営業トークが苦手な一人社長へ|話さなくていい質問の3つのコツ

営業トークが苦手な一人社長へ|話さなくていい質問の3つのコツ

商談テーブルで困惑した表情の男性一人社長

「何を話せばいいのか、わからなくなってしまう」
営業に苦手意識をもつ一人社長の方から、よくいただく言葉です。実は、営業トークが苦手な原因のほとんどは、「話さなければならない」という思い込みにあります。うまく話さなければ、うまく説明しなければ、という意識が、かえって場を硬くしているのです。

私は22年にわたって一人社長や営業の方々の商談に同席し、1,000件を超える商談を見てきました。そのなかで気づいたのは、成果を出す人ほど「話す量が少ない」ということです。お客様が8割しゃべり、営業マンが2割話す。この配分を実現しているのが、質問の力です。

この記事はこんな方におすすめです。

  • 営業トークが苦手で、何を話せばいいか迷ってしまう
  • 話し上手でないと営業は無理だと思っている
  • 商談で沈黙が怖く、ついしゃべりすぎてしまう

これから一つひとつ見ていきましょう。

営業トークが苦手な一人社長に多いパターン

相談者の方と話していると、営業トークへの苦手意識はだいたい2つのパターンに分かれます。

ひとつは「何を話せばいいかわからない」タイプ。商品の説明をしようとするのですが、どこから話せばいいか迷ってしまい、頭が真っ白になるというケースです。もうひとつは「しゃべりすぎてしまう」タイプ。沈黙が怖くて、うまくいかなかった商談のあとほど「今日は話しすぎた」という後悔が残ります。

どちらのパターンにも共通しているのは、「自分がしゃべらなければいけない」という前提で営業に臨んでいることです。でも本当にそうでしょうか? お客様は、あなたの話を聞きたくて商談の場に来ているのでしょうか。

答えはほとんどの場合、「ノー」です。お客様が知りたいのは、自分の課題が解決されるかどうかです。あなたがうまく話せるかどうかより、「この人は自分のことを理解してくれるか」のほうが、はるかに重要なのです。

「話し上手」を目指すことが間違いである理由

「営業トークを磨けば売れるようになる」と考えている方が多くいらっしゃいます。これは大きな誤解です。

現代のお客様はインターネットで情報を簡単に調べられます。あなたが商品説明をはじめた瞬間、「また売り込みが来た」という警戒モードに入るお客様がほとんどです。説明が上手であればあるほど、かえって「営業臭い」と感じさせてしまうことさえあります。

話術はいりません。雑学もいりません。元気の良さも社交性も必要ありません。質問さえ正しくできれば、営業の結果は出ます。これは22年の現場経験から、私が確信していることです。

あるとき、WEBデザイン業を営む一人社長のAさんが相談に来ました。「商談でいつも空回りしてしまう。うまく説明しようとするほど、相手が引いていく気がする」という悩みでした。一緒に商談の流れを見直し、説明ではなく質問から入る練習を重ねた結果、Aさんは3ヶ月後に「最近、商談が楽しくなった。お客様がどんどん話してくれる」と報告してくれました。やり方を変えただけで、別人のような変化が起きたのです。

2人が対話している商談シーン

一人社長の営業トーク|話さなくていい質問の3つのコツ

では具体的に、どのような質問をすればいいのでしょうか。次の3つのコツを押さえてください。

コツ1:現状を聞くことからはじめる

商談のはじまりで、多くの一人社長が「まず自己紹介を」と考えます。しかし効果的なのは逆です。最初にお客様の「現状」を聞くことからはじめましょう。

たとえばこんな質問です。

  • 「現在、営業はどのようにされていますか?」
  • 「お客様との接点は、主にどのようなかたちで生まれていますか?」
  • 「そういうなかで、最近どのような変化を感じていらっしゃいますか?」

なかでも「そういうなかで〜」という言葉は、会話の流れを自然につなぐ魔法のフレーズです。相手の話を受けて、さらに深いところへ誘導できます。現状を聞くことで、お客様は「この人は売り込みに来たわけではないんだ」と感じ、心を開きやすくなります。

大切なのは、現状を聞いたあとに「なるほど、そうなのですね」と共感を示すことです。質問と共感はセットです。共感があるからこそ、お客様はさらに話してくれます。

コツ2:深掘りする3つの質問を使いこなす

現状を聞いたあとは、深掘りです。ここで使うのが、次の3つのフレーズです。

  • たとえば?」→ お客様の話を具体化する
  • なぜ?」→ 動機や理由を引き出す
  • ということは?」→ お客様自身に結論を出してもらう

この3つだけで、お客様は自分の欲求を自覚し、課題を認識し、解決策を自ら見出すようになります。あなたが「こうすれば解決できます」と言わなくても、お客様自身が「それが必要かもしれない」という気持ちに至るのです。

「たとえば具体的にはどういう状況ですか?」と聞かれると、人は自分の課題をより鮮明に言語化します。「なぜそのようにお感じになったのですか?」と聞かれると、自分でも気づいていなかった本音が出てきます。「ということは、今後はどうしていきたいとお考えですか?」と聞かれると、お客様は自分の言葉で「こうしたい」と宣言するのです。この3つの質問は、テクニックではありません。純粋に相手のことを知りたいという関心の表れです。

