システム開発営業で見積前に利用者と手順を分ける
開発相談で先に分ける三語
システム開発営業では、相手から「こういう機能を作れますか」と聞かれます。ここで営業側がすぐ仕様や見積もりに入ると、相手が本当に困っている業務が見えないまま話が進みます。
要件定義前の商談では、作れるかどうかより先に、誰が使うのか、今どう処理しているのか、誰が決めるのかを聞きます。これを抜かすと、見積もりは早く出ても、後から画面数や承認範囲が増えやすくなります。
前田明子さん(仮名、中小企業向け受託システム開発業の一人社長)は、問い合わせ後の初回面談で機能一覧を聞きすぎていました。相手は「在庫管理を作りたい」と言いましたが、使う人は営業部と倉庫で分かれていました。システム開発営業では、要件定義前に利用者、現行手順、決裁者を分けます。
- 開発相談で機能一覧から聞き始めてしまう方
- 見積もり後に範囲追加が増えやすい方
- 要件定義前の営業面談を整えたい方
利用者、現行手順、決裁者
前田さんは、この記事の中核を利用者、現行手順、決裁者にしました。利用者は、完成後に毎日触る人です。現行手順は、今の作業の進み方です。決裁者は、費用や範囲を最終判断する人です。
この三語を先に分けると、開発相談は機能の数だけで進みません。相手が「在庫管理」と言っても、営業部が見る在庫と倉庫が見る在庫では画面が違います。現行手順が紙なのか表計算なのかでも、初回に聞く内容は変わります。
要件定義前の営業では、機能名を増やす前に、利用者、現行手順、決裁者の三語で相談の範囲をそろえます。
| 三語 | 商談で確かめること | 聞き方 |
|---|---|---|
| 利用者 | 毎日使う人 | 実際に入力するのはどなたですか |
| 現行手順 | 今の処理方法 | 今はどの順番で処理していますか |
| 決裁者 | 費用と範囲を決める人 | 最終的に範囲を見る方はどなたですか |
機能一覧で止まった商談
前田さんは以前、相手から聞いた機能をそのまま書き出していました。在庫登録、入出庫、アラート、月次集計、権限管理など、項目は増えます。けれど、その機能を誰が使うのかは曖昧でした。
相手は「倉庫の人が使います」と言いました。前田さんが「営業部は見ませんか」と聞くと、相手は「営業部も在庫を見たいです」と答えました。ここで、利用者が一つではないことが分かります。
機能一覧を増やすだけでは、商談は前に進んだように見えます。実際には、利用者、現行手順、決裁者が分かれていないため、見積もりの前提が足りません。
初回面談の聞き方
前田さんは、次の面談で「作りたい機能を全部聞く前に、利用者、現行手順、決裁者を分けてもよいでしょうか」と伝えました。相手は「はい、そこからお願いします」と答えました。
前田さんは「完成後に毎日入力するのは、営業部と倉庫のどちらですか」と聞きました。相手は「入力は倉庫、確認は営業部です」と答えました。
次に前田さんは「今はどの順番で在庫を確認していますか」と聞きました。相手は「紙で受けて、夕方に表計算へ入れています」と答えました。この時点で、現行手順が見えます。
見積前の判断分岐
システム開発営業の見積前には、三つの分岐があります。利用者が一人か複数か。現行手順が一つか部署ごとに違うか。決裁者が現場寄りか経営寄りかです。
利用者が複数なら、画面の見え方を分けます。現行手順が部署ごとに違うなら、先に共通手順を決めます。決裁者が経営寄りなら、費用だけでなく、現場の作業時間をどれだけ減らすかを説明できる形にします。
見積前の分岐を見れば、価格を出す前に、相手が社内で説明しにくい場所が分かります。
範囲追加が起きる理由
範囲追加は、相手が後から欲張ったから起きるとは限りません。初回面談で利用者、現行手順、決裁者を聞いていなかったために、後から本当の使い方が出てきます。
前田さんの案件でも、最初は倉庫だけの画面だと思っていました。ところが、営業部が外出先で在庫を見る話が出ました。さらに、決裁者はスマートフォンで数字だけ確認したいと言いました。
これは相手のわがままではありません。利用者、現行手順、決裁者が最初に分かれていなかった結果です。営業側が先に聞けば、範囲追加ではなく初回の前提として扱えます。
提案前に使う一文
前田さんは、提案前に次の一文を使いました。「今回の見積もりは、利用者が倉庫と営業部、現行手順が紙から表計算、決裁者が経営者という前提で作ります」と伝えました。
この一文があると、相手も前提を確認できます。もし違えば、その場で直せます。見積書を出した後に範囲が変わるより、提案前に前提をそろえる方が信頼につながります。
システム開発営業の提案前には、金額より先に、利用者、現行手順、決裁者の前提を言葉にします。
