ご質問ご回答Q&A

営業同行で話せない時は商談前に役割を一つ決める

商談前に持つ観察役

商談中、資料だけを握ったまま終わる。営業同行では、この失敗がよく起きます。隣で聞いている時間が長くなると、同行した意味がなかったように感じます。けれども、同行先で急にうまく話そうとすると、かえって会話の流れを止めてしまいます。

営業同行で見るべきなのは、話した量だけではありません。商談前に自分の役割を一つ決めておくと、話せない時間も学びに変えられます。 たとえば、相手が困りごとを話した瞬間だけ拾う。資料を開く前の相手の表情だけ見る。最後の次回確認だけ一文で補う。役割を絞るほど、同行先で動きやすくなります。

柴田悠真さん(仮名、法人向け勤怠管理ソフト販売業の一人社長)は、架空の相談例では初回デモに営業経験の浅いスタッフを同行させました。スタッフは準備した機能説明を言えずに落ち込みましたが、商談後に見直すと、相手が何度も口にした言葉を一番近くで聞いていました。

この記事では、営業同行で話せない時に、商談前に決めたい役割と、同行後に見るべき場面を整理します。同行は発言テストではなく、相手の言葉を横で観察する練習です。 次の同行で何をすればよいかを、具体的な場面で見ていきましょう。

次のような方におすすめの記事です。

  • 営業同行で発言できず気まずさだけが残る方
  • 同行後に何を学べばよいか分からない方
  • 先輩の商談を自分の次回行動へつなげたい方

同行中に話せなくなる理由

同行中に話せなくなる人は、準備不足だけで止まっているわけではありません。多くの場合、その同行で自分が何を担当するのかが決まっていません。全部を学ぼうとすると、挨拶、雑談、ヒアリング、資料説明、価格提示、次回確認まで一度に見ようとしてしまいます。すると、目の前の相手の言葉を聞く余裕がなくなります。

同行する側が一番つらいのは、発言のタイミングを探しているうちに商談が進む時間です。『ここで入っていいのか』『先輩の話を止めてしまわないか』と考えるほど、言葉は出にくくなります。だからこそ、商談前に役割を一つだけ決めます。

役割は大きなものでなくて構いません。相手が最初に困りごとを話したら、その言葉を短く繰り返す。資料を開く前に、相手がどのページへ興味を示したかを見る。最後に、次回までに確認する一点を聞く。一つの役割なら、商談の流れを壊さずに参加できます。

柴田さんの同行でも、スタッフは最初から説明を任されていませんでした。ところが本人は、説明できなかったことだけを失敗だと思っていました。商談後に確認すると、相手が月末の打刻漏れについて三回話していたことに気づいていました。そこを聞けていたなら、同行の価値は十分にあります。

同行前に役割を決めると、先輩側も助けやすくなります。『今日は最後の確認だけお願いします』と共有しておけば、先輩は終盤で自然に話を振れます。同行者も、どこで入ればよいかを待ち続けなくて済みます。これは新人だけでなく、一人社長が外部パートナーを連れて商談へ入る時にも使えます。

商談前に決める一つの役割

同行前に決める役割は、話す役、見る役、聞き返す役のどれかに絞ります。三つ全部をやろうとすると、また動けなくなります。次のどれか一つに絞るだけで、同行中の不安はかなり減ります。

相手の困り言葉を拾う役

一つ目は、相手が自然に出した困り言葉を拾う役です。たとえば、相手が「月末に確認が集中します」と言いました。その時に、すぐ機能説明へ入るのではなく、「月末に集中するのですね」と短く受けます。これだけで相手は続けて話しやすくなります。

同行する人がこの役を担うなら、商談中に長い説明は不要です。聞こえた言葉を一つ選び、短く繰り返します。営業同行で話せない人ほど、長く話す役より短く受ける役からはじめる方が現場に入りやすいです。

資料前の反応を見る役

二つ目は、資料を開く前の反応を見る役です。営業側は資料の順番に意識が向きますが、相手は資料を開く前から迷いを見せています。腕を組む、社内の担当者を見る、費用の話になると表情が硬くなる。こうした変化は、説明している本人より隣にいる人の方が気づきやすいです。

ここで大事なのは、見た変化を商談中にすぐ指摘しない姿勢です。商談後に、どの場面で相手の反応が変わったかを共有します。反応を見る役なら、話せなかった時間も観察として残ります。

次回確認を一文で補う役

三つ目は、最後に次回確認を一文だけ補う役です。商談の終盤で、先輩が次回日程を決めたあとに、「次回までに、月末の確認作業を誰が見ているかだけ伺ってもよいですか?」と聞きます。長い提案ではなく、次回までの確認を一つだけ添える形です。

この役は、同行者が発言しやすい場面を作れます。話の途中に割り込む必要がなく、最後に確認の一文を置くだけだからです。営業同行の発言練習としても、相手の判断材料を増やす行動としても使いやすいです。

勤怠管理ソフト商談の短い会話

柴田さんの商談では、相手の総務担当者が「打刻漏れが月末にまとまるのが困る」と言いました。柴田さんはすぐ説明へ進まず、「月末にまとまるのが一番困るのですね」と聞きました。担当者は「そうです。確認する人が決まっていないので、毎回こちらに戻ってきます」と答えました。

