営業で取引先の担当者が替わったら前任者との約束と今の業務を確認する
担当変更後の商談で確かめたい約束と利用状況
取引先から「担当が替わりました」と連絡が来た時、前任者との話をどこから伝えればよいでしょうか? 契約書や過去のメールを順番に読み上げても、新しい担当者が今知りたいことに答えられるとは限りません。反対に、前任者との約束を省くと、納品日や連絡方法の食い違いが残ります。
最初に前任者と決めた事実を短く示し、今もその条件で困らないかを新しい担当者に聞きます。担当が替わったことだけを理由に、従来の約束を営業側で勝手に変えることはできません。この記事では、引き継ぎ直後の確認と、変更が必要になった時の伝え方を扱います。
こんな人におすすめの記事です。
- 取引先の担当変更後、何から話せばよいか迷う方
- 前任者との約束が新しい担当者に伝わっているか不安な方
- 既存のお客様への営業で、同じ説明を繰り返してしまう方
これから一つひとつ見ていきましょう。
担当変更の連絡を受けた時の確認
引き継ぎの連絡を受けたら、まず相手が何を担当することになったのかを聞きます。発注、納品の受け取り、請求書の確認を一人が担うとは限りません。「今後の発注はどなたが担当されますか?」と聞けば、連絡先を誰に替えるべきかが分かります。
その後、前任者と決めたことを営業側の記録で確認します。見るのは契約条件だけではありません。納品する曜日、注文の締切、欠品した時に連絡する相手など、実際のやり取りで守ってきた約束もあります。ただし、以前の担当者との会話を覚えているだけで「決まっています」と言い切らず、メールや注文書など、何を根拠にしているかを確かめましょう。
記録が残っていない約束は、確定事項のように伝えず、「以前はこのように対応していましたが、今後も同じ方法でよいでしょうか?」と確認します。営業側の記憶だけを根拠に、相手に判断を迫る必要はありません。逆に、記録がないからといって以前の対応を黙ってやめれば、納品の現場で困る人が出ます。分かっていることと確認中のことを分けて話します。
私はレッスンで、約束を守ること、売った後もお客様の役に立っているかを確かめることを伝えています。担当変更後も、商品を最初から説明し直す前に、守るべき約束と現在の使われ方を確かめることからはじめられます。新任の担当者には、前任者がどんな理由でその条件を選んだかまで引き継がれていないかもしれません。
前任者から納品日を選んだ理由まで聞いているなら、「現在の納品日は店内で受け取りやすいと、前のご担当者から伺いました」と伝えます。そのうえで、新しい担当者には今も受け取りやすいかを聞きます。以前の理由と今の予定が違っていても、どちらかを間違いとして扱う必要はありません。
納品曜日だけを引き継いだ架空事例
藤原直樹さん(仮名、店舗向けタオルの定期配送を担当)の架空事例を考えます。美容室では、以前の店長と相談して、使用済みタオルの回収と新しいタオルの納品を毎週火曜日にしていました。火曜日は比較的予約が少なく、スタッフが受け取りを確認しやすいという説明を受けていたからです。
店長が替わり、新しい店長から「タオルは今までどおりでお願いします」と連絡が来ました。藤原さんが「承知しました」だけで終えず、「現在は火曜日に回収と納品をしています。受け取りを担当する方も、これまでと同じでしょうか?」と尋ねると、新しい店長は、火曜日には受け取りを担当していたスタッフが休むことがある、と答えました。
この時点で、火曜日の配送を変更すると決めるのは早いでしょう。タオルの使用量や保管場所が変わらなければ、火曜日のままでよいかもしれません。一方、受け取りの人がいない週があるなら、置き場所と確認方法を決める必要があります。藤原さんは新しい店長に、受け取れない週がどのくらいあるか、誰が納品数を確認するかを聞きました。
新しい店長は「火曜日にスタッフが一人もいないわけではありません。納品数の確認だけ、別の人に頼むことになります」と答えました。そこで藤原さんは、配送曜日は維持し、確認するスタッフの名前と連絡先を後日知らせてもらうことにしました。変わるのは、納品数を確認する人です。前任者の約束をそのまま伝えたうえで、今の店内で誰が受け取るかを聞いたから、相談が必要な点を一つに絞れました。
担当変更で確かめたいのは、過去の約束を知っているかどうかだけでなく、新しい担当者のもとでもその約束を守れるかどうかです。
事実、理由、現在の状況を分けた聞き方
前任者とのやり取りを一度に説明すると、新しい担当者は何が決定事項で、何が当時の事情だったのか分かりにくくなります。そこで、話す内容を三つに分けます。
- 事実として決まっている納品日や数量
- 前任者がその条件を選んだ理由
- 現在の担当者と店舗で変わったこと
