営業中にお客様がメモを取りはじめたら、説明を区切って気になる点を聞く
相手が書き留めたところから商談を続ける
商品の説明をしている途中で、お客様が手元のノートに何かを書きはじめました。営業側は、話が伝わったと思って次のページへ進みたくなるかもしれません。けれども、相手が何を書いたかは、こちらには分かりません。後で確認したい疑問を書いたのかもしれませんし、社内で伝える数字を控えたのかもしれません。
お客様がメモを取ったら、説明をいったん区切り、どの点を確かめたいのかを聞いてみましょう。書く手が止まるまで待つことと、書いた内容を勝手に推測しないことが大切です。
こんな人におすすめの記事です。
- 説明の途中で相手がメモを取りはじめると、話し続けてよいか迷う方
- 資料を最後まで説明したのに、相手の疑問が残っていた経験のある方
- 商談中に相手が気にした数字や条件を確かめたい方
これから一つひとつ見ていきましょう。
メモを取る理由の違い
お客様がメモを取るのは、資料の一行が自分の仕事と関係したからかもしれません。ただし、その動きだけで「興味をもった」「納得した」とは判断できません。気になったからこそ、後で別の人に確認したい場合もあります。営業側が話し続ければ、その場で聞けた疑問を見逃します。
たとえば、資料の「保守対応は平日」という行でペンが動いたとします。相手は平日に連絡できると安心したのかもしれません。一方で、土日に故障した時を心配している可能性もあります。同じ一行を見ていても、相手が考えていることは二通り以上あります。書いた内容をのぞき込んだり、「休日が気になりますよね」と決めつけたりせず、言葉で聞きます。
「いま書き留められたところで、確認しておきたい点はありますか?」と尋ねれば、相手が話すかどうかを選べます。「後で社内に伝えるために控えています」という答えなら、その数字の条件を短く補えます。「まだ分からないので書いています」という答えなら、どの言葉が分かりにくかったかを聞き直せます。
資料を見た後には、どう感じたかをお客様に尋ねます。メモを取る動きは、その問いを挟む機会です。ただ、相手が書いている最中に質問を重ねれば、書くことと答えることを同時に求めてしまいます。まず、相手が顔を上げるまで待ちましょう。
保守契約の説明中に店長がメモを取った架空事例
福田祥子さん(仮名、厨房機器の保守契約を提案する営業担当)の架空事例です。福田さんは、飲食店の店長に冷蔵庫の保守契約を案内しています。店長は、故障時の連絡先が書かれたページを見たところで、手元のノートに書きはじめました。福田さんがそのまま次の料金表を説明すると、店長はノートを見たまま「すみません、さっきの受付時間をもう一度」と聞き返します。
この場面を変えるなら、福田さんは店長が書き終えるまで資料をめくりません。顔が上がってから「受付時間のところで、確認したいことはありますか?」と聞きます。店長が「土曜の営業中に止まったら、どこに電話すればいいのかを書いていました」と答えたなら、気になっていたのは土曜の連絡方法です。福田さんは契約書に記載された土曜の受付条件を確かめ、その場で確認できる範囲を伝えます。記載がない場合は、対応できると約束せず、会社に確認することを伝えます。
書き留めた理由を本人に聞けば、料金表へ進む前に、相手が知りたい条件を確かめられます。
店長が「社内に報告するために受付時間を控えています」と答えた場合は、話の進め方が変わります。今度は報告先の人が判断するための記録です。福田さんは「報告する方は、受付時間のほかに何を知りたいでしょうか?」と聞けます。店長が挙げた項目だけを確かめ、必要な資料を渡します。相手のメモを見ただけで、店長の心配事と社内報告の内容を同じものと決めないのです。
説明を区切る一言と資料の開き方
説明を止めるには、一文を言い終え、相手のペンが止まるのを待ちます。相手が顔を上げたら、今見ている行に絞って問いかけます。「ここまで大丈夫ですか?」では、分からない人も「大丈夫です」と答えやすくなります。「どの点を控えておきたいと思われましたか?」なら、相手の考えを聞けます。
相手が「この数字をあとで比べます」と答えた時は、何と比べるのかを尋ねます。資料の月額と他社の年額をそのまま比べれば、対象期間が違います。サービスに含まれる作業も違うかもしれません。相手が知りたいのが月々の支払いなのか、故障時に追加料金が出る条件なのかで、開くページは変わります。数字を説明する前に、数字の意味をそろえます。
相手が「ここは後で読みます」と答えたなら、その意思を尊重します。営業側は該当ページに印を付けて渡し、今日の商談で先に確認したいことを聞きます。聞く目的は、相手が何に時間を使いたいかを確かめることです。メモを取る人を急かさず、話したくないことまで尋ねないようにします。