要件定義前のロープレ
前田さんは、機能名を聞いた後の返し方を練習しました。相手役が「在庫管理を作りたいです」と言ったら、前田さんは「在庫管理ですね。最初に、使う方と今の処理を分けて伺ってもよいでしょうか」と聞きます。
相手役が「倉庫で使います」と答えたら、前田さんは「倉庫の方が入力し、営業部の方は見るだけでしょうか」と聞きました。相手役は「営業部も修正します」と答えました。
このロープレでは、機能名を否定していません。作れるかどうかを急がず、利用者、現行手順、決裁者のどこから見るかを決めています。
決裁者に伝える材料
決裁者は、細かな機能名を全部読むとは限りません。前田さんは、決裁者向けに「誰の作業が減るのか」と「どの手順が変わるのか」を一文で伝えました。
たとえば、「倉庫の夕方入力を減らし、営業部が当日在庫を見られる仕組みです」と言います。ここには、利用者と現行手順が入っています。決裁者は、費用の前に判断する理由を持てます。
決裁者に伝える材料を作る時も、三語を変えません。利用者を「対象者」、現行手順を「業務フロー」、決裁者を「承認者」と途中で言い換えると、相手が社内で説明しにくくなります。
見積もり面談の確認順
見積もりを出す面談では、最初に金額を読むのではなく、前提を確認します。前田さんは「利用者、現行手順、決裁者の順に、今回の前提を確認します」と伝えました。
利用者が倉庫と営業部。現行手順が紙から表計算。決裁者が経営者。この三語を相手と読み合わせた後で、見積もり金額を出しました。
前提を読まずに金額を出すと、相手は高いか安いかだけで見ます。前提を先に読むと、金額が何に対するものかが分かります。
面談後の確認メール
面談後のメールでも、前田さんは機能一覧を長く書きませんでした。「本日は、利用者が倉庫と営業部、現行手順が紙から表計算、決裁者が経営者であることを確認しました」と書きます。
このメールなら、相手が社内に転送しても前提が分かります。開発内容の細部より、どの前提で見積もったかが伝わります。
面談後の確認メールは、機能の羅列ではなく、利用者、現行手順、決裁者の前提を短く残します。
利用者同席を頼む理由
前田さんは、次回面談に利用者の同席をお願いしました。ただし、「現場の方を呼んでください」とだけ言いません。相手には負担が増えるように聞こえるからです。
前田さんは「見積もりの前提をずらさないために、毎日入力する方から、今の現行手順を10分だけ伺いたいです」と伝えました。これなら、利用者、現行手順、決裁者の三語とつながります。
利用者が同席できない場合もあります。その時は、相手に「入力する方が一番困っている作業はどこですか」と聞きます。代理で聞く場合でも、現行手順を想像で埋めないことが大事です。
要望変更を受ける一文
初回面談の途中で、相手が新しい機能を思いつくこともあります。前田さんは、すぐ追加として受けず、「その機能は利用者、現行手順、決裁者のどこに関係しますか」と聞きました。
相手が「営業部も見たいからです」と答えたら、利用者の話です。相手が「今は紙で探すのが大変です」と答えたら、現行手順の話です。相手が「社長に説明したいです」と答えたら、決裁者の話です。要望を分類すると、見積もり前に扱うべきか、次フェーズで扱うべきかを分けられます。
営業側が急がない理由
システム開発営業では、早く見積もるほど親切に見えます。けれど、前提が足りない見積もりは、相手を迷わせます。相手は「後から増えるのでは」と不安になります。
前田さんは、見積もりを急がない理由を相手に伝えました。「後から範囲がずれないように、利用者、現行手順、決裁者だけ先にそろえます」と言います。
これは営業側の都合ではありません。相手が社内で説明できる見積もりにするためです。急がない理由が伝わると、相手も初回面談で話す意味を理解しやすくなります。
営業Q&A
システム開発営業では最初に機能を聞かない方がよいですか?
機能を聞くこと自体は問題ありません。ただ、機能名だけを集めると、誰がどう使うのかが見えにくくなります。
回答
最初に利用者、現行手順、決裁者を分けます。その後で機能を聞くと、見積もりの前提が相手にも営業側にも分かりやすくなります。
次の見積前に読む前提
システム開発営業では、要件定義前に利用者、現行手順、決裁者を分けます。前田さんのように、機能一覧より先に三語をそろえると、見積もりの範囲が相手にも伝わります。
次の開発相談では、最初に「使う方、今の処理、最終判断する方を分けてもよいでしょうか」と聞きましょう。作る機能の話に入る前に、見積もりの土台を一緒に確認できます。
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