営業で「そういう意味ではありません」と言われた後の聞き直しと提案の修正
食い違いを指摘された商談の続け方
お客様の話を聞いて提案したのに、「そういう意味ではありません」と返され、何と答えればよいか迷っていませんか? 説明を足したくなるところですが、その前に、どこを違って受け取ったのかを聞き直しましょう。
お客様から理解の誤りを指摘されたら、提案の説明を止め、相手が伝えたかった内容を聞きます。聞き直した内容は、その場の返答だけで済ませず、用意した資料や見積にも反映してください。うなずいて元の説明へ戻ると、誤った前提が提案に残ります。
こんな人におすすめの記事です。
- 商談で理解の誤りを指摘されると、返答に迷う営業担当者
- 聞き直した内容を、用意した提案にどう反映するか悩む方
- 相手の訂正を受け止める会話を練習したい方
これから一つひとつ見ていきましょう。
言い直してくれた相手への返答
理解が違うと指摘する発言は、営業側の受け取り方を直す言葉です。それだけで、商品が不要なのか、商談を続けたくないのかまでは分かりません。まずは相手の話と自分の理解の違いに目を向けましょう。
ここで「私も同じ意味で申し上げました」と返すと、どちらの説明が正しかったかという話になりがちです。お客様は自分の事情を伝えたいのに、営業側の言い分を聞く時間が増えてしまうでしょう。受け取り方の弁明を続けると、相手が言い直した内容を聞く機会を逃します。
「受け取り方が違っていました。すみません」と短く返し、続けて「どの部分を違って受け取っていたか、教えていただけますか?」と尋ねてください。相手が話し出したら、その説明が終わるまで聞きます。謝る言葉を何度も重ねるより、相手が言い直せるように待ちましょう。
私のレッスンでは、コミュニケーションを、お客様が思い描いている場面を共有することとして捉えています。自分の頭に浮かんだ場面が相手と違えば、質問で確かめましょう。指摘を受けた時にも、相手の話から理解しようとする姿勢は同じです。
図面印刷の相談で食い違った確認作業
大塚康平さん(仮名、工事図面の印刷を受注する法人営業担当)の架空の商談を見てみましょう。設計事務所の責任者から、図面を現場に渡すまでの手間について相談を受けています。ここからの会話は、聞き直しの方法を考えるために作った例です。
責任者「現場に渡す前の確認に時間がかかっています。」
大塚さん「印刷の仕上がりを確認する時間ですね。当社で用紙や印刷の状態を確かめてからお届けできます。」
責任者「そういう意味ではありません。どれが最新の図面なのかを、担当者に確かめる時間です。」
大塚さんは責任者の最初の発言を、印刷の仕上がりに関する相談として受け取っていました。しかし、責任者が気にしていたのは、印刷する前に最新版の図面を特定する作業だったのです。
きれいに印刷できると説明しても、最新版を特定する手間への答えにはなりません。この場面で、聞き直す場合の続きを考えてみます。
大塚さん「受け取り方が違っていました。すみません。最新版を確かめる作業について、今はどのように進めているか教えていただけますか?」
責任者「図面を描いた担当者に電話して、返事をもらってから印刷に回していますが、担当者が外出中だとその返事を待たなければなりません。」
大塚さん「描いた担当者から返事が来るまで、印刷を待っているのですね。その間、現場へはどう連絡されていますか?」
責任者「現場には、まだ渡せないと伝えています。いつ渡せるかを答えられないのが困るところです。」
聞き直すと、印刷の品質だけを提案していた時には分からなかった、現場への連絡の問題が見えてきます。ここで、最新版を管理する仕組みまで自社で提供できると約束するのは早計です。大塚さんが印刷会社として受け持てる範囲と、設計事務所で判断する範囲を分けて、提案を検討しましょう。
言い直された内容からの質問
相手が訂正してくれた後は、その内容から質問を続けます。大塚さんの例では、担当者の返事待ちという作業が出ていました。「返事待ちが大変なのですね」で終えると、いつ困ったのかが見えません。
使いたいのは「たとえば」という問いです。私のレッスンでも、お客様の言葉を具体化するために大切にしています。「たとえば、直近ではどの図面を渡す時に返事を待ちましたか?」と聞けば、相手が答えられる一場面に絞れるでしょう。
その場面を聞く際は、営業側の候補を次々と足さないようにします。「担当者が忙しいからですか? 図面が多いからですか? 保存場所の問題ですか?」と続けると、相手が話したかった事情より、こちらの予想が会話を占めてしまいます。具体例を尋ねた後は、相手が出来事を説明する時間を取ってください。
相手が使った言葉は、意味が分かる範囲でそのまま返しましょう。責任者が話した「担当者に確かめる時間」を、すぐに「情報管理を効率化する」へ言い換えると、誰に確かめる作業なのかが隠れます。専門用語でまとめるのは、相手と同じ場面を思い描けてからです。
