営業で忙しいと言われたら今止まる仕事を先に聞く
忙しい相手に残す短い用件
「今、忙しいので」と言われると、営業側は焦ります。短く説明した方がよいのか、日を改めた方がよいのか、すぐ判断しにくい場面です。ここで用件だけを急いで話すと、相手はさらに身構えます。
忙しい相手に必要なのは、長い説明ではありません。相手の時間を奪わず、今どの仕事が止まると困るのかを聞く姿勢です。 忙しいという言葉を断り文句だけで受け取ると、商談はそこで終わります。仕事の詰まりを一つ聞ければ、次に話す理由が見えます。
杉本航さん(仮名、オフィス消耗品販売業の一人社長)は、架空のオフィス消耗品販売業の相談をもとに、総務担当者への訪問を見直しました。杉本さんは以前、忙しいと言われるたびに「3分だけ」と言って資料説明を急いでいました。担当者は聞いてくれましたが、次回の約束にはつながりませんでした。
この記事では、営業で忙しいと言われた時に、相手の仕事を尊重しながら次の会話を作る聞き方を整理します。忙しい相手に残すべきものは説明の短縮版ではなく、相手の仕事に関係する一問です。
次のような方に向けた内容です。
- 忙しいと言われた直後に用件を急いで話してしまう方
- 短時間で相手の状況を聞く言葉を持ちたい方
- 次回訪問の理由を自然に作りたい方
忙しい相手に説明を急ぐ失敗
忙しいと言われた時、営業側は相手に迷惑をかけたくないと思います。その気持ち自体は自然です。ただ、そこで「では要点だけ」と言って説明をはじめると、相手にとっては要点であっても割り込みです。相手は今の仕事を止めて聞く理由をまだ持っていません。
杉本さんは、コピー用紙や封筒、備品補充の提案で総務担当者を訪ねました。担当者は「月末処理で今は手が離せません」と言いました。杉本さんは「3分だけ、価格改定の件です」と返しました。担当者は「資料だけ置いてください」と答えました。
この会話で止まったのは価格の説明ではありません。担当者が今どの処理で手を離せないのかを、杉本さんが聞けていなかった点です。月末処理の中身は、請求確認なのか、在庫棚卸なのか、備品発注なのか。中身によって、次に届ける情報は変わります。
忙しいという言葉は、相手の仕事が詰まっている合図です。 断りと決めつける前に、どの仕事が止まると困るのかを一つ聞きます。ここを聞くと、相手は営業側が自分の時間を尊重していると感じやすくなります。
今止まる仕事を聞く三つの角度
忙しい相手に聞く角度は、時間、担当、影響の三つに分けられます。ただし、三つを毎回順番に並べる必要はありません。相手の言葉から一つ選び、短く聞きます。
時間が詰まる理由
月末処理で忙しいなら、何の締め切りが近いのかを聞きます。「今日中に止まると困る作業は、請求確認、在庫確認、発注確認のどれについてですか?」と聞くと、相手は答えやすくなります。
杉本さんがこの聞き方に変えると、担当者は「在庫確認です。棚卸が終わらないと発注数が決まりません」と答えました。ここで、価格表より先に棚卸後の発注数を話す流れが見えました。
誰の作業が止まるのか
忙しいのが担当者本人だけとは限りません。上司の承認待ち、現場からの回収待ち、経理との確認待ちもあります。相手の作業相手を聞くと、次に渡す材料が具体的になります。
杉本さんは「総務の中で、今いちばん確認待ちになっている方はどなたですか?」と聞きました。担当者は「各部署から消耗品の残数が戻っていません」と答えました。そこで杉本さんは、部署別に残数だけを書ける短い確認欄を提案しました。
止まった時の影響
忙しい理由を聞く時は、相手を追い詰めない言い方にします。「それが遅れると、明日困るのは発注、配布、請求のどれについてですか?」と聞けば、相手は影響を選べます。
担当者が「発注が遅れます」と答えたら、営業側の話す内容は価格の細部より納品日と在庫確保です。相手が困る影響から入ると、短い説明でも用件が通りやすくなります。
総務担当者との短いやり取り
杉本さんは次の訪問で、担当者に「月末処理で手が離せないのですね」と言いました。担当者は「はい。棚卸の数字がまだそろっていません」と答えました。杉本さんはすぐ資料を広げず、「今日止まると困るのは、発注数、承認、納品日のどれについてですか?」と聞きました。
担当者は「発注数です。各部署から戻らないので」と答えました。杉本さんは「各部署から戻らないのですね」と短く受けました。そのうえで、「では今日は価格の話を長くせず、部署ごとに残数を書ける一覧だけ置きます」と伝えました。
このやり取りで、担当者の反応は変わりました。担当者は「それなら助かります。来週なら発注数が見えます」と言いました。杉本さんは、来週の午前に在庫数がそろうかを聞く約束を作れました。
