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営業で専門用語が多い時はお客様の普段の言葉に直す

専門語を普段の言葉に変える商談

商品に詳しい人ほど、商談中に専門用語が増えます。営業側は正しく伝えているつもりでも、お客様は言葉を追うだけで疲れてしまう場面もあります。

橋本拓也さん(仮名、産業用洗浄剤販売業)は、工場の購買担当者に洗浄成分や希釈倍率を細かく説明していました。担当者はうなずいていましたが、最後に「現場に伝えてみます」とだけ答えました。

橋本さんは、その返事を聞いても安心できませんでした。誰に何を伝えるのか、どの言葉なら現場が分かるのかを聞いていなかったからです。営業で専門用語が多い時は、説明を増やす前に、お客様が普段使う言葉を聞きます。

この記事では、専門用語で止まりやすい商談を、相手の普段の言葉、言い換える順番、提案書に残す一文から整理します。正確な説明より先に、相手が社内でそのまま話せる言葉を作ることが大切です。

この記事は、次のような場面に近い方向けです。

  • 商品知識はあるのに商談後の返事があいまいになりやすい方
  • 専門用語を減らしたいのに説明が長くなる方
  • お客様が社内で説明しやすい提案に変えたい方

詳しさが壁になる場面

橋本さんの商材は、性能を正しく説明する必要がありました。濃度、反応時間、対象素材、保管条件。どれも間違えると現場で困ります。だから橋本さんは、商談の前半から資料を開き、専門語を順番に話しました。

ところが、購買担当者が本当に困っていたのは、成分の細かい違いではありませんでした。現場の班長に「今の洗浄作業がどう楽になるのか」を伝えることでした。

担当者は途中で「要するに、作業時間が短くなるという理解でよいですか」と聞きました。橋本さんは「正確には、油分の分解が早くなります」と答えました。間違いではありませんが、担当者が社内で使える言葉から離れてしまいました。

専門用語は、相手が使える言葉に変わった時にはじめて営業の材料になります。 正しさを守るだけでは、相手の理解が進まない時もあります。

詳しい説明をやめるという話ではありません。正確さは守ります。ただし、どの用語をそのまま残し、どの説明を普段の言葉に直すかを相手と一緒に確認します。

専門語で止まりやすい言動

止まりやすい言動 相手が使いやすい入り方
成分名から説明する 現場で困る作業から聞く
資料の語句をそのまま読む 相手が社内で使う表現を聞く
正確さだけを優先する 誤解しない範囲で日常語に直す

この表で見たいのは、専門用語を消すためではありません。相手がどこで止まるかを見て、説明の入口を変えます。

橋本さんは次の訪問で、資料を開く前に「現場の方に伝える時、どの言い方なら通じやすいですか」と聞きました。担当者は「油汚れをこする時間が減る、なら伝わります」と答えました。

橋本さんは「油汚れをこする時間が減るのですね」と短く受けました。続けて「その時間が減ると助かるのは、朝の立ち上げ、昼の片づけ、終業前のどれについてですか?」と聞きました。担当者は「終業前です」と答えました。

ここで橋本さんは、成分説明にすぐ入りませんでした。終業前にどの作業が詰まるのかを聞き、相手が普段使う言葉をもう一つ増やしました。相手の言葉が増えるほど、提案は資料の説明から現場の相談に変わります。

普段の言葉を聞くロープレ

ロープレでは、橋本さんは最初の一言だけを変えました。以前は「本日は新しい洗浄剤の反応時間についてご説明します」と言っていました。

練習後は、「今日は、現場の方に伝える時の言い方から確認させてください」と切り出しました。相手役が「専門的な話は現場で伝えにくいです」と答えたら、橋本さんは「伝えにくいのですね」と受けます。

その後で、橋本さんは「現場では、作業時間、におい、手荒れのどれが一番話題になりますか?」と聞きました。相手役は「時間の短縮です」と答えました。

本番では、担当者が「終業前の洗浄が長いと残業になります」と話しました。橋本さんは「終業前の洗浄が長いと残業になるのですね」とそのまま引用しました。

この一文を聞いた後、橋本さんは資料の順番を変えました。成分名のページから入らず、終業前の作業時間に関係する事例を先に出しました。担当者は「これなら班長に話せます」と答えました。

ロープレの質問文と本番の実例は、同じ文を繰り返していません。練習では言い方を聞く型を見せ、本番では相手が話した「終業前の洗浄が長いと残業になる」という言葉を中心にしました。

営業側が専門用語に強い時ほど、相手が分からない顔をしても説明を足したくなります。けれど、そこで説明を足すと、相手はさらに聞き役に回ります。質問を一つ入れると、相手が社内で使う言葉を教えてくれます。

橋本さんは、商談後の提案書にも相手の言葉を入れました。見出しは「終業前の洗浄時間を短くするための提案」です。本文では、専門語を補足として短く添え、最初の約束を普段の言葉にしました。