また、訂正された箇所が一つ見つかっても、ほかの前提が合っているかは分かりません。最新版の図面を誰が決めるかが分かっても、確定したデータをいつ印刷会社へ送れるかは別の話です。提案に使う条件は、話のつながりに沿って尋ねていきましょう。
用意した資料に残る誤った前提
聞き直せたら、すでに用意した資料のどこを変えるかまで考えます。大塚さんが持参した提案書に「仕上がりの確認作業を減らす」と書いてあれば、それを今回の相談への解決策として説明し続けることはできません。相手の訂正を受けた後も、そのページを示したままでは話がかみ合わないでしょう。
大塚さんなら、「このページは印刷の仕上がりについて用意したものです。今うかがった最新版の確認作業については、社内で対応できる範囲を確かめてから提案し直します」と伝えます。資料の該当箇所を示せば、お客様も、どの説明を修正するのか分かるでしょう。
一方、印刷する用紙の種類や部数まで変わるとは限りません。相手の訂正が影響する部分を確かめ、合意済みの条件と区別して直しましょう。全面的に作り直すと決める前に、今回の相談について必要な修正を見極めてください。
見積を送った後に理解の誤りが分かった場合は、相手がその見積を社内で共有したかも尋ねます。共有済みなら、修正版を送る時に変更した箇所を伝え、古い見積を使わないよう依頼しましょう。修正前と修正後の資料が同時に使われると、社内の相談まで違う前提で進むおそれがあります。
自社の担当部署へ確認する時も、最初の解釈だけを伝えないようにしましょう。大塚さんの例では、印刷の品質に関する相談として引き継ぐと、担当部署が違う資料を準備してしまいます。お客様が言い直した内容と、それを受けて何を確認したいかを伝えてください。
訂正を受けた後まで続けるロープレ
理解を指摘されると、とっさに説明を足してしまう方は、訂正される場面をロープレに入れてみましょう。本番前の練習を、聞き直した後の返答まで続けます。受け取り方を直せるかを見る練習です。
営業役には「契約書類の準備について相談されている」と伝えます。お客様役は「書類の枚数より、社内の承認に時間がかかる」という事情を決めておきましょう。営業役が印刷や発送の説明をしたら、お客様役が理解を訂正する設定です。
営業役「必要な書類をまとめてお送りすれば、準備の時間を短くできそうですね。」
お客様役「それは違います。社内の承認を待つ時間について相談しています。」
営業役「私の受け取り方が違っていました。承認を待つ間、どの部署からの返事が必要になるのでしょうか?」
お客様役「今回は経理の確認待ちです。費用の内訳について、経理から質問が来ています。」
営業役「経理からは、具体的に何を尋ねられたのでしょうか?」
この後も、お客様役の返答を聞き、用意した説明資料をどう直すかまで続けてください。見ている人は、営業役が相手の説明を最後まで聞いたか、訂正前の話に戻っていないか、資料の変更箇所を伝えたかを確かめます。聞き直す一言を言えたかだけでなく、提案の前提を修正できたかまで練習しましょう。
営業Q&A
訂正する言葉が強かったり、商談後に違いが分かったりすると、その場の聞き直しとは別の迷いが出てきます。対応を分けて考えましょう。
強い口調で訂正されたらどう返せばよいですか?
説明を続けている途中で強い口調で訂正され、言葉に詰まってしまうという悩みです。
回答
まずは「説明を続けてしまい、すみません」と返し、相手が話せるように待ってください。返答の速さを取り戻そうとするより、伝えたかった内容を聞くことを優先します。相手が話を終えたところで、まだ分からない箇所を尋ねましょう。
商談後に理解の誤りに気づいたらどう伝えますか?
商談を終えて資料を作る途中で、お客様の発言を取り違えていたと気づいた営業担当者からの相談です。
回答
気づいた箇所を具体的に示して、相手に確認してください。「先ほどの確認作業を、私は印刷の仕上がりの確認として受け取りました。その理解で合っていますか?」と尋ねます。誤りがあれば、どの資料を修正していつ渡すかも伝えましょう。
解釈を書いた箇所で試す聞き直し
- 理解の誤りを認めた後の聞き直し
- 用意した資料と共有済みの見積の修正
- 訂正を受けた後まで続ける返答の練習
用意した提案に、お客様の発言を自分なりに解釈して書いた箇所はないか探してみましょう。見つかったら、その解釈が違っていたと指摘された場面を想定し、聞き直しから資料の修正を伝えるところまで、声に出して練習してください。
木村 守(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント)
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