藤本さんが後から案件を見直すと、失注した商談ほど資料の感想は残っていました。けれど、入力、確認、承認のどこを変えたいのかは残っていませんでした。感想だけが残ると、次回の提案も同じ説明を繰り返します。
反対に、作業名が一つ残っている商談は、次回の約束が作りやすくなります。入力なら、現場が何回入力しているかを聞けます。確認なら、誰がどの時点で見ているかを聞けます。承認なら、止まっている人と時間を聞けます。資料を開く前の一問は、商談後の確認にもつながります。
藤本さんは、商談前の準備も変えました。資料の各ページに「このページは入力の話」「このページは確認の話」「このページは承認の話」と短くメモを付けました。そうしておくと、相手の答えに合わせて出すページを迷わなくなります。
準備の時点でページを三つに分けると、説明の順番に縛られにくくなります。相手が入力と答えたら、入力に関係するページだけを先に見せます。確認と答えたら、確認履歴や差し戻しのページから入ります。承認と答えたら、承認者の画面や通知の説明を先にします。資料を全部捨てず、使う順番を相手の作業に合わせるのです。
資料に先に印を付ける
藤本さんは、資料を作り直す前に、各ページへ短い印を付けました。入力の話に使うページには「入力」、確認の話に使うページには「確認」、承認の話に使うページには「承認」とメモします。
この準備をしておくと、商談中に相手が選んだ作業へすぐ合わせられます。入力と答えたら、入力に関係するページだけを先に見せます。確認と答えたら、確認履歴や差し戻しのページから入ります。承認と答えたら、承認者の画面や通知の説明を先にします。
大事なのは、すでにある資料を相手の作業名で探せるようにしておく点です。資料の順番で話す準備から、相手の答えでページを選ぶ準備へ変えます。
藤本さんは最初に「本日は資料を順に説明する前に、入力、確認、承認の中で変えたい作業を一つ確認してもよいですか」と聞きます。相手が一つ選べば、資料のどこから入るかが自然に決まります。
資料の順番を守るより、相手の作業の順番に合わせる方が、プレゼンは聞かれやすくなります。
私自身、営業の相談を聞く中で、資料の枚数を増やしても相手の返事が変わらない場面を何度も見てきました。足りなかったのは、資料を見る前の焦点でした。焦点が入力、確認、承認のどれかに合うだけで、同じページでも相手の見方は変わります。
便利ですねで止まる場面の直し方
藤本さんの商談で、顧客が資料を見ながら短い感想を返した場面がありました。以前なら、藤本さんは続けて別の機能を説明していました。
この日は返し方を変えました。
藤本さん「便利ですねと感じられたのですね。入力、確認、承認の中で、今の機能が一番近いのはどの作業ですか」
顧客「入力です。現場から上がってきた数字を入れ直す時間が長いです」
藤本さん「入力ですね。では、資料の中でも入力時間が変わる部分を先に見ます」
この会話では、短い感想をそのまま終わらせていません。入力、確認、承認の三つに戻し、顧客の言葉を作業名に結びつけています。
次に藤本さんは、資料の該当ページだけを見せました。
藤本さん「この画面では、現場から上がった数字を一度入力すれば、確認者にも同じ内容が見えます。入力時間を変えるなら、ここが先に見る箇所です」
顧客「それなら、今の二重入力は減りそうです」
顧客の返事は、最初の感想から「二重入力は減りそうです」に変わりました。営業プレゼンで欲しいのは、この変化です。良さの感想から一歩進み、自分の作業に引き寄せた返事が出ると、次の確認がしやすくなります。
説明を減らして確認を増やす
プレゼンを短くする目的は、情報を雑に削ることと違います。相手が変えたい作業に合わないページを後ろに回すことです。
藤本さんは、資料の全ページを話すことをやめました。最初に入力、確認、承認を聞き、相手が選んだ作業に関わるページを先に出します。その後で、相手が追加で知りたいと言ったページだけを補足しました。
すると、商談後の確認も変わりました。以前は「ご不明点があればご連絡ください」と送っていました。今は「入力時間を変える前提で、現場側の入力回数を次回確認しましょう」と送ります。
資料を多く見せても、相手が変えたい作業に当たっていなければ伝わりません。判断材料になるのは、相手の作業に当たったページです。
藤本さんは、説明を減らす時に一つだけ注意しました。資料を省く理由を営業側の都合にしません。「時間がないので飛ばします」より、「入力の話に関係するページを先に見ます」と伝えます。相手の作業に合わせていると分かれば、ページを飛ばしても雑な印象にはなりません。
また、資料の最後にある料金ページも、いきなり出さなくなりました。入力、確認、承認のどれを変えるかが決まってから料金を見ると、相手は金額だけを見ません。今の作業がどう変わるかと合わせて金額を見ます。ここまで進むと、プレゼンは商談の確認に変わります。
商談後の社内共有も変わります。藤本さんは日報に、説明したページ数より相手が選んだ作業名を書くようにしました。「入力を先に確認」「承認待ちを次回確認」のように残すと、次回の同行者にも商談の流れが伝わります。営業プレゼンの記録では、相手の作業がどう見えたかを残す方が使いやすくなります。
この記録があると、次回の冒頭も自然です。前回入力の話が出たなら、「今日は入力回数を確認してから画面を見ましょう」とはじめられます。前回承認の話が出たなら、承認者の画面から入れます。
相手も前回の続きとして聞けるため、商談の入り口が毎回の説明に戻りにくくなります。
確認の起点がそろうからです。
今日から使う一言
営業プレゼンの前に使う一言は、次の形です。
「資料を順に説明する前に、入力、確認、承認の中で、今回変えたい作業を一つ教えてください」
この一言は、相手を質問攻めにしません。資料を見る目的を合わせるだけです。相手が答えた作業を中心にすれば、資料は判断のしやすさで使えます。
藤本さんは、この聞き方に変えてから、商談後のメールで次回確認項目を書きやすくなりました。相手も「入力の件で社内に聞いてみます」と返すようになり、検討の中身が見えるようになりました。
資料を開く前の短い確認が、商談後の連絡文まで変えたのです。
営業Q&A
資料を最後まで説明しないと失礼になりませんか?
準備した資料を省くことに不安がある場面です。
回答
失礼にはなりません。相手が変えたい作業を先に聞き、その作業に関係する資料から見る方が、相手の時間を大切にできます。必要なページは後で補足すれば十分です。
相手が変えたい作業を答えられない時はどうしますか?
相手の困りごとがまだ曖昧な場面です。
回答
入力、確認、承認の三つを出し、「この中で一番時間がかかっているものはありますか」と聞きます。選択肢があると、相手は今の業務を思い出しやすくなります。
次回に使う冒頭確認
営業プレゼンでは、相手が変えたい作業を聞き、その作業に合わせて資料を使います。資料を開く前に入力、確認、承認を聞けば、説明は短くなり、判断材料は濃く残ります。
- 資料前に聞く、相手が変えたい作業
- 入力、確認、承認に分けるプレゼン準備
- 感想を作業の変化へつなげる返し方
木村 守(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント)
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