この提案書を読んだ担当者は、「班長に見せる順番が分かりました」と答えました。橋本さんは、専門知識を減らしたのではありません。相手が説明しやすい順番に直したのです。

説明を直す時の注意点

正確さを残す範囲

普段の言葉に直す時も、事実を変えてはいけません。橋本さんは、成分名を全部消さず、本文の後半に短く残しました。先に現場の言葉で目的を示し、その後で専門的な条件を補いました。

相手が「作業時間が短くなる」と言った時も、橋本さんは保証のようには書きませんでした。試験条件、使用量、現場で確認する手順を添え、誤解しない形に整えました。

社内で読まれる順番

提案書は、営業担当者だけが読むものではありません。現場の班長、購買担当、上司が読むこともあります。読む人ごとに知りたい順番が違います。

橋本さんは、担当者に「班長が最初に見るなら、作業時間と安全性のどちらを先に置くと話しやすいですか」と聞きました。担当者は「作業時間です」と答えました。

注意したいのは、分かりやすさを理由に話を大きくしすぎる点です。 相手の普段の言葉に直す時ほど、事実の範囲を守ります。

普段の言葉は、専門性を薄めるためのものではありません。相手が社内で考える場所に専門性を届けるための言い方です。橋本さんは、社内で伝わる言葉を聞いたことで、資料の読まれ方まで変えられました。

商談後に残す一文

橋本さんは、商談後のメールにも同じ考え方を使いました。以前は、成分名と使用条件を並べた案内を送っていました。相手は保管してくれていたかもしれませんが、社内で回しやすい文面にはなっていませんでした。

今回は、冒頭に「終業前の洗浄時間を短くするため、現場で試しやすい条件を整理しました」と書きました。担当者が話した終業前の作業と洗浄に関する内容を、社内で回しやすく短くした一文です。

その下に、専門的な条件を二つだけ置きました。使用量と確認時間です。細かな成分説明は、必要になった時に読めるよう後半に回しました。

担当者は、そのメールを班長に転送しました。班長からは「終業前なら試す意味があります」と返ってきました。橋本さんが最初から専門語を並べていた時には出なかった反応です。

この変化は、文章をやさしくしただけで起きたわけではありません。相手が現場に伝えたい表現を聞き、その表現を商談後の一文に残したからです。

営業の説明は、商談中だけで完結しません。相手が社内で転送するメール、上司に見せる資料、現場で口にする短い言い方まで続きます。そこまで見て言葉を直すと、専門知識は相手の行動に結びつきやすくなります。

次回商談で橋本さんは、「前回の『終業前の洗浄時間』という表現は、現場で伝わりましたか」と聞きました。担当者は「伝わりました。次は安全面も聞かれそうです」と答えました。

ここで橋本さんは、安全面の専門説明を始める前に、「安全面という言葉だと、手荒れ、保管、においのどれが一番気になりますか」と聞きました。普段の言葉を聞く流れは、次の商談にも続いたのです。

担当者は「手荒れです」と答えました。橋本さんは、その言葉を受けてから保護具と使用後の洗い流し方を説明しました。専門語を先に置かなくても、相手が気にする言葉を聞けば、必要な説明は自然に選べます。

営業Q&A

専門用語を使わないと軽く見られませんか?

詳しい商品ほど、用語を減らすことに不安が出る場面です。

回答

専門用語を全部なくす必要はありません。最初に相手が普段使う言葉で目的をそろえ、その後で必要な用語を短く補います。正確さと伝わりやすさを分けて扱いましょう。

相手が普段の言葉を出してくれない時はどう聞けばよいですか?

担当者自身も現場に伝える言い方で迷っている時です。

回答

「現場で一番話題になるのは何ですか?」と聞くと入りやすいです。作業時間、手間、確認相手など、相手が答えやすい選択肢を置くと普段の言葉が出やすくなります。

社内説明に使える提案

営業で専門用語が多い時の直し方を解説しました。詳しさを見せるより、相手が社内で使える言葉を聞き、その言葉から資料の順番を作ることが鍵です。

  • 現場で困る作業から聞く入口
  • 相手が普段使う表現の確認
  • 正確さを残した提案書の順番

次の商談では、資料を開く前に、現場の方に説明する場面で通じやすい言い方を尋ねてください。その答えを提案書の最初に置くと、専門知識がお客様の考える材料として使われやすくなります。

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営業指導歴22年。1000件以上の顧客との商談経験。1000人以上の営業相談に応じてきた。ある経営者との出会いを機に営業ノウハウを体系化。元ニートの落ちこぼれ営業を最下位グループからたった1か月で全国300人中トップに一発逆転させた。営業経験・実績に基づいた、わかりやすい営業ノウハウ・セミナーでの解説に定評がある。

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