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営業で高いと言われた時は金額より迷いの起点を聞く

値引き前に分ける迷い

商談の終盤で「高いですね」と言われると、営業側はすぐに値引き、分割、機能の追加説明を考えます。けれど、相手のその一言がどこから出たのかを聞かないまま返すと、会話は価格だけに寄ります。

西村圭介さん(仮名、業務用浄水器の入替提案を担当する営業担当者)は、見積を出した直後の反応で慌てていました。飲食店の店長から金額の迷いを示されると、フィルター寿命や水質の説明を足し、最後に少し値引き余地を示していました。

ところが店長が気にしていたのは、月額の支払いだけではありませんでした。既存の浄水器との差なのか、スタッフの手間なのか、近くの店舗が使っている機器なのか。そこが分からないまま説明していたのです。

営業で高いと言われた時は、金額の大小より、相手の迷いの起点を先に聞きます。 中身が分かると、値引きで返す場面か、判断材料をそろえる場面かが見えます。

この記事では、見積後に高いと感じられた商談で、価格反論をどう受け、どの対象から確認すればよいかを解説します。値段を下げる前に、相手の頭の中の見方を聞く話です。

この記事は、次のような営業場面に役立ちます。

  • 見積後に高いと言われると説明が増える方
  • 値引き以外の返し方を決めたい方
  • 価格反論の奥にある迷いの起点を聞けるようになりたい方

高いですねの受け止め方

最初に避けたいのは、金額の反応を断り文句として決めつけることです。相手は断りたいというより、判断に使う材料が足りないまま金額だけを見ていることもあります。

西村さんは以前、「確かに安くはありません」と答えてから、機能説明を足していました。この返し方だと、営業側が価格を守りたいように見えます。相手が聞いてほしいのは、価格そのものより、なぜその金額になるのかを自分の状況に合わせて考える時間です。

その一言が出たら、まず一拍置きます。そのうえで「どの部分が一番重く見えますか」と聞きます。この一文なら、相手を否定せず、迷いの中身を出してもらえます。

迷いの見分け方

価格反論には、よく出る迷いの起点があります。現在使っているもの、他社の見積、手間や時間、社内で説明する相手です。反応がどこから来ているかによって、次に聞く内容は変わります。

西村さんの店長は、最初は金額の違和感だけを示しました。そこで西村さんが「現在の浄水器との差ですか? それとも、毎月の手間ですか?」と聞くと、店長は「正直、今の機器でも水は出ていますから」と答えました。

この答えで、店長は他社見積より既存設備を見ていると分かりました。ならば、安い見積の話をするより、今の機器で困っている場面を聞く方が商談に合います。

迷いの枝分かれ

金額の反応の奥には、少なくとも二つの迷いがあります。一つは支払いの重さです。もう一つは、払った後に変化を実感できるかという不安です。

この二つを混ぜると、値引きしても商談が進みません。支払いの重さが問題なら、支払い時期や月額の見え方を確認します。変化への不安が問題なら、今の手間、クレーム、味のばらつき、清掃時間を聞きます。

価格の話を続ける前に、支払いの重さなのか、変化への不安なのかを分けましょう。 分けるだけで、説明の方向が変わります。

迷いの種類 先に聞くこと
支払いが重たい いつ、どの単位で負担に見えるか
変化が見えない 今の作業やクレームで困っている場面
社内で話しにくい 誰にどの言葉で説明しにくいか

金額を守る前の短い確認

西村さんは、次の商談で返し方を一つに絞りました。金額を守る説明を始める前に、迷いの中身を聞く短い確認です。

西村さん「高いと感じられたのですね。現在の浄水器との差で見ると、どこが一番気になりますか?」
店長「今の機器との差です」
西村さん「現在の浄水器ですね。では、一番手間がかかっている作業はどこですか」

この短い確認にすると、会話は値引き交渉で止まりません。店長は最初の反応を否定されず、今の機器で困っている場面を話せます。

西村さんは、この返し方だけをロープレで練習しました。長い切り返しを覚える練習ではありません。相手の迷いを聞き、答えを受けてから次の質問に進む練習です。現場で急に金額の話が出ても、この順番だけ体に入っていれば慌てにくくなります。

値引きより先の確認

値引きが悪いわけではありません。ただし、高く見えた理由が分からないまま下げると、相手はまだ決めきれません。安くなっても、既存設備との差が分からないからです。

西村さんは、店長から「フィルター交換のたびにスタッフが手を止めます」と聞きました。そこで初めて、月額差と交換時間を並べました。金額を守る説明というより、店長が見ている対象をそろえる説明です。

この時、西村さんは最初の反応を「価格課題」と言い換えませんでした。最後まで、相手が高いと感じた対象を扱いました。相手の言葉を勝手に専門語に変えないことで、会話のずれが減ります。