藤原さんの例なら、事実は「毎週火曜日に回収と納品」です。理由は「予約が少なく、スタッフが受け取りを確認しやすかったこと」。現在の状況は「火曜日には受け取りを担当していたスタッフが休むことがある」点です。この三つを分ければ、火曜日の配送自体に問題があるのか、確認担当だけを替えればよいのかを一緒に判断できます。
まず「火曜日の配送は、今も使いやすいですか?」と聞き、相手の答えに応じて「受け取りを確認する方はどなたですか?」と続けます。最初から「配送曜日を変えましょうか?」と提案すると、担当者が替わっただけなのに、必要のない配送変更まで話題にしてしまいます。
あなたの商談でも、引き継いだ条件のうち、相手が困っているものはどれでしょうか? 担当する人や作業が変わった条件から聞きます。
火曜日に受け取れなくなった場合の会話例
先ほどの架空事例では、火曜日の配送を続けられました。ここでは別の状況を考えます。新しい店長から「火曜日は店を閉めることになりました」と言われた場合、曜日変更をその場で確約する前に、回収と納品の両方を受けられる日を聞きます。
藤原さん「火曜日はお店を閉めるのですね。タオルを回収し、新しいタオルを受け取れる曜日はいつですか?」
新しい店長「水曜日ならスタッフがいます。ただ、開店前には誰もいません」
藤原さん「水曜日の開店後ですね。配送できる時間を社内で確認してから、変更できるかご連絡します」
新しい店長「分かりました。開店後の時間でお願いします」
藤原さんは水曜日の配送を約束せず、「水曜日の開店後ですね」と新しい店長の条件をまとめてから、配送側が対応できるかを社内で確かめる、と伝えています。以前の約束を変える必要が出た時は、相手の希望と営業側の回答を区別するのです。対応できると分かったら、新しい曜日と開始日を双方で確認します。
確認後に送る連絡の内容
口頭で話した後は、決まったことを短いメールにまとめます。藤原さんなら、配送曜日は火曜日のまま、納品数の確認担当の名前と連絡先は新しい店長から後日知らせてもらう、と書けます。まだ担当者名が決まっていないので、「確認担当は追ってご連絡いただく」と区別しましょう。決まっていないことまで決定事項として書かないためです。
「今までどおり」で済ませないことも大切です。前任者にとっては通じる言葉でも、新しい担当者には何が今までどおりなのか分かりません。曜日、回収と納品の両方を行うことなど、今回確認した項目を具体的に書きます。ただし、相手が確認していない契約条件を大量に貼り付けると、どこに返事が必要なのか見失います。
返事が必要な点は、文末に一つだけ明示します。「確認担当の方のお名前が決まりましたら、お知らせください」と書けば、新しい店長は何を返せばよいか迷いません。曜日を確認した返事がすでにあるのに、同じ質問をもう一度メールに書くと、相手には先ほどの会話を聞いていなかったように映ります。聞いた答えを使って、次に必要なことを確認しましょう。
変更が必要になった時は、変更前と変更後を分けて書きます。たとえば「現在は火曜日。10月から水曜日へ変更を希望」という相談なら、開始日、受け取り担当、注文の締切も確かめます。営業側が対応できるかを社内で確認する前に、変更が確定したように書かないでください。
営業Q&A
前任者との約束を新しい担当者が知らない時はどうしますか?
前任者と決めた条件を伝えたところ、新しい担当者から「その件は聞いていません」と言われました。
回答
「聞いていないのですか?」と責めず、営業側が確認できる記録を示します。いつ、誰と、何を決めたかを短く伝え、新しい担当者に今の業務でも支障がないかを聞きましょう。契約書にある条件と、その後の運用で相談した条件は、根拠も扱いも違うので、分けて説明します。
新しい担当者から条件を全部変えたいと言われたらどうしますか?
引き継ぎの直後に、条件の見直しをまとめて求められた時の迷いです。
回答
どの条件で困っているかを一つずつ聞きます。配送日、数量、請求方法はそれぞれ確認する相手も準備も違うでしょう。相手が変えたい理由を聞いたうえで、社内で対応可否を確かめ、確定できる条件だけを返事に書きます。
次の連絡で確かめること
担当変更の連絡が来たら、過去の約束を一つ選び、「今もこの条件で困りませんか?」と聞き、その答えから、維持する条件と相談が必要な条件を分けます。
- 前任者と決めた条件の記録
- 新しい担当者のもとで変わった業務
- 確定した条件だけを具体的に書いた連絡
条件を一度に変えようと焦ると、守るべき約束まで見失います。まずは、相手の仕事に関わる条件を一つ聞いてみましょう。
木村 守(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント)
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