忙しい相手に話す時は、こちらの用件を短くする前に、相手の今の仕事を短く聞きます。 相手の作業が見えると、営業側がその日に置く資料も、次回聞くことも自然に決まります。
急がせる言い方と仕事を尊重する言い方
| 急がせる言い方 | 仕事を尊重する言い方 |
|---|---|
| 「3分だけ聞いてください」 | 「今の作業に関係する点だけ伺ってもよいですか」 |
| 「資料だけでも見てください」 | 「来週見やすい形にして置いていきます」 |
| 「すぐ終わります」 | 「今日は棚卸に関係する話だけにします」 |
「3分だけ」は営業側の都合です。相手が本当に3分なら空けられるのか、3分でも今は苦しいのかは分かりません。短くする姿勢は大切ですが、相手の仕事を聞かずに時間だけを指定すると、こちらの都合に見えます。
仕事を尊重する言い方では、相手の今を先に置きます。作業に関係する点だけ確認したいと伝えると、相手は断るか答えるかを選べます。答えてくれたら、そこに合わせて用件を一つだけ置きます。
忙しい相手に、その場で全部の判断を求めないでください。 今日聞くこと、今日置くもの、次回確認することを分けます。これで、相手の負担を増やさずに次の会話を作れます。
杉本さんは、資料を置く時にも相手の言葉を入れました。「各部署から戻らない残数を確認する一覧です」と伝えたのです。担当者は自分の仕事に関係する資料だと分かり、後で見返す理由を持てました。
次回につながる一問
忙しいと言われた時に使いやすい一問は、「今の作業で、今日中に止めたくないものはどれですか?」です。相手が答えたら、その作業に関係する資料や確認だけを残します。相手が答えられない時は、選択肢を出します。
選択肢は、相手の業務に合わせます。総務なら発注、承認、納品日。経理なら請求、支払い、締め日。現場責任者なら人員、作業時間、引き継ぎです。述語につながる形で聞けば、質問は自然になります。
答えを聞いた後は、すぐ提案に入らず「では今日はそこに関係する一枚だけ置きます」と伝えます。これで相手は、今の仕事を中断せずに済みます。営業側も、次回に何を確認するかが見えます。
杉本さんは、来週の連絡で「発注数がそろったかだけ伺います」と伝えました。催促ではなく、前回の仕事の続きを聞く連絡になりました。忙しい相手との商談では、相手の仕事を一つ聞いた人だけが、次の会話の入口を持てます。
この時、杉本さんは新商品の説明を足しませんでした。担当者が欲しかったのは、社内で確認できる順番だったからです。営業側が焦って説明を増やすと、相手の忙しさはまた戻ります。忙しいと言われた時ほど、相手の作業が一つ進むかを見ます。
さらに杉本さんは、社内で共有しやすいように、部署別の残数一覧に空欄を三つだけ残しました。部署名、残数、補充が必要な日です。担当者は「これなら各部署に聞けます」と言いました。営業側が作ったのは詳しい提案書ではありません。担当者の今の仕事を前に進めるための短い確認用紙です。
この一枚があると、次回の会話は価格の話だけになりません。杉本さんは「残数が戻った部署から、先に不足しそうな品目を見ます」と伝えました。担当者は発注の順番を考えやすくなり、杉本さんも在庫と納品日を先に確認できました。
あなたも次に忙しいと言われたら、用件を一気に縮める前に、相手の今の作業を聞いてください。その答えをもとに、今日は何を置き、次回何を聞くかを分けると、商談は切れにくくなります。
営業Q&A
忙しい相手にはすぐ日を改めた方がよいですか?
その場で話すと迷惑に見えそうな時の判断です。
回答
すぐ引く日もあります。ただ、日を改める前に、次回何を話せばよいかだけ聞きます。「今止まっている作業だけ伺って、次回はそこに合わせます」と伝えれば、短い確認にできます。
3分だけという言い方は使わない方がよいですか?
短く終える意思を伝えたい時の言い換えです。
回答
時間を短くする意思は伝えて構いません。ただ、相手の状況を聞かずに3分と決めると営業側の都合に見えます。棚卸に関係する話だけに絞るなど、相手の仕事に合わせて範囲を示す方が自然です。
今日置く一枚を決める会話
営業で忙しいと言われた時の聞き方を解説しました。相手の時間を奪わず、今止まる仕事を聞けば、次回に話す理由が作れます。
- 今止まる仕事の確認
- 誰の作業が止まるかの確認
- 次回に聞く一つの用件
次の商談で忙しいと言われたら、今の作業で今日中に止めたくないものを聞いてください。答えに合わせて今日置く一枚を決めると、短い会話でも次につながります。
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