商談中にお客様が時計を見たら、話せる時間を尋ねる
相手のしぐさを見た時の予定の尋ね方
商談中にお客様が腕時計を見ると、説明に飽きたのか、別の予定があるのかと考えてしまいます。聞けないまま、早口で説明を続けた経験はありませんか? 時計を見た理由は、しぐさだけでは分かりません。
お客様が時計を見たら、話を区切って、何時までお話しできるかを尋ねます。答えてもらった時刻に合わせて、扱う話題を選び直しましょう。説明の途中でも、予定を確かめてから続きを話せます。
こんな人におすすめの記事です。
- 話が伝わっているか気になり、説明を増やしてしまう時
- 終了時刻を聞くと商談が終わりそうで、ためらう場面
- 相手のしぐさから気持ちを読もうとする癖
これから一つひとつ見ていきましょう。
時計を見た理由の決めつけ
時計を見る動作には、いろいろな理由が考えられます。この後の会議が気になる、従業員との約束の時刻を確かめたい、単に時間を見ただけ。商品に興味がないと結論を出すには、情報が足りないのです。
営業側が焦ると、相手の答えを待つ間が短くなり、声も速くなります。言葉では気遣っていても、資料をめくりながら説明を足せば、お客様は予定を伝えるきっかけをつかめません。急いでいるかもしれない相手に、説明を重ねて時間を延ばさないようにしましょう。
私のレッスンで重視しているのは、声や表情を通して、相手の話を受け止めていると伝えることです。予定を尋ねる場面にも同じ考えを使えます。口では都合を聞きながら、資料を指す手だけが忙しく動いていたら、営業側が話を続けたい気持ちばかり伝わるでしょう。
まずは話している一文を終え、資料から顔を上げます。相手の顔を見て、普段の速さで予定を聞く。質問をした後は、お客様の返答を待ちましょう。笑顔を作ったり、必要以上に申し訳なさそうな表情をしたりするより、答えを聞く姿勢を保ちます。
清掃の相談中に気づいた店長の予定
岡田拓也さん(仮名、飲食店の床清掃を請け負う営業担当)の架空の商談を考えてみましょう。店長から、床の清掃方法について相談を受けています。岡田さんが作業手順を説明している途中で、店長が腕時計を見ました。
岡田さんは、説明が退屈なのだろうと考え、仕上がりの写真を追加で見せようとします。しかし、店長が時間を気にした理由はまだ聞いていません。写真を見せたところで、店長の予定は分からないままです。
ここで岡田さんが一度話を区切り、予定を聞く場合の会話を見てみましょう。
岡田さん「ご予定を確認してもよろしいですか? 今日は何時までお話しできますか?」
店長「あと5分で、従業員との打ち合わせがあります。」
岡田さん「承知しました。この5分で確認しておきたいことはありますか?」
店長「閉店後の片づけが終わってから、清掃に入れるかを聞きたいです。」
岡田さんがこの答えを聞けば、清掃後の見た目よりも、作業を頼める時間帯を店長が気にしていると分かります。写真の説明を続ける代わりに、閉店後の片づけが終わる時刻と、自社の作業担当者が対応できるかを確かめましょう。
ただし、その場で作業担当者の予定まで分からなければ、対応可能と約束はできません。店長から片づけの終了時刻を聞き、岡田さんが社内で確かめる内容を伝えて、打ち合わせに間に合うよう商談を終えます。この例で確認できるのは店長の希望であり、清掃の受注が決まったわけではありません。
返答しやすい終了時刻の聞き方
「お忙しいですよね?」と聞くと、忙しいという営業側の予想を先に示します。お客様は気を遣って、そのまま話を続けてよいと答えるかもしれません。予定を確かめたいなら、何時まで話せるかを尋ねた方が、その後の話す量を決められます。
最初に面談時間を決めていても、途中で予定が変わるかもしれません。約束した時間がまだあるという理由だけで話を続けず、今もその時刻まで話してよいかを聞きましょう。あなたが守るのは、相手が現時点で使える時間です。
終了時刻を聞いたら、その答えに合わせて説明する内容も変えます。午後2時15分までと聞いたのに、午後2時20分まで話しては気遣いが伝わりません。移動や片づけがあるなら、その時間も含めて何時に面談を終えるかを合わせておきます。
時計を見たこと自体を話題にしなくても構いません。「何度も時計をご覧になっていますね」と指摘すると、相手の動作を見張っていたように聞こえるおそれがあります。確かめたいのは予定ですから、時計を見た回数を説明に入れず、短く尋ねれば十分です。
自分にも退出の予定があるなら、お客様の都合と一緒に伝えましょう。自分は長く話せないのに、お客様だけに終了時刻を決めてもらうと、後で打ち切る理由を説明することになります。双方が話せる時間を合わせ、その範囲で扱える内容を選ぶのです。
使える時間に合わせた話題の選び直し
お客様がこの後も話せると言った場合は、途中だった話題を確かめてから再開します。営業側の資料の順番だけを頼りに説明を続けると、相手が聞きたかったこととずれるかもしれません。話していた内容について、ほかに聞いておきたい点があるかを尋ねます。