資料を開く順番も、相手の答えに合わせます。私のレッスンでは、相手が解決したいことに関係する一ページを示すよう伝えています。そのページに相手がメモを取ったなら、さらに資料を増やす前に感想を聞きます。そこに興味・関心があれば理由を、引っかかりがあれば条件を聞く。相手の答えを受けてから、必要な部分だけ説明すればよいのです。
短い会話で確かめる相手の関心
次のやり取りは、先ほどの架空事例で、店長が料金の数字をメモした場合のロープレです。特定の契約条件や実際の商談を再現したものではありません。
福田さん「いま見ている数字で、気になる点はありますか?」
店長「月額だけを書きました。今払っている費用と比べたいです」
福田さん「今の費用と比べるのですね。比べる時に、月々の支払いと、追加でかかる費用のどちらを先に見たいですか?」
店長「追加でかかる費用です。故障時にいくら出るかが気になります」
この会話なら、次に開くのは、故障時に追加費用が発生する条件を示した箇所です。条件が資料だけでは分からなければ、分からない点を明示して社内で確認します。相手の「月額だけを書きました」という言葉を、契約したいという意思表示に変えて受け取らないことも大切です。相手は今の費用と比べる準備をしているだけです。
一方で、「社内で使う数字なので控えました」と言われたら、月額の比較を深める必要はないかもしれません。社内で説明するために、保守対象の機器の台数や契約期間も要るかを聞きます。相手がメモを取ったという同じ動きからはじまっても、答えによって続ける会話が変わります。相手が書き留めた理由を聞いてから、次の資料を開きます。
メモを見て決めつけやすい三つの反応
相手が書いている姿を見ると、営業側にはいくつかの反応が出ます。どれも悪意からではありませんが、次の会話が噛み合わなくなる原因です。
- 「納得しているはず」と、次のページへ進む反応
- 「分からなかったはず」と、同じ説明を長く繰り返す反応
- 「価格を気にしたはず」と、頼まれる前に値引きを話す反応
最初の反応では、相手が質問する時間を失います。二つ目では、分かっていた部分まで説明され、聞きたい点が後回しにされます。三つ目では、価格とは無関係の受付条件を気にしていた相手に、営業側の都合で値段の話をはじめてしまいます。三つの反応に共通するのは、メモの理由を相手に聞いていないことです。
「いま控えられたのは、あとで比べるためですか? それとも、ここで確認したいことがありますか?」と二択にしてもよいでしょう。ただし、相手の答えがその二つに当てはまらない場合もあります。相手が「自分の担当に説明するためです」と言えば、その答えを受けて話を続けます。二択にしたからといって、どちらかへ答えを誘導しないようにします。
相手が何も答えず資料を読み続けている時は、すぐに次の問いを重ねません。ページを読む時間を取り、顔が上がってから「どのように感じられましたか?」と聞きます。相手が書き、読み、考えている間は、営業側も話すのを待ちます。相手が資料を読んだ後の言葉に、次の説明で扱うべき点が表れます。
営業Q&A
メモの内容をその場で尋ねてもよいですか?
説明中にお客様が長くメモを取っています。書いている内容を聞くと、手元を見ていたと思われないか心配です。
回答
ノートをのぞき込まず、資料のどの点を確かめたいかを聞きます。書き終わってから「今の箇所で、補足したほうがよいところはありますか?」と尋ねれば、話すかどうかは相手が決められます。「後で読み返すだけです」と言われたら、その場では続きを急がず、相手がページを見終えるまで待ちましょう。
時間が短い商談でも説明を止めますか?
お客様から終了時刻を先に聞いています。説明を区切ると、伝える予定の項目が残りそうです。
回答
時間が短い時こそ、相手が控えた箇所を聞きます。「残りの時間では、この点と予定していた次の項目のどちらを先に見ましょうか?」と尋ねれば、話す順を相手と決められます。予定していた資料を全部読むことより、相手が判断に使う条件を誤らずに伝えることを優先します。残った項目は、必要なら商談後に資料で渡します。
メモの理由で変わる資料の見せ方
お客様が同じ料金欄を書き留めても、今の契約と費用を比べたい人と、社内の担当者に金額を伝えたい人では、知りたいことが違います。前者には料金の内訳や契約期間が要ります。後者には、誰がどこまで対応する契約なのかも伝わる資料が役立ちます。
福田さんの事例でも、店長が何を書いていたかは、聞くまで分かりません。料金表へ進む前に理由を聞けば、土曜の連絡方法を気にしているのか社内報告のためなのかが分かり、開くページを選べます。メモという動作だけでは、必要な説明は決まりません。相手の言葉を聞いてから、開く資料を選びます。
- 書き留めた理由の確認
- 理由によって変わる、開くページと補足の内容
- 相手が顔を上げるまでの待ち時間
木村 守(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント)
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