価格で断られないための「価値提案」

価格で断られないための「価値提案」

背景と課題

営業で「価格が高い」と言われてしまう原因の多くは、実は“価格そのもの”ではありません。
本当の問題は「価値が伝わっていない」ことにあります。
では、どうすれば価格を超える信頼を築けるのか――。ここではその答えを具体的に解説します。

価格で断られるのは“価値”が伝わっていないから

受講生の方からよく聞くのが、「お客様が難色を示された時にうまく切り返しできなかった」という声です。
たとえば、話が進みそうだなと思ったら「いや、ちょっと考えるわ」と言われてしまう。
その時にどう食い止めるか――。つまり「ねじ伏せる」ではなく、自然に切り返せるかということです。

「時間がない」「お金がない」「他にも検討している」「相談する人がいる」など、理由はいろいろありますが、どれも背景には“想い”があります。
お客様が断る理由の裏には、必ずその人なりの事情や気持ちがある。
そこを聞いてあげることが、価値提案の第一歩です。

反論を切り返すのではなく、“根底の気持ち”を聞く

「瞬発的に切り返す」ことよりも大切なのは、相手の言葉の裏にある“気持ち”や“状況”を丁寧に聞くこと。

そしてその上で、
「もしその部分が解決できる方法があるとしたら、どうですか?」
と優しく投げかける。

そうすると、お客様は「それなら…」と前向きな姿勢に変わります。
押し返すのではなく、理解すること。これが本当の切り返しです。

たとえば「時間がない」と言われた時に「だからこそ短時間で!」と返すのは、上辺の反論。
大切なのは“その言葉の背景”を聞くことなんです。

ロープレで学ぶ「ダメな例」と「良い例」

【ダメな例】
木村:いかがでしょう。今からでも少しモデルルームを見ていただけたらと思うんですが。
お客様:いや、今日はちょっと一旦帰ろうかなと思ってまして。
木村:そうなんですね。ちなみに、なぜそう思われたんですか?
お客様:今聞いた話を一度整理しようかなと。
木村:なるほど、整理されたいんですね。でも見るのは無料ですし、見るだけでも情報が入りますよ?
お客様:いや、時間ももう遅いですし、今日は家で整理したいです。
木村:整理するためにも見られたらいいんですよ。

―――
このように、「見られたらいいんですよ」というのは事実でも、相手の気持ちを理解していません。
つまり“聞いていない”状態です。
「だからこそ見ましょう!」という押し方は、結局こちらの都合。
お客様からすれば「はめられそう」と感じてしまう。
説明中心の営業になってしまっているんですね。

【良い例】
木村:いかがでしょう。今からでも少しモデルルームをご覧になられますか?
お客様:いや、今日は一旦帰ろうかなと思ってます。
木村:そうなんですね。何か理由がございますか?
お客様:今日お話を聞いた内容を、一度家で整理したいんです。
木村:なるほど。どんなことを整理されたいですか?
お客様:そうですね、平屋がいいのか二階建てがいいのか、まだ整理できてなくて…。
木村:なるほど。どうなれば整理できそうですか?
お客様:もう少し具体的に、将来の生活イメージを考えてからですね。子どもたちや両親のこともあるので。
木村:よくわかりました。もし現場を見て、生活スタイルがよりリアルにイメージできるとしたらどうですか?
お客様:それはありがたいですね。
木村:そうですよね。現場を見ることで、自分の暮らし方がより鮮明になります。
決めるために見るのではなく、情報収集として見る。それで十分です。
むしろ、ご自宅は大切な場所ですから、しっかり比較して決めることが大事です。
私はその情報提供を喜びにしていますので、ぜひ気軽にご覧ください。
お客様:見るだけでも大丈夫ですか?
木村:もちろんです。見るだけでもOKです。私の方でもご協力させていただきます。では、よければ少しだけご案内しましょう。

―――
このように、“お客様の立場に立って解決する”という姿勢が大切です。
「なんとか話を進めたい」という営業側の思いではなく、
「お客様のために何ができるか」を一緒に考える立ち位置
つまり、立ち位置をお客様側に置くことが、信頼への第一歩です。

“価値提案”とは、価格を超える信頼のこと

お客様は、どんな状況でも「より良くしたい」という想いを持っています。
その想いを受け止め、協力する姿勢を示すことが信頼につながります。

こうしたやり取りを重ねると、“反論”そのものが減っていきます。
「この人なら大丈夫だ」と感じてもらえるようになる。
それが“価格を超える価値”です。

焦らず、相手の話を丁寧に聞き、共感し、質問してまた共感する。
その繰り返しの中で、相手の本音をつかんでいくことが大切です。

そして、「これならお役に立てる」と確信できた時に、
「もしこういう方法があったらどうですか?」と自然に提案していく。

それが、“価格で断られないための価値提案”です。
価格の前に伝えるべきは、「あなたのために考えている」という姿勢なのです。

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営業指導歴22年。1000件以上の顧客との商談経験。1000人以上の営業相談に応じてきた。ある経営者との出会いを機に営業ノウハウを体系化。元ニートの落ちこぼれ営業を最下位グループからたった1か月で全国300人中トップに一発逆転させた。営業経験・実績に基づいた、わかりやすい営業ノウハウ・セミナーでの解説に定評がある。

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