コツ3:「共感」で話しやすい場をつくる

質問が良くても、共感がなければ会話は深まりません。共感とは、単に「わかります」と言うことではありません。お客様の言葉を丁寧に受け取り、「そのようにお感じになるのは当然ですね」と示すことです。

反応力も重要です。うなずき、相槌、表情の変化。これらがあってはじめて、お客様は「この人は自分の話をちゃんと聞いてくれている」と感じます。沈黙を恐れないことも大切です。質問のあと、お客様が考えているときの沈黙は、相手が深く思考している時間です。その時間を奪ってはなりません。

私がよくお伝えするのは「感心→感動→感激」の流れです。お客様の話にまず感心し(「なるほど、そうなのですね」)、さらに深掘りして感動し(「そこまで考えていらっしゃるのですか」)、最後に感激する(「すごいですね、それは本当に大切なことだと思います」)。この3段階の共感の積み重ねが、信頼関係をつくります。

カフェで手帳にメモを書きながら一人で考えている男性ビジネスパーソン

できる営業 vs できない営業|トークで差がつく行動対比

同じ商談の場でも、できる営業とできない営業ではトークのあり方が大きく違います。よくあるパターンを対比で見てみましょう。

  • できない営業:商談に入るとすぐ商品説明をはじめる ↔ できる営業:まずお客様の現状を聞くことからはじめる
  • できない営業:一方的に話し続け、相手が口を挟めない ↔ できる営業:質問して、お客様の言葉を引き出す
  • できない営業:沈黙が怖くて、すぐ次の話題に移る ↔ できる営業:沈黙を尊重し、お客様の思考を待つ
  • できない営業:「弊社の商品は〜」と自分目線で話す ↔ できる営業:お客様の言葉を使って話す
  • できない営業:メモを取らず、要点を聞き流す ↔ できる営業:お客様の言葉を一字一句大切にメモする

あなたはどちらのパターンに近いでしょうか? 多くの方が「できない営業」に当てはまると感じるはずです。それは当然のことで、誰も最初から正しい方法を知っているわけではありません。大切なのは、気づいたときに変えることです。

コーチング業を営むBさんは、商談でいつも「自分のサービスの説明」から入っていました。相談を受けてトークの順番を変え、最初にお客様の現状と課題を丁寧に聞くよう練習しました。すると「先日の商談で、お客様が自分から『お願いしたい』と言ってくれた。はじめての経験だった」と、驚いた様子で報告してくれました。やることは同じでも、順番が変わるだけで結果が変わるのです。

営業Q&A

●質問 話すのが苦手でも、本当に営業はできますか?

コンサルティング業を営む一人社長のCさんからいただいた相談です。

「私はもともと話すのが苦手で、人と話すと頭が真っ白になってしまいます。でも一人で独立したので、営業は自分でしなければなりません。話し上手でない人間が営業をやっても、うまくいかないのではと不安です。それでも営業を続ける意味はあるのでしょうか」

● 回答

Cさん、話すのが苦手とのこと、よく理解できます。私自身も決して「話し上手」ではありませんでした。

ポイントは3つあります。

  1. 話さなくていい
  2. 営業の目的は「話すこと」ではありません。お客様の課題を理解し、解決策を一緒に考えることです。そのために必要なのは話術ではなく、「聞く力」と「質問する力」です。実は口下手な方のほうが、お客様の話をじっくり聞ける場合が多く、信頼を得やすいことがあります。

  3. 繊細さは武器になる
  4. 話すのが苦手な方は、多くの場合、相手の気持ちに敏感です。お客様の表情の変化、声のトーン、言葉の裏にある本音に気づけるのは、繊細な人だからこそです。この感受性は、営業において最大の強みになります。

  5. 質問の練習をすれば変わる
  6. 話術に差があっても、質問は練習で必ず上手になれます。「たとえば?」「なぜ?」「ということは?」の3つを意識するだけで、商談の流れが変わります。質問する力は何歳からでも伸ばせます。

「話し上手でなければ営業は無理」という思い込みこそが、一番のハードルです。その思い込みを手放した瞬間から、営業は変わります。応援しています。

まとめ

営業トークが苦手な一人社長へ向けて、話さなくていい質問の3つのコツを解説しました。いかがでしたか? 「話すのではなく、聞く」という視点が少し育ったなら、今日から商談のあり方が変わるはずです。

  • 現状を聞くことからはじめる(「そういうなかで〜」)
  • 深掘りの3つの質問を使う(たとえば?/なぜ?/ということは?)
  • 共感で話しやすい場をつくる(感心→感動→感激の流れ)

営業は才能でも、元気の良さでも、社交性でもありません。正しい質問ができれば、誰でも結果を出せます。今日からひとつだけ、「商談で最初に聞く質問」を決めてみてください。まず1つの質問をお客様に投げかけることからはじめましょう。

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営業指導歴22年。1000件以上の顧客との商談経験。1000人以上の営業相談に応じてきた。ある経営者との出会いを機に営業ノウハウを体系化。元ニートの落ちこぼれ営業を最下位グループからたった1か月で全国300人中トップに一発逆転させた。営業経験・実績に基づいた、わかりやすい営業ノウハウ・セミナーでの解説に定評がある。

 
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