社内説明に使う言葉

法人商談では、目の前の担当者が納得しても、社内で話す時に止まることがあります。そこで金額の反応が出たら、担当者が社内で何と言われそうかも聞きます。

店長は「オーナーには、今でも問題ないと言われそうです」と話しました。西村さんは「今でも問題ないと言われそうなのですね」と受け、現在の交換作業、クレーム対応、閉店後の清掃時間を一枚に並べました。

ここで使う言葉は、商品の専門語より、担当者が社内で言いやすい言葉です。たとえば「味の安定」「交換作業の短縮」「閉店後の確認時間」のように、店の仕事に直結する言い方にします。

価格反論後の提案順

迷いの中身を聞いた後は、提案順も変えます。最初に総額を読み上げず、相手が気にしていた対象から見ます。既存設備を見ているなら、交換作業から始めます。他社見積なら、同じ条件と違う条件を分けます。

西村さんは、見積書の上から説明するのをやめました。店長が話した「今の機器でも水は出ていますから」という言葉を入口にして、現在の作業時間から確認しました。その後で、月額、交換頻度、故障時の対応を見る順番にしました。

順番を変えると、相手は自分の疑問から聞けます。営業側も、値引きで早く決着させようとする焦りから離れられます。価格反論は、金額の話だけで終える必要はありません。

さらに西村さんは、店長が見ていた対象を紙の端に一語だけ書きました。社内に出す資料ではなく、自分が説明の順番を間違えないための確認です。現在の浄水器、交換作業、清掃時間。この順で見ると、月額差の意味が後からついてきます。

店長がオーナーに話す時も、同じ順番が使えました。最初に新しい機器の性能を話すと、オーナーは「今ので十分では」と返しやすくなります。先に交換作業と清掃時間を話すと、今の機器で起きている負担から聞いてもらえます。

金額が高く見える商談では、営業側が自分の正しさを証明したくなります。けれど、正しさを並べるほど、相手は自分の感覚を否定されたように感じます。西村さんは、店長の迷いを聞いてから、自分の説明を短くしました。

短くした分、質問は増えました。「交換作業は誰がしていますか」「清掃時間は閉店後ですか」「月末に水質で困った日はありますか」。この質問に答えるうちに、店長は金額だけを見ていた状態から、自分の店の作業に照らして判断する状態に変わりました。

価格反論を受けた後の営業は、相手を説得する場面に見えます。実務では、相手の判断表を一緒に作る場面です。相手がどの対象を見ているのか、その対象で足りない材料は何か、次回までに何を確かめればよいか。ここまで分かれば、無理に今日決めさせなくても次に進めます。次回の宿題も、値引き検討だけに偏らなくなります。次回までに見る資料を一つだけ決めると、店長も社内で相談しやすくなります。

商談の最後に、西村さんは「今日見たのは、今の機器と比べた時の交換作業と清掃時間です」とまとめました。店長は「そこならオーナーにも話せます」と答えました。この一言が出れば、次回は値段の再説明だけでなく、社内説明の材料づくりに進めます。見積書の数字も、店の作業と並べて読める状態になります。

次に高いと言われたら、値引き額を考える前に、どの部分が重く見えたのかを聞きましょう。 その答えから説明の順番を決めると、価格の会話が判断材料の会話に変わります。

営業Q&A

高いと言われたらすぐ値引きしてはいけませんか?

見積を出した直後に相手の表情が固くなり、価格だけを見ている場面です。

回答

値引きの前に、どの部分が重く見えたのかを聞きましょう。今のもの、他社、社内予算、手間のどれを見ているかで返し方が変わります。

迷いの起点を聞いても答えてくれない時はどうしますか?

相手が「うーん」とだけ答え、価格の話が止まりそうな場面です。

回答

選択肢を二つに絞ります。「今のものと比べてですか。それとも、毎月の負担として見た時ですか」と聞くと、相手は答えやすくなります。

説明順を決める最初の聞き取り

見積後の価格反応は、断り文句と決めつけないことが大切です。相手の迷いの起点を聞くと、次に出す説明が決まります。

  • 高いですねの受け止め方
  • 支払いと変化への不安の分離
  • 迷いの起点から始める提案順

見積後に高いと言われた場面では、値引き額を出す前に、相手がどこを重く見たのかを聞きます。迷いの起点が出てから、説明の順番を決めます。

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営業指導歴22年。1000件以上の顧客との商談経験。1000人以上の営業相談に応じてきた。ある経営者との出会いを機に営業ノウハウを体系化。元ニートの落ちこぼれ営業を最下位グループからたった1か月で全国300人中トップに一発逆転させた。営業経験・実績に基づいた、わかりやすい営業ノウハウ・セミナーでの解説に定評がある。

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