同行していたスタッフは、その後の機能説明ではほとんど話しませんでした。けれども終盤で、「次回までに、打刻漏れを最初に見る方だけ確認しておけばよいでしょうか?」と聞きました。担当者は「それなら課長に確認しておきます」と答えました。

この一文で、次回の提案で大事なのは、月末確認の流れに合わせて組み立てることです。スタッフが長く話したわけではありません。相手の言葉を聞き、最後に確認先を一つ置いただけです。営業同行の価値は、商談を奪うことではなく、相手の言葉から次の一点を見つけることにあります。

商談後、柴田さんはスタッフに『どの言葉が一番残っていますか?』と聞きました。スタッフは「月末に打刻漏れがまとまる話です」と答えました。柴田さんは、その言葉を次回提案の冒頭に置くように伝えました。機能名から話すより、相手が残した言葉から話す方が、次回の会話は入りやすくなります。

話せない同行で避けたい動き

止まりやすい同行 前に進む同行
商談中ずっと発言の機会を探す 商談前に観察する場面を一つ決める
説明できなかったことだけを反省する 相手が何度も話した言葉を確認する
同行後に感想だけで終える 次回に聞く一文を一つ作る

話せない同行で一番避けたいのは、商談中ずっと自分の出番を探す動きです。出番を探している時ほど、相手の言葉は耳に入りにくくなります。同行の目的を発言数に置くと、商談の流れを見失います。

もう一つ避けたいのは、同行後に『緊張しました』『勉強になりました』だけで終える流れです。感想は悪くありませんが、次回の行動に変わりにくいです。相手が何を困っていたのか、自分なら最後に何を聞けたのか、そこまで見てはじめて同行が次の商談へつながります。

柴田さんは、同行後にスタッフへ三つだけ聞きました。相手が何度も使った言葉は何か。先輩が説明を止めた場面はどこか。自分なら最後に何を一文で聞くか。この三項目なら、次回の同行前にもすぐ確認できます。

この振り返りをすると、次の同行で見る場所が変わります。前回は言葉を拾う役、次回は資料前の反応を見る役、その次は最後の確認を一文で補う役。毎回一つだけ変えれば、同行は練習の積み重ねになります。いきなり一人で商談を任される前に、横で見る力と短く聞く力を育てられます。

同行後に作る次回の一文

同行後は、長い反省会より次回の一文を作る方が実務に残ります。たとえば、勤怠管理ソフトの商談なら、「月末にまとまる確認を、最初に見る方はどなたですか?」という一文です。相手の言葉をそのまま含めるので、営業側の勝手な解釈になりにくいです。

一文を作る時は、相手が話した言葉、まだ決まっていない人、次回までに確認する内容の順で考えます。ここで別の言葉に言い換えすぎると、商談で聞いた温度が消えます。担当者が月末の打刻漏れを困りごととして話したなら、その言葉を短く使います。

次回の一文は、完璧な営業トークでなくて構いません。むしろ短い方が使えます。同行で話せなかった人が次に試すなら、最後の確認だけを担当してください。そこで一度でも相手が答えてくれれば、次の同行では会話の入り方が少し見えます。

営業同行は、先輩の商談を横で見るだけの日ではありません。自分が次回使う一文を取り出す日です。この目的に変えると、話せなかった時間にも意味が出てきます。

営業Q&A

営業同行で一度も話せなかった日は失敗ですか?

同行後に、発言できなかったことだけが気になる日があります。

回答

失敗とは限りません。相手が何度も使った言葉、先輩が話を止めた場面、次回聞ける一文が残っていれば学びはあります。次の同行では、その中から一つだけ担当してください。

先輩の商談中に発言してよいタイミングはどこですか?

途中で入ると流れを壊しそうで不安になる人は多いです。

回答

最初は終盤の次回確認が入りやすいです。商談の途中で割り込むより、最後に「次回までに一つだけ確認してもよいですか?」と添える方が、相手にも先輩にも自然です。

次回に聞く一文の準備

営業同行で話せない時の役割決めを解説しました。発言量だけを見てしまうと、同行の学びは狭くなります。

  • 商談前に話す役、見る役、聞き返す役のどれか一つ
  • 相手が何度も使った言葉の記録
  • 同行後に作る次回確認の一文

次の営業同行では、全部を吸収しようとせず、相手の困り言葉を一つ拾う役だけ決めてください。そこから次回の一文を作ると、話せなかった同行も自分の商談練習に変わります。

The following two tabs change content below.
営業指導歴22年。1000件以上の顧客との商談経験。1000人以上の営業相談に応じてきた。ある経営者との出会いを機に営業ノウハウを体系化。元ニートの落ちこぼれ営業を最下位グループからたった1か月で全国300人中トップに一発逆転させた。営業経験・実績に基づいた、わかりやすい営業ノウハウ・セミナーでの解説に定評がある。

最新記事 by 木村まもる(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント) (全て見る)

 
営業適正