終了時刻が近い場合は、今の時間でお客様が知りたいことを優先しましょう。商品概要をすべて話す前提をやめ、返答を聞いて説明の範囲を決めます。資料が途中でも、相手が確かめたい点を扱って終えればよいのです。
すでに退出の時刻なら、その場で新しい質問を足さずに終了しましょう。鞄を持ち、立ち上がっている相手に、契約の判断まで求めるのは無理があります。連絡方法が決まっているなら、未回答の内容を後で伝えると短く説明してください。
予定を聞いた後に「あとひとつだけ」を繰り返すと、相手は終了時刻を答えても話が終わらないと感じます。お客様が伝えた時刻までに話を終えることも、予定を尊重する気遣いです。延長が必要なら、理由と所要時間を示し、改めて了承を得るのです。
予定を尋ねる声と返答を待つ間
言葉を丁寧にしても、質問のすぐ後に説明を再開すると、お客様は答えにくくなります。予定を聞く声と、資料を説明する声を続けてしまわず、質問を言い終えたら口を閉じて待ちましょう。
例えば、相手が予定を思い出そうとしている時に、あなたが先に「大丈夫そうですね」と判断すると、答える機会を奪います。時計や予定表を見る動作があれば、その確認が終わるまで待てばよいのです。沈黙を説明で埋めようとしなくて構いません。
私が表現の練習で伝えているのは、相手を急かさず、聞き入っていると分かる受け止め方です。予定を答えてもらったら、落ち着いた声で了承を伝えます。相手の返答に合わせてゆっくりうなずき、その後で話す内容を選びましょう。
予定を気遣う言葉と、話を終える動作をそろえます。時刻を了承してからもパンフレットを何枚も出し続ければ、相手は終わりを予想できません。扱うページを絞り、終了前には資料をしまえる状態にしておきます。
相手役の予定を知らずに行うロープレ
練習では、相手役だけが終了時刻を決め、営業役には知らせずにはじめましょう。相手役は会話の途中で時計を見て、質問されたら予定を答えます。営業役が決めていた説明をいったん区切り、返答に合わせて続け方を選ぶ練習です。
相手役は、時計を見てもまだ十分話せる設定と、間もなく退出する設定を変えてみましょう。営業役がしぐさを見ただけで話を終えたり、急に速度を上げたりしていないかを確かめられます。
評価する場面は、相手役が時刻を答えた直後です。了承を伝えたか、話題を選び直したか、質問を増やして終わりを遅らせていないか。言い方がきれいでも、答えを聞いた後の行動が同じなら、もう一度そこから練習します。
一人で練習するなら、説明の途中で声を区切り、予定を尋ねる言葉まで声に出してみましょう。その後は、相手がすぐ退出する場合を想定し、説明を再開せずに挨拶して資料をしまうところまで通します。予定を聞く一文だけでなく、終了までが練習の範囲です。
営業Q&A
予定を尋ねても「大丈夫」とだけ言われたら?
「まだお時間は大丈夫ですか?」と尋ねたところ、お客様から「大丈夫です」と返事がありました。説明をどのくらい続けてよいか、判断に迷っています。
回答
まず、残った説明に質問と片づけの時間を加えて、商談を終えるまでの所要時間を伝えましょう。例えば全部で5分かかるなら、その5分を使ってよいかを尋ねます。了承を得た後も、説明が長引きそうになったら扱う資料を減らしましょう。「大丈夫」という返答だけを、無期限に話せる許可として扱わないことです。
同席者が時計を見た場合も予定を聞くべきですか?
担当者は話を続けていますが、同席した上司が時計を見ました。担当者との会話を遮って、上司に尋ねてよいか悩む場面です。
回答
担当者が話している途中なら、まずその話を聞き終えます。その後、全員に終了予定を確かめましょう。同席者だけ先に退出する予定なら、同席者に確認してほしい内容を先に扱ってよいか、担当者にも尋ねます。時計を見た人を急いでいると決めつけず、全員が話せる時間と、退出後も続けるかを合わせるのです。
了承した時刻までに終える会話
相手のしぐさを見て予定を確かめ、使える時間に合わせて話題を選ぶ方法を解説しました。お客様の返答を聞いた後に、話す量や終了の仕方を変えましょう。予定を気遣ったつもりでも、説明を全部続ければ、お客様の都合に合わせたことにはなりません。
- しぐさだけでは判断できない相手の事情
- 終了時刻と、その時間で聞きたい内容の確認
- 説明する資料の選び直しと、退出に間に合う挨拶
商談前の練習では、予定を答えてもらうところから終了の挨拶まで、一度通してみましょう。時間が足りないと分かった場面で資料を閉じられるようにしておくと、本番でも相手の予定を守って話を終えられます。
木村 守(逆転営業アカデミー 営業スキルUPコンサルタント)
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